表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

おまけ②【仲間】




 「気味が悪いわ」

 「どうしてこんな子が生まれてきてしまったんだろう」

 「きっと悪魔の子だわ」

 「教会の神父様にも見捨てられたんでしょ?」

 「寝てる間に埋めてきてしまおうか」

 「固めて海に沈めましょう」

 「放っておけばそのうち死ぬさ」



 自分が回りと違う事くらい、自分が一番良く知っていた。

 どこがと言われると、よく分からないけど。

 母のお腹から産まれ、その時から両親は違和感を覚えていたようだ。

 泣く度に、どこからともなく家中に現れる小さな蜘蛛たち。

 決定的だったのは、両親に虐待されていたある日のこと。

 ご飯もまともに与えられず、水も飲ませてもらえず、ここで死ぬのかと覚悟したときだ。

 父が馬乗りになって殴ろうとした。

 だが突然、父の動きが止まった。

 何だろうと思っていると、父の口の中に黒い何かが入って行き、それは父の頭も貫き、父は倒れた。

 それを見ていた母は悲鳴をあげ、助けを求めに外に出ようとした。

 だが、いつの間にか家中に張り巡らされた糸によってドアは封じられ、母も動けなくなってしまっていた。

 「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい許して許してえええええええっっっ!!!!」

 ただ母を助けようと思って近寄っただけなのに、そんな自分を見て母は命乞いをした。

 母の視線は後ろに行っていたから、ゆっくりと振り返ってみる。

 腰を抜かしてしまった。

 そこには見たことのないほど大きな大きな蜘蛛がいたのだから。

 真っ黒な姿をし、身体から生えている足は太く丈夫そうで。

 ああ、さっき父を殺したのはこの足かと、その時理解したのも覚えている。

 「ごめんなさい!!でも殺そうって言いだしたのはあの人なのよ!私じゃないわ!もともとはこの子が変だからいけないのよ!近所でも噂になってて、もう私も限界だったのよ!こんな子、産んだ覚えないわ!もっと普通の可愛い子が欲しかったのに!!!私のせいじゃないわ!私は悪くないのよ!だから許して!お願い!」

 背中から聞こえてきた母の声は、心から子を愛するものではなく、自分だけが生き残ろうとする無様なものだった。

 だから、ちょっとだけ、思ったんだ。

 ―死んじゃえば良いのに、って。

 そしたら、まるでそんな心を読みとったかのように、蜘蛛は母の身体に向かって口を開け、食し始めた。

 始めた見た捕食シーンに、吐き気を覚えた。

 少しして、母も父もいなくなった。

 でも、ちっとも寂しくなんかなかった。




 それから十年以上経ったころ、一人の男と出会った。

 そいつは自分と同じような目をしていて、でもどこか違っていて。

 無遠慮に話しかけてきた。

 「飯奢ってくんね?」

 「は?」

 なんだこいつ、正直そう思った。

 初対面で言う事じゃないだろうと思ったけど、暇だったし、ちょっとだけ興味もあった。

 なにより、何かを感じ取ったんだ。

 そいつはすぐに俺が変わってることに気付いた。

 だけど、そいつは笑っていて。

 「俺も俺も」

 なんて言いだしたもんだから、最初は何をでまかせ言いやがって、くらいに思っていた。

 その後に連れてきた妹って奴も、何やらおかしな奴だった。

 「犬派?猫派?」

 「鯨派」

 「そんなこと聞いてないもん!犬か猫か聞いてるの!オムライス作ってよ!」

 本当に、変な奴らだ。

 「吾朗、アクルをちゃんと躾けておけ」

 「いーんだよ。アクルはこうやってのびのび育てていくんだから。な!」

 「な!」

 「な!じゃないだろ。庭は穴だらけ、部屋は土だらけ、壁は傷だらけ。今日中に直しておかねーと、お前ら放りだすからな」

 「やべーぞアクル!まず手を洗って来い!」

 「らじゃ!」

 「アクルアクル待った!その汚れた足のまま行くな!俺が連れて行くから!」

 今日もまた、家の中でかけっこをする二人。

 まったくため息が出る。

 そこら中にある肉球の後を、吾朗が少し塗らしたタオルで拭いて行く。

 そして、アクルがまた濡れた手を拭かないまま部屋に戻ってくる。

 「ちょいちょいアクル!お前もうちょっと頭使って動け!」

 そんな吾朗に捕まらないと、アクルがまた走る。

 巻き込まれたくないのだが、こういうときは絶対にこちらに来る。

 「縁兄ちゃん、援護して!」

 「断る」

 つまり、退屈ではないということ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ