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11話 金髪と太陽とトマト

更新大変遅くなりました!

挿絵を描こうと画策してたりしました…… すみません。

またお付き合い頂けると幸いです。

 金髪縦ロールは天吹に対して、声を荒げていた。

「あなた! (わたくし)を差し置いて生徒会長になるだけでは飽きたらず、生徒会のメンバーにすらなれなかった(わたくし)に向かって、部活を止めてテニスのレギュラーを譲ると言うのですか! とんだ屈辱ですわ!」

 いるよねプライドの塊で一方的に敵視して理不尽な怒りをぶつけて来る奴……。こんな喋り方する奴は見たこと無いけども。

 察するに、金髪縦巻は生徒会に入りたかったが、入れず、生徒会長になる天吹に嫉妬し、天吹が空けた部活動のレギュラーの席に収まるのが気に入らないわけか……。

 逆恨みも甚だしい。贔屓目無しでも天吹に非はないだろう。

「そ、そんなつもりじゃ……」

 天吹が小さな声で応える。

「あなたはいつもいつも(わたくし)の邪魔ばかり…… あなたさえいなければ!!」

 金髪縦ロールが右腕を振り上げ、天吹が目を瞑る。

「ちょっ! やめっ!」

 咄嗟に声を出してしまった。

 金髪縦ロールが右手を挙げたままこちらを睨みつけてくる。

「……覗き見なんて、良い趣味をお持ちで」

「朝霧……君……?」

 天吹も俺に気付いてこちらを向く。

 息を飲む。どうにかしてこの場を治めなければ。

「盗み聞きしてたことは謝る。君の怒鳴り声が聞こえたから…… でも、手を挙げるのはダメだ」

 金髪縦ロールが手を下して体をこちらに向ける。

 俺はそのまま続ける。

「誰が聞いたって天吹は悪くない。君の一方的な嫉妬心だろ?」

 一拍置いて、金髪が呟く。

「そんな事、言われなくても解ってますわよ…… 解っていても、どうしようもなく天吹さんが妬ましいのですわ……」

 存外素直じゃないか。『妬ましい』ってあまり聞いたこと無いけど。

「怒りのやり場に困るなら、俺に当たってもいいぞ」

 もちろん、この子はそんな事をしないと判断して言った。

「そんな事をしたら、我が寿々(すずの)()家末代までの恥ですわ……」

 溜息混じりに答えた寿々乃井は、静かに天吹の方へ向いた。

「先程は、(わたくし)もどうかしてましたわ…… 申し訳ありませんでした…… でも、これで終わりじゃなくってよ! あなたが部活に戻られても、今度は負かして差し上げますわ!」

「うん」

 天吹は笑顔で答えた。天吹は天吹で心が広い、さすがマイエンジェル。

「それと……」

 寿々乃井はまだ何か言いたげだった。

「生徒会長として相応しく無い振る舞いをされるのなら、その時は許しませんことよ!」

「うん。頑張るよ」

「それでは、ごめんあそばせ」

 そう言いながら、お付きの二人と共に寿々乃井は去って行った。

 

 ともあれ、大事にならなくてよかった。安堵する俺に天吹が近づいてきた。

「朝霧君…… あの…… ありがとう」

 体育館の影によって薄暗いが、天吹が少し頬を赤らめているのがわかった。そして、ハニカミ上目使い。女子に免疫の無い俺にとってそれは致死量の可愛さであった。

「ま、まぁ、俺がいなくてもあの子は自分で手を止めたんじゃないかな?」

 俺の顔はトマトのように赤くなっているだろう。明後日の方を向いて誤魔化す。

「朝霧君は優しいですね」

 それ以上はいけない。トマトが完熟を通り過ぎて破裂する。

「そ、そんな事は無いじょ…… 無いよ。はは」

 今心拍数を測っても、数えられないのではないかと思うくらい鼓動が早くなっている。

「そういえば、朝霧君も次期生徒会に選ばれたんですよね? 私なんかが会長で大変だと思うけど、一緒に頑張りましょう!」

 勿体無き御言葉…… 拙者、貴方様の為に身を粉にして勤める所存。ただ…… ただ一つ許して頂けるなら、その太陽にも勝る笑顔を写メらせてほしい……

 もちろんそんな事は言えず。

「お、おう! 頑張ろうな!」

 普通に返した。

 まだドキドキしている俺に向かって、さらに天吹は俺の心臓を壊しにかかる。

「何かと連絡することもあると思いますし、携帯の番号を教えて頂けますか?」

「神様…… ありがとう……」

「え?」

 あまりの至福に神への感謝を口に出してしまった。こっちがお願いしたいくらいだったのだ。

「いやいや、なんでも無い! ……でも、去年のクラスのライングループがあるよな?」

 なぜ俺は、余計な事を言ってしまうのだ…… 素直に番号交換しとけばいいものを……

「そうですけど、やっぱりこうゆう事は直接の方がいいですよね?」

「仰る通りに御座います」

「え?」

 今度は訂正しなかった。天吹も俺と同じような考えを持っていた事が嬉しかった。

 無事に携帯番号を交換したところで、五分前の予鈴が鳴った。

 俺と天吹は教室のある校舎に急いで戻る。

 別れ際、小さく手を振る天吹に見とれて盛大に転んだ。


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