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12話 応援(尾行)に行こう

 五月を前にして、少し暖かくなってきた。

 この一ヶ月でいろいろな事があったが、高校二年生の日常は変わらず授業を受ける毎日だ。

 午後の授業の間、俺はニヤニヤが止められなかった。

 ついに天吹の携帯番号とメアドをゲットしたのだ。これで堂々とラインなりメールなりできるわけだが、何と送って良いものか。

 もうすぐ世間はゴールデンウィークに突入するのだが、予定はまだ無い。

 天吹を遊びに誘おうかと考えているのだが、そんな勇気は無いわけで。

 六月から共に生徒会で仕事をする事を考えると、あまり積極的には動けない。フラれでもしたら、一年間が地獄に変わるからだ。

 今になって考えると、琴音にラブレターを破かれたのは良かったのかもしれない。

 琴音、グッジョブ。

 そんな事を考えていると携帯が震えた。

 送信者が琴音だったので少し怖くなったが、放課後に連絡を取る約束をしていたのを思い出した。

 授業が終わってから、メールを開封すると。

『あんた、明々後日の休み、暇?』

 何かの誘いだろうか、誘われたいのはお前じゃねーよ、というツッコミを飲み込みながら、明後日の昭和の日も特に予定は無いので、『暇だけど』と返信した。

 すぐに返信が来た。

『サッカー部の試合があるんだけど、有彩が絶対に行くから尾行しない?』

 琴音には神代との事を話してないので、神代が俺の事が好きだという事実をあいつは知らない。まぁ、神代に気が無くても、天吹の方はわからないが。

 確かに、サッカー部を応援に行く天吹を観察すれば神代目当てなのかどうかはわかるかもしれない。だが、さすがに尾行は悪趣味ではなかろうか。そのまま送信する。

『あたし達もサッカー部の応援に行く体で』

 多少不自然な言い訳だと思うが、天吹がどんな顔をしてサッカー部を応援しているのかは気になる。

 心の中で天吹に謝りつつ、琴音に『わかった』と送った。

 琴音が今日用事があるとのことで、神代の話はその時にすることになった。


 来る4月29日。琴音の家の前で琴音を待つ。

 琴音の『バレないように変装して集合!』の指示通り伊達眼鏡を用意して前髪を上げて来た。決して神代をリスペクトしているわけでは無いが。

 この程度でもすぐにはバレないだろう。

 少し待つと、玄関が開いた。しかし、出てきたのは金髪ロングヘアーでガーリー系のファッションを見に纏い、サングラスを掛けた少女であった。

「ハル…… もう少し何かなかったの?」

 少女が口を開いて、やっと琴音だと認識できた。

「お前は気合い入れすぎだろ…… どうしたんだその髪は?」

「お姉ちゃんに借りたの」

 確かに琴音には3つ上の姉がいるのだが、なぜ姉上が金髪のウィッグを持っているかは聞かずにおいた。

 しかし変装とは言え、私服スカートの琴音を見るのは初めてかもしれない。少しだけ、ホントに少しだけドキッとした。


 道中、俺は神代と会った事を話をした。もちろん告白された事は伏せて。

「じゃあ、神代君は有彩に気がないの?」

「本人はそんなような感じだったけど……」

 そう確定できる要因を話せないので言葉が濁るが、琴音は安堵しているようだ。

「後は、有彩がどう思ってるかだね」

「あぁ。でも、応援してる天吹を観察してわかるものかね?」

「まぁ、とりあえず、よ。何もしないよりマシでしょ?」

 天吹は『キャーキャー』言うようなタイプとは思えないし、琴音の言うように様子を見ることにしよう。


 『初蔵総合運動場』。高校生の練習試合で使うには広すぎる気がするが、特に大それたイベントも無い限り個人でも借りれるような場所だ。中学時代も何度か試合で来た場所なので馴染み深い。

 俺と琴音は知り合いに出くわさないようコソコソと観客席に向かう。

 階段を登り視界が開くと、青空と深緑のグラウンドが目に飛び込む。

 思えば、観客席に来るのは初めてだった。

 呆けていると、琴音に袖を捕まれた。

「あそこに有彩がいる」

 小声で囁かれ、琴音の指差す方へ目をやると、天吹の姿があった。


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