新しい仲間
今日の朝は少し違う。
真新しい制服に鞄、そして使い慣らしたバッシュなどを持っての登校になる。
春休みに卒業した中学校の体育館で夜、クラブがあっていたので参加していた。
身体は動くのでどれだけ通用するか楽しみにしている。
そして、いつものように秀太と学校へ向かう。
「今日は花金だぜー、気分がすこぶる調子良しっ!
テルちゃん今日はいい天気だねー。」
「そだな、絶好のチャレンジ日和って感じ。
にしてもテンション高いな。」
「昨日さー、あの後美穂がバス停で待ってるとこに遭遇してさ。
後ろにのっけてうちにきたわけよー。
昨日は両親がいい感じに飯行ってて遅くなるって連絡入るー。
そしたらまー、1発ご馳走様でした。なわけよ!」
「そーゆーことね。
美穂にちくっとくか、秀太がご馳走様でしたって。」
「おーい、やめてくれーい。
また顔真っ赤にして怒られるー。けどそれが可愛くてたまらん。」
つまりちくって欲しいのだそうだ。
そんな話をしながら学校へ。
教室に入ると後ろの棚にそれぞれ部活の道具が置いてあった。
みんなも今日から部活が始まるみたいだった。
小山田と話し終わった後に八田の話を聞いたため誘えていない。
しかし、棚の上にバッシュケースが1つ置いてあった。
思わず声をかけた。
「あのバッシュって小山田のやつ?」
「そう。昨日女バスの監督に誘われて菊池も来るって聞いたからさ。」
「あの人やるなー。」
「ん?」
思わず声が出てしまった。
「他にも来るやついるみたいだから楽しみだな。」
「あぁ、やっぱりバスケをまたしようかなと思ってきたから
楽しみにしてる。」
「お、それは良かった。
ここで上を目指していこう。」
ーチャイムが鳴る
今日から正式に授業が始まる。
しかし第1回目はどの授業もイントロと先日行われたテストの解説だった。
特にこれといったこともなく時間が過ぎていく。
やっぱり最初というのは面白くない。
新しい出会いはあるけれど、どことなく緊張感が漂っている。
そんな雰囲気が解けるには何かハプニングが起きなければならない。
ふと、先日もらった年間行事予定表を見た。
今日は、4月8日金曜日。
4月、13日身体測定。 27-30日宿泊体験。
5月、16、17日中間試験。
6月、18日文化祭。
7月、1日クラスマッチ。 8.11.12日期末試験。
一学期の予定はざっとこんな感じだった。
ハプニングが起こるとすれば、宿泊体験だろう。
そういえば入学式の時、ここの文化祭は1年生のみ合唱コンクール
があり、上位3クラスが当日発表し、金賞がわかるらしい。
それも朝一の校内だけに披露らしい。
授業が終わり、昼休みになる。
いつも通り秀太と食堂へ向かう。
「おいテル、5組の数学担当の先生もう採点終わったとか言って答案返された!」
「まじか!? で、どーだったよ?」
「83点!はっはー、クラス5位に入りましたー。
ベスト5が発表されて、よく勉強しました、なんて言われっちゃったー。」
「やべーな、春休みラスト3日の追い込みが功を奏したな。」
「それな、いやー、クラス内で一気に有名人!
女の子から授業あと、ここ教えてー。なんて言われてウキウキー」
「くそー、悔しいねぇ、やっぱ普通科受けるべきやったかねー。」
「さっきも財布持って出ようとしたら食堂行くのー?って言われて、うん。
って言ったら私たちもとか言うから、友達いるからって断ったよー、可愛くなかったしー」
「むっちゃ文系って感じするな。こっちはまだまだしゃべりよるの少ないぞ。」
「そっかー、俺のクラス結構ワイワイし始めたー。
さっそく女子はうっさいグループが出来つつあるよ。
仲良くなるから遊び行こーぜー」
「さすが秀太。たのんだ!
今日は日替わり定食が生姜焼きや、これだな。」
「なら俺B定食の野菜炒めー。」
飯も食べ終わり、デザートに食堂の外にある売店でアイスを食べた。
「この後、5組来ーや、どうせ暇やろー?
俺暇やし。」
「いーよ。文系味わったろうやないかい。」
教室に入ると特理と雰囲気が全く違う。
まず、うるさい。そして輝いている。
「俺窓側の1番後ろだからかなりいいよー
横の席知り合いだから座っていいよ。」
「なんかいいな、初々しさと楽しさが混ざった感じ。」
「やろー?まだまだ探りながらってとこだけどねー。
あ、あっこにおるやつらが可愛いのとかうっさいのがいるグループ。」
「おー、確かにあっこだけ花咲いてんな。」
すると、後ろから女子が秀太に話しかけてきた。
「あー、柏木くんが話してたあのお友達ー?」
「そ、こいつがあのテル!会いたいって言うから連れてきたー」
「よろしくね、テルくん。私、柴本奈緒。
バスケ部のマネージャーしてみようかと思ってるの。」
「お、マネージャーか!嬉しいねー。中学でしてたとか?
ってか秀太、それ先に教えろよー。」
「うん、中学でしてたけど、高校では怪我で出来そうにないからさー。」
「いいやろー?この子可愛いしマネージャーに入れてあげてやー?」
「いやいや、そこ俺の権限ではどうにもできん。
でもぜひ入って欲しいね。」
「でもテルくん優しそうな人で良かった。
柏木くんが散々あおるから心配しちゃったよー。」
「げっ、しばっちゃん、それ言っちゃダメでしょー」
「秀太、まさかー?」
「それは言ってないー、テルは人見知りだから最初怖いよーって言っただけー」
「んーー?それって何ー?柏木くーん。」
「テルに聞いてくれー、俺は知らなーい。」
「なんか羨ましいな、こんな生活してんのか、秀太たち。」
「なんだよいきなりー。今のところしばっちゃんだけだぜ、話すの。」
「あ、そうだ。柴本さん、放課後に何人かでバスケ部に顔出しに行くけど、
一緒にどう?」
「いいのかな?私行っても。」
チャイムが鳴った。
「あ、やべ、戻らないと。じゃ、終わったら迎えにいくからよろしくね。」
「あ、うん。お願いします。」
「じゃーなー、バスケ頑張れよー」
「おう、まかせい。」
走って教室へ戻る。
戻ると掃除が始まっていた。
この学校では昼休み後に掃除を行う。
掃除が終わり、午後の授業と時間が過ぎていった。
「それじゃあ俺は友達と待ち合わせて行くから後でな。」
「おっけ、16時半に集合だったよな?」
「あぁ、何人いるか楽しみだな。」
教室を出て5組へ向かう。
5組はすでに解散しており、廊下で秀太と柴本さんが待っていた。
「おせーよテルー、ほんじゃ俺は帰るぜー」
「おう、また来週な。」
「来週の掲示板楽しみー」
そう言い残し、手を振りながら帰っていった。
「よっしゃ、行きますか。」
「うん。ちょっと不安だけどよろしくね。」
体育館へ着くと先輩たちがいて、おばちゃん先生もいた。
挨拶をすると、更衣室を案内され着替えに向かった。
柴本さんは先輩マネージャーのところへ行った。
「いっぱいいるな、八田。」
「あぁ、今年は楽しみな代らしいぞ。」
またこの場所に戻ってきた。
今年からは新川高校バスケ部としてのスタートだ。
「じゃあ、始める前に新入生の自己紹介からお願いしてもいいかな。
名前、出身中学、身長、ポジションをよろしくね。
俺は、ここのキャプテンをしている山田です。」
同期が順に始めた。
井本一、香盤中、167cm、SG。
八田興毅、宅原中、186cm、C
坂本政孝、宅原中、180cm、SF
牧野亮、笹岡中、180cm、PF
藤田拳、一志中、174cm、PG
神林佑太郎、城中、178cm、SF
伊月香、城中、166cm、PG
大山大地、香盤中、164cm、PG
小山田圭、宮町中、172cm、SG
マネージャーとして、
柴本奈緒、第二中
すでに11人もの新入生が入部を確定している。
やはり小山田の自己紹介で同期がどよめいた。
「それじゃあ、上級生の人数が少ないからさっそく練習に入って。」
キャプテンの言ったように2、3年生合わせても10人ぐらいしかいない。
身長はそこそこ高いが1人を除き、細身だった。
練習に入るとやはり小山田はレベルが少し違う。
この高校ではすでに1番だった。
練習の最後に女バスの監督の一言で上級生対1年生でハーフゲームをすることになった。
練習は男子と女子でコートを1つなので、試合になると譲り合い、交代制で行うらしい。
上級生チーム
PG、古田、166cm
SG、浅井、170cm
SF、山田、175cm
PF、的場、183cm
C、木場、185cm
1年生チーム
PG、小山田、172cm
SG、菊池、177cm
SF、坂本、180cm
PF、牧野、180cm
C、八田、186cm
試合が始まった。
ジャンプボールは余裕で八田がはじく。
ファーストオフェンスは、小山田。
右へ1つドリブルした瞬間、シュート体勢に入った。
ーザシュッ、
1発目で3Pを決めて見せた。
その後も1年生チームは個人技をそれぞれ生かし、差を離していく。
坂本、八田とのトリオは馴染みがあるので連携もみせる。
1Qが終わって、7-23とリードした。
そのまま後半も攻め込む。
藤田や大山、伊月にPGが変わるとパスや速攻が増え、また違ったリズムが生まれる。
身体能力も身長も勝っている分、面白いようにリバウンドがとれる。
終わってみれば22-51と大差で勝った。
1年生で集まっていると、女バスの監督がやってきた。
「あんたたち、いいものを見せてもらったよー。
ここまでとはねー、上には上がいるんだから頑張るんだよ。」
「「「はいっ!!」」」
こうして、最初の練習を満足して終えた。
先輩たちも嬉しそうにこの代なら県大会にいけると話してくれた。
スポーツというものはすごいもので、すでにみんなそれなりに仲良くなっている。
柴本さんも明るい性格なため、すぐに入り込めた。
高校を出て電車組と分かれ、いつものように帰る。
今日は本当に楽しかった。
今週の土日は大会らしく、1年生はオフだそうだ。
事前に知っていたため、今週は遊ぶ予定を立てていた。
朝、服を着替え、チャリを駅に置き歩いて迎えに行く。
「おはよう、有希。」
「おはよ、あき。今日はどこ行くのー?」
「今日は、有希が前言ってた地下街のお店回ろうかなと思う。」
「ホントー、めっちゃ行きたかった!行こー。」
手を繋ぎ、向かう。
中心地の駅へつくと大勢の人が行き交っている。
地下街へつきお店をゆっくりと有希のペースで見て回る。
午前中フルに歩いて一足靴を買っただけだった。
しかし、有希はとても満足そうな顔をしていた。
途中、あれも欲しいこれも欲しいと言っていたのに。
昼ごはんに定食屋に入った。
ごはんおかわり無料にひかれた。
私は、とんかつ定食を頼み、有希は肉炒め定食を頼んだ。
「やっぱ、あきと買い物してると楽しいね。
これからどーする?」
「ありがとね、これからはノープラン。
有希に任せよっかな?」
「おっけい、一旦帰って荷物置いてから浜に行こうよ!」
「お、いいねぇ、そいじゃ少しゆっくりして家戻るか。
なんか適当に有希のシャツみたいなん貸してー。」
料理がきた。
オーソドックスなとんかつ定食だが、お好みで梅肉をつけれたのでつけて食べる。
これがかなりうまい。
梅って聞くだけで口の中が準備を始める。
そこに衣がサクサクで柔らかいお肉がジュワッと広がる。
んー、うまいっ。
有希も美味しそうに食べているので満足。
帰り道、高校での新生活の話をお互いにした。
有希の高校は私立であらゆる分野のピンキリがいる学校で、そこの普通科にいる。
そこはなかなか個性豊からしく動物園みたいだそうだ。
今日、私と会って落ち着くと言っていた。
有希の部屋で着替え、浜へ向かう。
ここは綺麗な砂浜で夕方になるとすごく気持ちが穏やかになる。
少し遠距離になってしまう悲しさや色々と心配されていること、たくさん話した。
あたりが暗くなり始め、お腹も空いたので有希を送り、家に帰る。
今日はベタなデートみたいになった。
春休みはもっともんもんとしていた。
日曜日は特に何もなく、夜にあるバスケのクラブへ行った。
そして月曜日、また学校が始まる。






