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才能ナシの剣士は大して強くない

書きたくなったので投稿します。

「お前に才能はない」


「うん、知ってるよ。俺には剣の才能も、魔法の才能もないよ」


 才能なんてもの、俺にないことは知っている。俺は生まれた時から才能がない。いつも誰かにそう言われた。前世の時にも言われたよ。勉強ができない、運動ができないからいつも周りに笑われた。


「そうだ、レイドは才能がない。だが、お前は周りの人に恵まれるだろう。その中の一人にわしがいる。わしを師匠に持てたお前はこの世の誰よりも運がある。この太陽の領域の使い手であるわしの弟子は誰でもなれるわけでは無い。お前だけだ」


「うん、俺は周りの人に恵まれてるよね。師匠のことも大好きだ」


 俺に親はいた。優しいお父さんとお母さんだったけど、どちらも怪異に殺された。妹も病気で死んじゃった。悲しい、悲しすぎるけど、師匠が助けてくれた。


「そうだ。お前は才能はないが、周りを助ける義務がある。だからわしの太陽の紋を受け継ぐ必要がある」


「そうすれば、俺は誰でも守れるんだよね?」


「ああ、お前は誰でも助けることができる。わしの太陽を使いこなせばな」


「わかった、じゃあ俺は師匠を超えるよ」


「おお!言うようになったなぁ!だがわしを超える剣士はいないからな、ガッハッハッハ!」


 超えるよ、だって俺は師匠も助けたいんだから。


 ✕✕✕


 この世界を、学者達はメイジと名付けたようだ。なぜそのような名前なのか、剣士の俺にはさっぱりわからない。


 俺が今住んでいるこの街、暁の都では最近、怪異が増えてきたらしい。


 怪異とは、人間や知性のあるモンスターから生まれた悪の感情が作り出した生命体。そこに存在はするけど、人間やモンスターがいなくなればいなくなるような、そんな存在。


 ただ、そいつらはモンスターよりも強いことが大半で、この世界ではモンスターよりも怪異が強いのは一般常識、だがそれはあくまで同じようなモンスターと怪異を比べた時の話であって、ドラゴンみたいなモンスターと糞みたいな怪異ではドラゴンの方が強い。規模によって様々だけど、怪異は厄介なのが多い。モンスターは雑魚の繁殖力が凄い。


「はぁ、平和って難しいな」


 俺がいかに努力しても、個人の力は微々たるものだ。


「何黄昏てるの?師匠さんの所に見舞いに行くんじゃないの?」


「ジュナ、俺の刀はどうなったかな?」


「もちろん直したわよ。アンタこれなきゃ戦えないでしょ」


 ジュナの腕は俺が知っている刀鍛冶師の中でトップだ。ジュナは小さい頃から鍛冶師として鍛錬を積んできて今や有名人レベルだ。そんな彼女と俺は幼なじみ。それゆえに特注で整備をしてもらっている。


「ありがとう。流石ジュナだね」


「なんもだよ、じゃあお金は先払い?」


「・・・・・・借金ばかりが増えるなぁ」


 俺は確かにジュナにお金は前払いでたくさん払っている。でもこの子は忙しいのにわざわざやっているんだぞとか言って、金額を大幅に上昇させて、嫌なら持ってくるなとか言ってきた。もちろんジュナよりいい腕の人はいないから俺はなくなく借金している。


「あんたが頼むからでしょ?」


「俺はお前以上の鍛冶師を見つけたらもう頼まないよ。これ以上借金増やしても迷惑だろうし」


 相手はあくまでビジネスのつもりなんだろう。だから俺も、借金して相手を困らせるつもりは無い。


「いや、迷惑じゃないわよ?あんたみたいな顧客は金づるとしてはいいん」


「あ、ごめんもう行かなきゃ。師匠が待ってるからね、バイバイ」


「あ・・・・・・バイバイ」


 ✕✕✕


「な、なんで?」


 なんで師匠が戦っているんだ?師匠はもう余命わずか、あの刀を振る体力なんて残っていないのに!


 敵は怪異?大きさは俺や師匠と同じくらいの大きさ、形は人型だけど、腕からは蛇が何匹も生えている。


 メデューサか?いや、そんなことよりもまず、師匠との均衡を崩す。


「日の領域、炎陣抜刀」


 日の力を炎に変え、抜刀術でメデューサ(仮)に攻撃する。


 メデューサは師匠から離れて距離をとった。


「師匠!大丈夫ですか?」


「ああ、はぁ、わしは大丈夫。それより周りの人達の避難を頼む」


 師匠が言う周りの人達とは、師匠の病気の治療に専念してくれていた医師や看護師のことだろう。


 病院の人達は一つにまとまって動いていない。これを動かすのは少し難しい気がする。何より師匠はメデューサと戦う気だ。


「師匠、もう刀を振らないでください。あいつは俺が相手しますから、師匠は病院の人達とゆっくり避難してくれればいいです。周りに迷惑をかけない立ち回りをしてみせます」


 正直相手の実力はそこそこ高いと思う。怪異専門の殲滅師の人達に来て欲しいところだけど、モンスター専門の冒険者の人達でもいい。なんならどっちとも戦ってくれるクラッシャーでもいいからとにかく人が欲しい。


 俺一人だけでは戦える気がしないのだ。怪異は強い、一人で戦って倒せないのだってザラにいる。


「師匠、下がって!」


「・・・・・・わかった。危険だと思ったらすぐに下がるんだ」


 言われなくてもわかっています。その心配は、俺が太陽の紋を継げなかったからだということも、俺に戦闘の才能がないからだということも。


「フー」


 息を整える。怪異に油断はできない。俺が油断していい相手ではない。


 適度に力を入れて、一歩目を踏み出し、距離を詰める!


 日の領域、


「炎円斬」


 炎をまとった刀で横に薙ぐ。相手の首にめがけて。


 怪異は悪の感情から生まれる生命体。腕の欠損程度では再生される。怪異を殺すには首、心臓、頭を切るなど即死させなければならない。


「っ!」


 足元からメデューサの蛇が出てきて足に絡まる。あいつはこれを狙っていたのか。


 決して倒れてはいけない。隙を見せれば確実に負ける。


「炎円斬、二式」


 蛇が絡まった右足を無視し、少しでも左足を前に出す。体のねじりがない一撃は弱まるが、それでも相手を斬るために左足で踏ん張り、一撃を放つ。


「くそ!」


 相手の首を斬ることは、できなかった。


 ここまで近づいた俺の体にメデューサの腕から出てきた蛇が絡まってくる。


 動けない。やばい。死ぬ?まだ、皆が逃げきれていないのに、死ねない!


 まだ疲れてすらいない、刀は握れている!戦える、俺ならまだ戦える!


「ハァアアアア!」


 体の奥から力を振り絞る。この拘束を解くために、全身全霊の力を出す。才能なんて置いていけ、元からないものを振り絞るんじゃない、あるだけの力を出すんだ!


 目元が赤くなってきた、頭が熱い、体が熱い、暑いのではなく、熱いのだ。


「あれは、レイドのやつ、太陽の紋、太陽の領域を使う気か?」


「アアアアアアアアア!」


 だんだん相手の力が弱くなってきた。それにスピードもまるで海にいるかのようだ。とても遅い。


 弱いよ、君の首はがら空きだ。


 絡まってきていた蛇を振りほどき、全身に緩やかに力を入れる。


 何もしてこない敵の首を斬る。


「ギャッ」


 なぁんだ、大したことないな?


「レイド!日の領域に切り替えろ!」


 師匠?何喋っているか聞こえないよ、何も聞こえない。


 耳に触れてみると血が出ていた。


 あれ、いつの間に?メデューサにやられたのか?


 目の前もどんどん見えなくなる。血の涙は邪魔だな。


 師匠は何を言っているんだ?ゆっくり観察してみよう。


 あれ、さっきと言ってることが違う気がする。


「レイド!後ろじゃ!」

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