番外編3.ナナオ、本屋へ行く
ナナオ、王国的恋愛小説にふれるの巻。
こちらに戻ってくるときに、私はお気に入りのロマンス小説を持ち込んだ。でも、毎日読むのはちょっと飽きる。そこで思ったのは、王国にはロマンス小説があるのだろうか、という素朴な疑問だ。
日々の仕事に疲れたときには、何も考えずにさらりと読めるロマンス小説が最高である。
ちなみに私の好みのジャンルは契約結婚物と中世ロマンス物。ヒーローは傲慢なタイプよりもヒロインを信じてくれるタイプがいい。そして愛されヒロインならもう即購入だ。もしくは危険な目にあうヒロインをとことん守りとおすっていうのもありだ。こちらに持ってきた本のうち一冊はヒーローがその両方を兼ね備えてて、私のイチオシだ。
ちょうど私のところにエルシーがお茶道具を持ってきてくれたので、今度本屋に行きたいから付き合ってほしいと伝えたところ、「わかりました!!」とそりゃあ嬉しそうに言われてしまった。
やっぱり、ヴェラさんやデルレイの言うようにエルシーに世話をしてもらう感覚に慣れたほうがいいのか~、とエルシーの様子をみて思う。
「ナナオさんは、どのような本がお好みなのですか?」
「えーっと、・・・・」この国にはロマンス小説的なものはあるんだろうか。
「恋愛小説っぽいのはあるのかな。なんかずーっと人の日記か歴史書ばっかりだから肩の凝らない小説が読みたいのよね」
「なるほど。お任せください!今、王国の女性たちの間で人気の本があります!!「春の姫君冬の騎士」という小説なんですけど、王女と彼女に仕える騎士の話なんですが、昔王女を守りきれずに怪我をさせてしまったことが心の傷になっている騎士と、そんな彼をずっと愛してきた王女の話なんです。」と熱く語るエルシー。なるほど、エルシーもはまってるんだね。
「うわー。いいねえ、そういうの読みたかったのよ!!」きっと騎士の心を王女が解かしていく王道的展開なんだろうな~。うお~読みたいっ。
エルシーが案内してくれた本屋は王宮に通じるメイン通りに店を構える「リヨンズ書籍店」。
「このお店は王国でも老舗の一つで、本でしたら希少本から新刊本まで何でも取り扱っているのです。店内でお茶を飲むこともできるんですよ」
王国の本屋は、入ってみると私にも馴染みのある本屋と内部が似ている。違うのは、立ち読みを歓迎しているところかな。ところどころに椅子が置いてあって、興味のある本を座ってめくることができる。手書きのPOPなんかも置いてあって、宣伝のしかたまで似ている。
「立ち読みしてる人も多いね」
「そうですね。新刊本は全て見本ですから、ほしい場合は店員さんに言うと新品を持ってきてくれます。そのかわり希少本売り場に見本はありませんし、立ち読みもできません。全て一点ものですから、売り場にはリストが置いてあるだけです。」
「へーっ。じゃあ、ここで立ち読みした本はどうなるの?」
「半年に一度、セールがあって見本だけを販売する日があるのです。それを狙ってる人もいて、ちょっと遅く行くと完売して閉店というときもよくあります。」
「うわー、それも行ってみたいなあ」
「お連れしたいのはやまやまなのですが、ナナオさんの場合は当主様が承諾しないと思います」
そうかもしれないが、今は以前とは状況が違うじゃないか。今度、デルレイに試しに言ってみようかな。あんがい、エルシーが付き添うならってOKでるかもしれないし。
エルシーおすすめの「春の姫君冬の騎士」はすぐに見つかった。人気の本らしく手に取りやすいところに配置してある。
「ナナオさん、試しに読んでみたらいかがですか?」
「そうね。エルシーも私のことを気にしないで好きな本を読んでいていいからね」
「ですが・・・」
「いいからいいから。それにしても、たくさん恋愛物があるねえ。エルシーは本を選ぶときの基準ってあるの?」
「裏表紙のあらすじも読みますが、作家の方で買う場合もあります。特に“春の姫君”を書かれた方の作品にハズレは少ないと評判です。」
「なるほど」どこの国も、本の買い方にさして変わりはないわけだ。私はエルシーが本を選び始めたのを確認すると、手近にあった椅子に腰掛け「春の姫君」を読み始めた。
その後、この作者の本を大人買いしてしまった。私はどんだけロマンス小説好きなんだ・・・。
読了ありがとうございました。
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ここで書いた本屋さんはこんな感じのがあったら面白いなと思って書いております。
不快に思われた方がいらっしゃったら申し訳ありません。
ナナオがおおいに語る回です。
大人買いって、ほんと大人の特権ですよね。
私もやったことあります。マンガ本とか・・・。