8.魔道士は熱く語る
魔道士ってこんなですよ。の巻
お昼を食べた後も、私は書庫でひたすら歴史書だけを探し出し机に置いた。
半分ほどを机のうえに置いたところで夜6の時になった。
デルレイと夕食だっけ・・・。
着替える必要はないとのことなので、仕事で着たカットソーにスカート。それに今まで履いていた3センチのパンプスという格好で夕食に行くことにした。
「明後日の休みに、服と靴買おうかなあ。最低限しか持ってきてないからなあ・・・・エルシーさん、いい店知ってたら教えてほしいんだけど」
そういうと、エルシーさんは「ようやく世話係の出番が来ました・・・・私、頑張りますっ。明後日、オススメの店にご案内いたします!!」とすごく嬉しそう。
えーっと、教えてくれれば自分で行くんだけどなあ・・・という私の困惑をよそにエルシーさんは“外出許可をいただかなくてはっ”とか“ついでにアクセサリーのオススメ店もご案内しますっ”とか異様に張り切っていた・・・。
夕食も昼食と同じ部屋で、今度はなぜか二人きりだよ、おい・・・。
料理は、たっぷりのパンと前菜と主食で成り立っている。毎日こんなに食べてたら絶対太るな。庭を散歩しよ。それにしても、パンも美味しいけどそのうちお米が恋しくなりそうだ。
アレンさんに頼めば送ってくれるかなあ・・・・。
「食事は、美味しいか?」
ぼんやりと考え込んでいたのを食事が美味しくないのかとデルレイに思われていたようだ。
「へ?食事は美味しいですよ」
「・・・何か考え事してただろ。」
「へ。いえいえ別にたいしたことではありません」
「ふーん。ならいいが・・・そういえば明後日は休みだろう。何か予定はあるのか」
「エルシーさんに案内してもらって服と靴を購入します。最低限しか持ってきてないので」
「・・・・そうか。」
「あ、そうだ」
「なんだ」
「仕事の合間に庭を散歩してもいいですか。」
「かまわん。」
「許可をありがとうございます。」
そのまま私とデルレイは、ひたすら黙々と食事をし、最後の飲み物になった。
ああ・・・さっさと部屋に戻ってのんびりしたい。
「ナナオ。昼に魔道士について知りたいと言ってたな」
「あーはい。言いました」アレンさんに聞こうと思ってたんだけど、ヴェラさんの目力に負けましたよ。ええ。
「まず、ブレドン王国は魔力を持つ者と持たない者がいる。差別はないが、魔力がないと就けない職業というものがある。治療師、魔法騎士、魔道士がそれに当たる。治療師はそのまま治療魔法が特に優れているものがなる。魔法騎士は攻撃魔法と守備魔法が優れているものがなる。魔道士は、先にいった両方の魔力を持ちなおかつ幅広い知識が必要になる。」
「幅広い知識?」
「そう。この国には人のためになる魔法と人に害をなす魔法がある。害となる魔法を取得できるのは魔道士だけだ。ほかにも天文学や薬学、医学、王宮に勤めるからには政治学も知らないと潰されてしまうからな。俺はあんまり出世に興味ないけど、出世したい魔道士は政治学を学ぶのに熱心だな。」
「クロスビーは出世や名誉に興味ないの?」
「俺はクロスビー家当主って言うだけで、それなりに地位があるからね。これ以上忙しくなりたくない」
「なるほど。ヴェラさんから魔道士長のランス・アイルズバロウさんの右腕だと聞いたけど」
「あの人は、王国で怒らせてはいけない人第一位なんだ。仕事ぶりもすごいが、人柄も食えない。アイルズバロウ家は代々治療士の家系なのだが、この人はなぜか魔道士になった。そのうち顔を合わせることになると思う。アレン叔父の友達だし」
「へえ~」デルレイが逆らえない人、その2ってやつか。その1は間違いなくアレンさん。
何にせよ、魔道士というのは大変なエリート職業だというのは分かった。名家に生まれたうえに能力に優れたエリートじゃ、ハンサムだけとちょっと残念な性格になってもおかしくないな、と私はなんだか納得したのである。
読了ありがとうございました。
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魔道士についてはウィキベティアの「魔法使い」の項を参考にしました。