8話 『神代奏舞』の本性
忙しくて更新遅れました!
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刹那の静寂の中、急に口調の変わった神代の言葉を反芻する。
「神代……お前、猫被ってたのか」
神代を睨み付ける。この野郎、いくらモテるからって調子乗りやがって……。何が『オレの魅力には敵わない』だ。
神代は鼻で笑いながら俺から離れた。
「素のままだと可愛い子猫ちゃん達が近づいて来ないからな。爽やかな優等生の方が話しやすいだろ?」
目の前にいるのは『爽やか眼鏡』ではない。高圧的な態度に肉食獣のように鋭い目、これが神代奏舞の本性なのか。
「それだけの為に自分を偽ってるってのか」
「まぁ、オレ自身どっちの性格が本当なのかわからなくなってきたけどな。こうやって話すのは数年ぶりだ」
神代は俺が天吹のことを好きだと気付いてから、本性を現した。俺への宣戦布告のつもりなのだろう。こんな嘘つきに負けるものかと決意したが、先程の神代の言葉に少し引っかかる点があった。
「神代……お前、何人かの女の子から告白されたらしいじゃんか。それを、雑に扱って……。お前の目的の『可愛い子猫ちゃん達』じゃねーのかよ?」
神代の瞳が俺の目を捉える。
「噂ってのは怖いよな。俺はちゃんと断ったぜ、『興味無い』ってな」
確かに琴音もそう言っていたが、では神代の『興味のある女子』は……。
「天吹にしか興味は無いってことか?」
俺がそう言うと、神代は高らかに笑った。
「まぁ、そういう答えに行き着くよな!」
腹を抱えて笑う神代に苛立ちを覚えた。
「何がそんなに可笑しいんだよ!」
俺の怒鳴り声を聞き、神代は笑うのを止めた。
「そりゃあ可笑しいのなんの」
神代は静かに告げる。
「ハズレだ」
俺には意味がわからなかった。『ハズレ』とは、つまり天吹にも興味が無いという事か?
「お前は一体……何がしたいんだ?」
俺の問いに対する神代の解答も意味不明であった。
「お前だよ。ハルト」
俺?俺が一体何だと言うのか。
神代は話を続ける。
「天吹有彩がライバルか……。まぁ、魅力的な女子なのは認めよう」
ちょっと待て。今、『ライバル』と言ったか?
「でもまぁ所詮、『女子』だ」
神代? え? 待って?
「俺が興味があるのは……」
チョットマッテ。
「お前みたいな「男」だよ。ハルト」
言葉が、出ない。
神代が言う『子猫ちゃん達』とは?
神代が女子達の告白を断り続けているのは?
神代が琴音の名前を憶えていなかったのは?
「お前が好きだ。朝霧春斗」