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第2話

ブックマークや評価付けて頂いた方、有り難うございます!

クリスマスなので(?)2話目投稿します。

あ、別に暇で寂しいからって訳じゃないんだからねっ

「お頭、いかがでござった」


 藤林長門が屋敷に戻ると男が待っていた。伊賀崎道順いがのさきどうじゅんという長門配下の中忍である。


「半蔵の奴が氏真に雇われたってのは本当らしい。しかも俺を差し置いて武士にするだと、ふざけやがって」


「なんと、今川が武士にするならお頭でござろうが。それが何故に」


「分からん。そもそも氏真がおかしい。探ろうと草を送ってみたが音沙汰がねえ」


「氏真が周りに腕の立つ忍びが居るのやもしれませぬ」


 氏真の様子を探ろうと配下の忍びを送り込んだが連絡が無い。密かに始末された可能性がある。


「半蔵の配下か。あいつが氏真に雇われてよりまだ日が経たねえ筈だが」


「怪しきは小原肥前守にござる。かねてより半蔵めは肥前守に使われておりました故」


 松平清康の死後、仕えるべき主を失った半蔵が東三河吉田城主である小原肥前守鎮実しずざねに拾われたことは分かっている。小原肥前守は謎の多い人物としてその名を知られていた。




「肥前守か、確かに怪しいな。あと更に妙なのは松平だ。元康め、今川から独立したにも拘らず今川と揉める様子もない事が解せねえ。探らせろ」


「承知。では佐助ほか数名を遣わし、松平元康、氏真、肥前守らを調べさせまする」


 佐助とは「下柘植しもつげの木猿」という異名を持つ下忍だ。身軽で素早い事で知られ、得意は忍法『浮き足の術』。全く気配をさせずに木から木へ飛び移ることが出来た。





 ――数日後。道順が佐助を連れて長門に報告に来ている。


「佐助が戻りましてござる」


「木猿か。で、どうだった」


「松平元康は氏真と盟を結んだようにござる。氏真は松平に織田を抑えさせ、また尾張からは手を引いて国内を纏めるつもりの様子」


「ふん、駿河遠江に引っ込んで身を護ろうという腹か。まるで亀だな」


「半蔵は安倍谷に知行を与えられて安倍元真に仕えるとのこと。しかしてその実は氏真の命で動いておる様子と佐助が申しておりまする」


「半蔵の例の息子はどうしてる」


 例の息子というのは服部保長の四男、正成のことだ。服部正成は幼い頃より忍びの才に恵まれ、将来は大物になるだろうというもっぱらの噂だった。「半蔵の異名を継ぐは正成」とかねてから保長も周囲に話している。最強の忍びを自負する長門が気になるのも当然だった。


「氏真の供周りに加えられたという話でござる」


 供周りというのは近習であり且つ護衛役を兼ねる。いわばもっとも距離の近い家臣であり、信用できる代々の重臣の子弟がなるのが普通だ。武士に取り立てられたとはいえ、賤しいとされる忍びをすぐに供周りにするなど常識外れもいいところである。長門の右目に嫉妬と怒りの炎が灯った。


「氏真め、小賢しい真似を。俺の顔に泥を塗った氏真も半蔵もその息子も許しちゃおかねえ。道順、三河遠江の城持ちの奴らに密書をばらまいて氏真を快く思わねえ奴、叛意を持つ奴に揺さぶりをかけろ」


「畏まってござる。拙者も自ら参りまする故、しばらくお待ちくだされ」


 伊賀崎道順。伊賀忍十一名人の筆頭に挙げられる凄腕の忍びである。潜入、火付け、鉄砲とあらゆる忍びの仕事に精通し、どんな難攻不落の城でも道順さえ潜入したら落とせると詠われたほどの腕前だ。


「頼む。いざとなったら俺も出る」


 道順と佐助は頷き、長門の前から姿を消した。




 ――甲斐、髑髏ヶ崎館。


 深夜、男が一人居室で書物を読んでいる。その手元を照らす灯がふっと揺らいだ。


「――何奴」


 書物から目を離すことなく男が呟くと、その背後に天井から一人の男が音もなく舞い降りた。


「勘助殿、久しぶりだな。藤林長門だ」


 藤林正保は片膝を立てて跪き、頭を下げた。書を読んでいた男は武田信玄の軍師として名高い山本勘助。顔は醜く隻眼、足は不自由という異形である。勘助は武田に仕える前に今川に仕官しようとして駿府にいたことがあった。二人はその頃に知り合い、長門は勘助に忍びについて色々話して聞かせていたのである。


「久しいな。多くの守りが居ったはずじゃが、それを難なく掻い潜るとはさすがじゃ。それで何用か」


「実は今川を見限り、武田に雇ってもらいたいと思ってる」


「それは義元公が身罷みまかられたからか」


「そうだ。後を継いだのが暗愚な氏真では今川の先は見えてるからな」


「ほほう、だが調べたところでは氏真公もなかなか一筋縄ではいかぬ方のようだが。信虎様に謀反の嫌疑をかけて京に追いやり家中を纏めるなど、なかなか出来る事ではない」


 今川氏真は武田を追われ家中に身を寄せていた自らの外祖父である武田信虎に謀反の疑いありとして京に追放した。家中をまとめ後の災いの種を消すための策だが、同時に武田の介入を呼びかねない危険性も伴う。この事を信玄や勘助は先日行われた義元の葬儀に武田の代表として参列した馬場信春の報告で知ったのだ。


ストックが無いのと、こちらの方が話の流れが速く本編のネタバレになるので次話まで少し間が空くと思います。

本編は今日も夜に投稿します。


※本編をお読みいただいていない読者様へ

この物語は過去転生IF戦記である本編「サッカー小僧が今川氏真に転生したら」の外伝ですので、歴史の流れは史実と異なっております。

その辺多少混乱されるかもしれませんがご容赦ください。

もし良かったら本編もよろしくお願いします、なんてw

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