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第二章 ハンデ戦(7)

 まかべさんとの会合後、ジュリエッタ達は状況を整理するため冒険者ギルドに移動しました。ブルータスはギルドに着くなり職員を総動員させました。

 何事かと困惑する職員を前にブルータスは話し出します。

「諸君、ジュリエッタお嬢様の特命により、我がギルドは例の作戦を今夜中に貫徹させなければいけなくなりませした。尚、拒否した職員にはュリエッタお嬢様の名に元に相応の処罰が下る、と思う」

 職員達の諦め混じりの怒りの視線がジュリエッタを集まります。

「一応、私は止めたのですよ」

 自分の保身はしているし、この眼鏡狸。

 ジュリエッタはそんなことを言っていません。でもブルータスが主張することも半分は事実です。ジュリエッタは職員達が完徹しなければいけない契約を結んできたのですから、彼らの非難は当然なのです。

 ジュリエッタは非難の視線から逃げるようには支部長室に移動するしかありませんでした。


「何を要求してくるかと思えば、ハンデ権の申し出を受ける代わりにアレシアのギルドマスターと正式に会談させろとは」

「ブルータス、貴方の見解を聞かせて」

 眼鏡狸の意見を聞くのは癪です。ですが、未だ心底をみせないまかべさんとやり合える人物は、ブルータスしかいないのです。

 狸と狐の化かし合いを想像してしまい、クスッと笑ってしまいました。

 もっともまかべさんは狐というより鴉でしょうけど。

 全身黒い服装を身にまとっていますし、なにより性格が悪そうです。

「条件を釣りあげられた上に準備期間が今夜しかない。私でしたらこんな条件を到底受けませんな。どうなってもしりませんよ、ジュリエッタお嬢様」

「勝てばいいのです」

「しかし準備期間が今夜だけとは……」

「なんとかしないさい!」

「ギルドの名誉に誓って準備は完遂させますよ。ですが実力の半分も出せないでしょうな」

「半分以下の実力でも、あれに勝てる人はいないでしょう?」

「勝てるパーティーは存在しますよ。ただし、単身で立ち向かうとなれば無理かと」

「でしたら問題ありません」

「いいえジュリエッタお嬢様。問題は大ありです。このブルータスが差配したのは隔絶した実力差による蹂躙。ですが、先方の条件を受け入れたことで隔絶とは言い難くなりました。想定していた状況と異なる以上、勝敗の結末について責任を持てませんよ」

「ブルータス、貴方はジュリエッタに責任を押し付けるつもりですか」

「私は御止しましたよ」

 最初に責任の有無を持ち出すなんて信じられません。

 ジュリエッタは軽蔑の眼差しを向けますが、ブルータスはまるで動じませんでした。少しは恥じるという感情を持ち合せるべきです。 

「条件を受け入れたのはジュリエッタですし、それによりブルータスの計画に狂いが出たことは認めます」

「正しい理解をして頂き、このブルータス大変嬉しゅうございます」

「それはそれとして、まかべさんの要求をどう思います?」

「客観的にみればさして意味のない要求でしょうな」

「何故意味がないの? アレシアのギルドマスターと正式に会談が出来るのですよ。まかべさんがどの勢力に所属しているかは知りませんが、私達にとって厄介な問題を引き起こしそうだと思うけれど」

「我々がハンデ権を持ち出さなければ、あの来訪者はこのような要求をできませんでした。ということは、あの来訪者の目的が会談ではなかった事になります」

 ブルータスは眼鏡のズレを直し、間を置いてから続きを話し始めました。

「ハンデ権で要求する内容によっては我が盟主と直接会談をすることになるでしょうが、そのときはこちらに交渉権はありません。ですが単に我が盟主と会談をするだけであれば、来訪者の問いに否と言う事が出来ます」

「それはそうですが」

「組織のトップと面識を持つために会談をするのなら意義があるでしょうが、それだけのために手が込んだ真似はしないかと」

 ブルータスの言い分には一理あります。

 こちらにとって取るに足りない質問だとしても、相手には意味があるとしたら確実に答えを得られる方法を取ってもふしぎはありません。

 考えれば考えるほど心底が読めない人です、まかべさんは。

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