試験始まる!
教室へ入るとやはり静かだった。
他のクラスから来ている生徒が何人か見受けられた。
とりあえず席につき、先生がくるまで人間観察をした。
こういう時後ろの席はありがたい。
ーチャイム音が鳴る
鳴り終わると同時に担任が入ってきた。
出席確認を終え、1限から順に試験があることを伝えられた。
前の席のゴツいやつから声をかけられた。
「菊池?だよね。俺、川口。
この試験って悪かったら再試験とかあるかな?」
「いや、ないと思うよ。
とりあえず春休み頑張った人を評価して調子づかせて勉強させよう
って魂胆だろーからさ。」
「そっか、よかったー。
俺たぶん最低点で合格したと思うから心配なんだよね。
あ、先生来た。それじゃ。」
後に川口が本当に最低点だったことが判明する。
9時になり1時間の試験時間、15分の休憩時間で順に行われた。
3つの試験が終わり、50分間の昼休みに入る。
私は秀太と食堂に行った。
「うえー、人すげー多いじゃん。
こりゃ俺たちの飯遅なるー。」
「席は取れたし、ゆっくり先輩たちでも拝もーや。」
「テルは呑気だなー、拝んでも、何も落ちては、きませんぞ?
俺は徳川のおっちゃんみたいには待ってられん!」
すごいリズミカルにジェスチャーを交えて言ってきた。
「それでも統一したのはそのおっちゃんだぜ?
今日の試験で出てたな。」
ほどなくして取りに行き、ラーメンと半チャーハンを食べた。
秀太はラーメンと餃子のセットだった。
「うーん、ここのラーメンとチャーハンは普通だな。」
「ったりめーだ、高校の食堂に求めちゃいかんよ、テルちゃん。」
「でもよー、アキラたちの高校の食堂、レストランのシェフ入れて美味い飯
でてくるらしいぞ。」
「まじか!?
せけー私立!許さん、いつか食べに行ってやる。なぁ、テル。」
「勝手に混ぜるなー、行きたいけど。」
「げっ、もう昼休み終わんじゃん。
戻ろーぜー、花花ラーメンの決着つけに!」
「だな、おばちゃんごちそーさまー。」
教室へ戻る。
すると、大多数が弁当を持ってきていたらしく、みんな座って
何人か固まって食べていた感じだった。
少し場が和んでいたので思いきって有名どこのバスケ少年に話しかけに行った。
「宮町中のバスケ部のキャプテン?だよね」
「あ、うん。菊池?だっけ、バスケ部に入るん?」
「もちのろん。入るよね?」
「実は迷ってんだよね。
家遠いし、弓道やってみたいってのもあってさ。」
「え、またバスケしよう。
ここで一緒に上を目指そう。
俺は中学では上のポジションやってたんだ。」
「誘ってくれてありがと。
やりたいはやりたいから1回観にいかない?」
「もちろん!行こう。」
こうして小山田と話すことができ、見学も決まった。
そして午後の試験が始まり、15時35分、試験の終わりを告げるチャイムが鳴った。
感触としてはそれなりだと思う。
春休み最後の方に宿題を集まってやっただけに、頭に残っていた。
終礼も適当に流し、結果が次の週の月曜日に渡され、上位30人は掲示されることだけは
はっきり聞き、解散された。
教室を出ると、中学のチームメイトだった八田と坂本がいた。
チーム最長身だった八田が話してきた。
「入学式の日にバスケ部の顧問に練習のこと聞いたら
明日練習あるから参加していってよ。
って言われたから行かない?」
「ほんと?行くよもちろん!ありがと。
後、俺のクラスにスゲーやついるから期待できるぞ。
宮町のキャプテンがここに来てんだ。」
「まじか、確か市のベスト5に入ってたやつか。
顧問に聞いたら中学でバスケしてたやつら26人もいるらしいから楽しみだな。」
「とりあえず明日だな、これから始まるんだな、楽しみや。」
「高校では県ベスト8に入りたいよな。」
「だな、上手いのもいるし狙えるんじゃない?」
坂本もうなづく。
高校バスケの話をしていると、1人のジャージを着た元気そうなおばちゃん先生が話しかけてきた。
「あんたたちバスケ部に入るの?
私は女子バスケ部の監督してる矢嶋です。」
八田が答える。
「はい、明日から練習に入ろうと思ってます。」
「君おっきーねー。即戦力になってくれるかな?」
「186cmです。八田って言います、Cしてました。」
「いいねぇ、期待してるよ。
君達も彼に隠れてるけどそれなりにおっきんじゃない?」
「俺は177cmで菊池って言います、SGしてました。」
「180cmで坂本です、SFしてました。」
「いいねー、今年の男子は楽しみだねー。
がんばるんだよー。」
この人はかつて高校時代有名な選手で現在はここで女子の監督をしている。
男子に監督がいないため、ついでに面倒をみているらしい。
「はい、まずは県大会出場を目指します。」
3人とも意気込み述べ、別れた。
いつも通り秀太と帰る。
「今日、神楽いかねー?」
「お、いいね。
ちょうど腹減ってたし、あの天津飯想像するとニヤニヤするよな。」
「だろだろー?
でも俺は今日、新メニューのチリ炒飯を頼むんだなー」
「あっこ、新メニュー出たのか。
秀太情報はえーな。」
「まーねー、あっこのおいちゃんとは仲良しだからな。」
神楽に着くと見覚えのあるチャリが止まっていた。
ーガラガラっ
やっぱりそこには美穂とその友達がいた。
「げっ、美穂いんじゃん。
それにチリ炒飯食べてやがる、今日からのメニューを。。」
「なにー、食べてちゃダメなのー?
それに、げっ、って失礼だかんねー。
久しぶりに彼女に会ったのに喜べないの?
テルちゃんとしつけといて!」
「ごめんてー、急に会うとビックリするだろ?
心の準備しとかないと緊張してしまうからさー」
「何でもいいけどこの新メニューちょーおいしいよー。
それじゃ!」
こう言い残して友達との会話に戻る。
こそこそと聞こえる。
「えー、美穂の彼氏?イケメンだね。」
「いいなー。」
席につくと、
「くそー、美穂のやつ俺がチリ炒飯頼むのわかって言ったなー」
「お前らほんと仲良いな。
なんか俺は嬉しいよ、うんうん。」
「やめろやめろー。
とりあえずテルは天津飯だよな?
おっちゃん、チリ炒飯と天津飯でよろしくー!」
「はいよーーーーーぉ」
神楽は中華料理店で、安くてうまいと評判で昼は混む程だが、
夕方はなぜか顔馴染みしか入れないため空いている。
看板は準備中とあるので、一般客は入らない。
そして夜19時から2時間だけ営業するという独自のスタイルを持つ。
ちなみに天津飯は350円、新メニューのチリ炒飯は400円と、
基本的に500円以内で収まる。
「できたぞーーーーーぃ。
これうんめぇーから気をつけてなーーー」
「おっちゃんサンキュ!
これを楽しみに今日生きてきたんだよ、うまそー!」
「ありがとおっちゃん。
相変わらず元気そうで良かった。」
「冷めんうちに食いなーーー。」
「うめーーーーー!!!
これ最高、ピリ辛感に押し寄せる香ばしい匂い、おっちゃん最高です。
テル、一口食べてみーや。」
頬張ると、確かに口の中でエビチリの辛みに卵がマッチ。
さらにエビの香ばしさ、おっちゃん曰く卵白を泡立てて先に包むんだとか。
とにかくうまい。そしてこのいい匂いのする湯気がたまらなくそそる。
「これうめーな。
秀太に先越されちまった。」
「ニヤニヤ止まんねー、マジでうめー。」
おっちゃんも嬉しそうにうなづいていた。
美穂たちが先に
「ね?おいしかったでしょ?」
と言い残し、友達と帰っていった。
私たちも食事を終え、家へ帰る。
明日からは、ついに高校バスケのスタートを迎える。