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4.

 その次の週の金曜日に、麗奈の歓迎会があるという。宇佐美が自分で企画したのか、メールが送られて来た。

 さてどうしようか。久須美一人が欠席したって、特に誰も気にするわけでもないだろうけれど…。

「玉置さん、お出になるでしょ?」

 とにこやかに麗奈に言われて、

「あ、ああ、そうですね…」

 と言葉を濁していると、

「良かった! 玉置さんが出て下さると心強いわ。正社員の女性の方たち、皆お若いんですもの」

 と肩をすくめて、にこっと笑った。

 久須美もなるべく口もとを上げ、なんとかいい人顔を保ち、

「あはは」

 と笑ってみた。

 会費五千円は痛いところだが、部署で一人浮くのもなあ、まあ、参加することに意義があるか…、と自分に言い聞かせた。


 歓迎会当日。

 部署の人間九人、全員参加だった。その九人が駅近くの歓迎会をする居酒屋まで、なんとなくまとまりつつ歩いて向かった。あと数人、関連部署の人が参加して、十五人くらいになるらしい。久須美が参加する飲み会としては大きい集まりだった。

 麗奈は久須美のそばを離れず、

「あの『ごんべえ』という居酒屋さん、この間宇佐美課長とランチを食べた所なんです。玉置さん行ったことあるんですか?」

 と話しかけてきたので、

「え、ええ、まあ…」

 などと返事をし、

「なんだか、あたしのためにこんなにたくさんの人が集まって下さるなんて、緊張するわ」

「だいじょうぶですよ」

「玉置さんの隣に座らせて下さいね」

 なんて言いつつ、歩いて、居酒屋に到着。

 久須美がこそこそと一番奥の隅に座り、その隣に麗奈が座ろうとするのを、宇佐美が、

「あ、守木さん、だめですよ! 今日はあなたが主役なんだから、こちらに来て下さい!」

 と力強く言い、

 例によって知美と幸恵は二人がっちりとくっついていて、久須美の隣に座り、その向かいに若い男性社員が座ろうとするのを

「あ、そこ、ぼくね」

 と坂本が知美の向かいに座り、広がりつつあるおでこをてかてかと光らせていた。

 まずはビールということで、各人のコップにビールが注がれ、

「では、みなさん、よろしいですか?」

 とにこやかに上座の宇佐美が立ち上がり、

「ほら、守木さん、立って」

 と麗奈を立たせ、

「新しい企画の補助の仕事のために入って下さった守木さんです」

 と宇佐美が張りのある声で言いながら皆を見回した。

「やだ、あの二人、お似合いじゃない?」

 と知美が幸恵にささやいた、その声が久須美にも聞こえる。

「もう、完全にできあがりよ。二人でにこやかに外勤してさ…。見つめ合うとうっとりしてるわよ。二人で何やっているんだか…。ほら、見て見て、今だって、怪しすぎるよ」

 と幸恵が話を盛った。

 その話が耳に入ってくるだけで、久須美はおもしろくなくなり、

「じゃ、かんぱ~い」

 と宇佐美の合図がかかると、ビールを一気に飲み干した。

 久須美はお酒は嫌いではないが、特に好きでもない。自分のアパートで一人酒盛りをするようなことはない。いつも「つきあい程度に」飲む感じで、自分の限界というものを知らなかった。

「あら、玉置さん、すごい、進みますね!」

 と隣の幸恵が久須美を乗せて、

「ほら、どうぞどうぞ」

 と空になった久須美のコップにまたビールをなみなみと注いだ。

 今、立っているのは麗奈だけとなり、麗奈は恥らいながら、謙虚にあいさつをしていた。

「もう、だいぶ仕事から離れていたものですから、皆さんにご迷惑をおかけすると思いますが、どうぞよろしくお願いします」

 そして、座ると、宇佐美と二人で何やら楽しそうに話し始め、他の人はそれぞれ近くの人となにやら話し始め、その合間を縫って、刺身、サラダ、焼き鳥などのコース料理が運ばれてきて、

「あ、玉置さん、どうですか? 取りましょうか?」

 と幸恵は気が利いて、久須美にまでいろいろ取り分けてくれ、

「坂本さん、どうですか?」

 と向かいの坂本にも取り分けたりしており、坂本はと言えば、にやにやと知美に何か話しかけようとやっきになっていた。

 久須美は料理をつまみながら、自分の世界に入り込み、なんだかやけにお酒が進み、

「飲み放題ですから、他にもありますよ!」

 と幸恵が乗せるのに従って、飲み放題メニューを見ながら、グレープフルーツサワーだの、カシスサワーだの、ハイボールだの、なんだか、目につくものを頼み、飲み、食べ、頼み、飲み、食べ、食べしているうちに、だいぶ酔いが回ってきていた。

「ちょっと失礼」

 と、席を立った時、くらっときた。トイレに向かう道がなんだかゆがんでいる。足どりがおぼつかない。だけど、なんだか愉快な感じ。

『やだ、綱渡りしてるみたい』なんて浮かれてきて、トイレに入り、座ってみると、ぐるぐると世界が回っていた。

「こういうのも、いいよね、たまには」

 もう、ヤケクソって感じになりながら、独り言を言い、用を足すとよろよろと席に戻った。

 と、なんか自分が座っていた端っこの席には知美と幸恵が移動していて、そこになんとか坂本が近づこうとしているみたいだった。

 知美が久須美を見つけ、

「あ、玉置さん! ここここ!」

 と久須美を呼びつけた。

「え? 何々?」

 と席に戻ろうとすると、

「すみません、坂本さん、一つ向こうにずれてもらえませんか? ここ玉置さんの席だから」

 と自分と坂本の間に久須美を座らせ、久須美はもう、頭の中ぐるぐるなんだけど、元座っていた所と違うから、

「え? あたし、ここ?」

 なんて言いながらも、知美の言うままに、坂本との間に入り込んだ。

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