表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/109

2.就職しました

毎日、投稿し続けるぞ。

可能な限り。


前回のあらすじ。

リヴァは、誘拐された。

 リザと手足を開放されたリヴァは、木製の巨大な建物の前に立っていた。

 ちなみにポチは、蝶々を追いかけてどこかに行った。


「ここが技能士ギルドか。入るのは初めてだな」

「まぁ確かに、リヴァやおばさんなら自己解決できるしね」

「うん。ここらへんに出る魔獣なら、問題にならないし」

「…………リヴァ、問題っていうのは、魔獣だけじゃないんだよ?」


 魔獣とは、動物が魔力をなんらかの方法で貯め込んで、体が変異して凶暴化した動物たちのことを指す。

 そのなんらかの方法とは、よくわかっていない。

 空気から取り込んでいるとも言われているし、何かを食べちゃっているとも言われている。


「つっても、技能士がやってるのって、魔獣退治じゃないの?」

「それ、戦闘が得意な人がやるやつだよ」

「お前は?」

「当然やってるよ~。割のいい仕事だしね」


 二人は、ドアを開けて中に入った。

 外観から予想できていたが、やはり中は広かった。

 木製の大きなテーブルに、向かい合うように置かれている長椅子が二十セット。

 構造はどうやら、三階建てになっているらしい。

 掲示板があって、そこには依頼書が貼られている。


「全部の階に、掲示板があって依頼書が貼られてるよ」

「階によって、違いがあんの?」

「うん。一階に貼られてるのが、F~D。二階は、C~B。三階は、A~Sだね。

 依頼の難易度が上がるにつれて、貼られてる階が上がるんだよ」

「ふ~ん。技能士って確か、ランクがあったよな? そのランクによって、受けられる依頼の難易度が制限とかされんの?」

「全~然! 別に、ランクEの人がSランクの難易度の依頼を受けることもできるよ。命の保証はしないけど」


 技能士協会、ドライである。


「技能士のランクって、どういう制度な訳?」

「ただの目安だよ。ランクが高い人程、強いってのは間違ってないよ。ランクの決め方は、達成してきた依頼の数で決まるんだから」

「数?」

「そうそう。詳しいことはあんまりわかんないんだけど」

「おい、現役技能士」

「まぁ、適当に数をこなせば上がるよ」


 大丈夫か? ここ。

 僕、もうお家に帰りたい。


「リザのランクは、どれくらい?」

「Cだよ。この支部にいる技能士の中では、一番高いね」

「Cで最高なの? ここ、大丈夫か?」

「いやね~、ランクは本人が希望しなければ上がらないようになってるんだ。で、私より有能な人はいるんだけど、ランク上げないんだよね」

「怠け者め……」


 中を見回して、部屋にいる人間を見てみる。

 筋骨隆々とした、斧を持ってる者や剣を持ってる者。ローブを羽織っている者。

 他にも、私服という明らかに戦闘を行う気がない者たちもいる。

 リザがリヴァの手を取り、引く。


「それじゃ、そろそろ登録しようよ。受付に言えば、すぐやってくれるから」

「うん」


 リザに手を引かれて、受付にたどり着く。

 受付にいるのは、テンプレ通りの若い女性が座っている。


「すぐに済ませるか」


 めんどくさそうに頭をかいて、テーブルに歩み寄る。


「技能士登録にきたのかね~?」

「うぉ!?」


 突然、老人の声が聞こえた。

 声の主を探して、きょろきょろ見回す。


「ここじゃよ。ここ」


 声の方向へと向き直ると、そこには身長一メートルにも満たない小柄なおじいさんがいた。

 おじいさんは、テーブルの上に座っている。


(小さいから、置物かと思ってた)

「失礼じゃの~」

「ッッッ!?」


 心を読まれた。

 このおじいさん、妖怪か?


「リヴァ、その人はここのギルドマスターだよ。名前は、ヨルグ・ラフマン」

「え? この妖怪が?」

「…………」


 おじいさん改め、ギルドマスターことヨルグの額に青筋が浮かんだ。

 どうやら、怒らせちゃったらしい。


「ほほほ、言うのぉ。若者よ」

「え? あ……その、えと、ごめんなさい」

「いいんじゃよ、いいんじゃよ。どうせ儂は妖怪みたいなんじゃから、仕方ない」


 あ、ヨルグさんすねちゃった。

 どうしよう。これで、就職できなくなっちゃうとか嫌だな。


「さて、主はどういう要件できたのかの?」

「えと、技能士登録にきた次第であります。はい」

「そうかそうか。では、試験を受けてもらおうかの」

「え? マスター、試験なんて必要ありま」

「あんたは黙っとれい!」

「いやいや、リヴァには技能士になってもらわないと、困るんですけど!」

「受かればよかろうなのじゃ!」


 ていうか、マスターあまり怒鳴らない方がいいのでは。

 血圧が上がってポックリ逝ってもらっても困るぞ。


「そんな訳で、主には試験を受けてもらうぞい!」


 ヨルグは怒り心頭だ。

 ここはなんとか、怒りを鎮めるために大人しく試験を受けることとしよう。


「すいません。新人登録したいんですけど」

「はい。では、この書類に、氏名や年齢などの必要事項を記入をお願いします」

「これぇ!! 儂を素通りして無視しようとするな!!」





 リヴァはヨルグに棒でボッコボコにされて、長椅子に座らされた。

 滅茶苦茶痛かった。

 リヴァの向かい側には、ヨルグが座っている。

 ちなみにリザは、我関さずといわんばかりに受付嬢とくっちゃべっている。


「ルールは簡単じゃ。儂らがやることは」

「やることは?」



「大食い競争じゃ!!」

「あんた年を考えろ!!」



 ヨルグの年齢は、おそらく七十といったところだろう。

 そんな人間が、大食い競争とか正気の沙汰ではない。


「なにを言うか! 儂は生涯現役じゃ! 若い者などにまだ負けん!」

「いやいや、死にますよ?」

「貴様、なんと無礼な!」


 ヨルグの怒りのボルテージが上限どころか、天元突破してしまった。

 ここは怒りを鎮めるために仕方なく、大食い勝負を受けるしかないだろう。


「それでは、用意はよいな?」

「わかりましたよ。やります」


 リヴァは思わずため息をつく。

 目の前に、大量の料理が運ばれてくる。

 料理を運んできてくれた人たちは、みなリヴァに申し訳なさそうな顔をしていた。

 だがそれに気づいていないヨルグは、不敵な笑みを浮かべてリヴァに宣言する。


「それでは、用意……」

「始めんでいい」

「ふが!?」


 ヨルグはいきなり背後に現れた男に、頭をテーブルを叩きつけられた。

 おいおい、ここ老人に厳しすぎやしないか?


「ったく、せっかくの新人候補になんてことしてんだよ、このじいさんは」


 リヴァは男に目を向ける。

 灰色の短髪に赤の瞳をもつ、顔立ちが整ったイケメンであった。

 男の体つきは、そこそこ鍛えてるっていう程度ので、そこまで大したものではない。

 男が、リヴァに爽やかな笑顔を向ける。


「悪かったな、うちのマスターが馬鹿なことやらかしちまって」

「いえ、気にしてないので、大丈夫です」


 男が握手を求めて、手を差し出してきた。


「俺はラバック・ベルゼルドだ。気軽に、ラバって呼んでくれ」

「これはどうも。リヴァ・クシャトリアです」


 リヴァは名乗り返しながら、握手に応えた。

 事が終わったとみたリザが、にこにこ笑顔で歩み寄ってきた。


「お~、リヴァ、早速ここのエースと仲良くなってるね」

「え、この人、エースなの?」


 リヴァの言葉に、ラバックは照れ臭そうに笑う。


「おだてんなよ、リザ。俺は別に、持ち上げられるような人間じゃない」

「またまた~。私より全然強いくせに」

「ははは、白兵戦じゃ敵わねぇよ」


 だが逆に言えば、遠距離戦なら勝てるということである。

 彼のポジションは、後衛なのだろう。


「ところで、リザ。お前と、そこのリヴァの初仕事は、俺のパーティーと共同でやらないか?」

「あれ。コクロ……ラバ先輩()新人指導?」

「そうだ」

「待て待て。リザ、お前、新人指導しないといけないのか?」

「うん。そうだよ」

「それなら、俺に構ってる暇ないだろ。早くそいつのとこに行ってやれよ」

「うん。だから、いるじゃん」

「は?」


 リザは、ビシッ! と指を差した。


「だから、私は今、リヴァの新人指導教員として一緒にいるの!」


 考えてみよう。

 リヴァが技能士として登録したのは、いつ?

 今日だ。

 まぁ、まだ登録できていないが。


「あ、本当だ。俺、新人だわ」

「今さら気づいたの!?」


 ラバックは呆れながら、リヴァに言う。


「他は知らないが、ウチでは初仕事には必ず腕が立つやつが同行するようになってんだよ。で、それが『新人指導』って呼ばれてる訳だ」

「てことは、リザ。お前は、腕が立つって認められてんのか」

「そうだよ、エッヘン!」


 リザは、そこそこサイズのある胸を張って答えた。

 リヴァはさっと視線を逸らす。


「で、リザ。返答を聞こうか」

「あ、はい。受けさせてもらいます。仕事は何ですか?」

「軍人崩れの盗賊退治だよ。四人でやっても割が良い仕事だし、戦闘経験を積ませることができるからな。出発は明日の朝だ」

「了解でありま~す」


 勝手に話が進められていく。

 リヴァは完全に蚊帳の外であった。

 リザはいきなり、向き直ってきた。


「リヴァ、早く登録済ませてきちゃってよ。登録済ませないと、仕事いっても報酬もらえなくなるよ?」

「それだけは嫌だ!」


 リヴァは受付に大急ぎで駆けていくのであった。





 リザは受付で登録手続きしているリヴァを見て、不気味な笑みを浮かべていた。


「へっへっへ、計画通りだ。リヴァが技能士になれば、私の計画は遂行されたも同然」


 にやにや笑う。けたけた嗤う。


「これで私の、SEY計画は成就する!」



「そうかそうか。それは是非とも聞いとかないとな」



 リザは頭を、鷲掴みにされた。

 受付で手続きをしていたはずの、リヴァにだ。

 そんなはずない、と受付を見てみると、リヴァの姿はなかった。


「え? え!? なんで!? さっきまであそこにいたよね!?」

「残像だ」

「そんなことできなかった、というかできないよね!?」

「今できるようになった」


 ふざけるな、と叫んでやりたかった。


「それより、その計画について、じっくり聞かせてもらおうか」

「ま、待って! やめて! フラグを立てようとしたその矢先に折ろうとしないで! これじゃあ、フラグって呼べなくなる!」

「そのふざけたフラグをブチ壊す!」

「うわぁぁあああああん」


 リザはリヴァに引きずられていった。


ちなみにSEY計画とは、『Soro Escape Yeah!』計画の略であったという。

リザは今まで、ソロで活動していたらしい。

しょうもねぇ。



こうして、リヴァは晴れて技能士になったのであった。

試験官「フラグとは、本人のいない場所で立てるのだ!」

リザ「教官!」

リヴァ「お前ら面貸せ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ