エピローグ:結婚後の魔道士と整理係
相変わらずの二人。の巻
「ナナオ様、お茶が入りました」私は自分の部屋でエルシーが入れてくれたお茶を飲んでいる。
「ん~、いい香り。やっぱりエルシーの入れるお茶は美味しいね~」
「ありがとうございます。ナナオ様」
「・・・・様付けはやめようよ~、エルシー。」
「だめです。屋敷の者たちは皆“ナナオ様”とお呼びするのが楽しいんですから。楽しみを奪わないでください。もうご結婚されて1年たっているのですから、諦めてください」
「・・・・うう。わかったよ。」
私の現在の仕事は図書室の整理係だ。書庫と倉庫はある程度片付いたため、たまに入るくらいになっている。
結婚してナナオ・クロスビーになっても、私の日常があんまり変わらない。デルレイが「パーティーなんかは出なくていい」と社交界からの誘いをシャットアウトしてくれているからだ。その代わり、出かけるとご令嬢の鋭い視線を浴びたりすることがたまにある。まあ、ご令嬢方の憧れである“クロスビー家の跡取り”といきなり現れた一般人が結婚しちゃったからなあ。でも、中身を知ってたらご令嬢方は果たしてデルレイと結婚したのかねえ。謎だ。
変わったのは屋敷の皆が「ナナオ様」と呼ぶようになったのと、部屋がデルレイの隣になったくらいだ。なんでもクロスビー家では当主の部屋の隣が奥様の部屋と決まっているのだそうだ。当然、アマロも一緒に部屋を引越した。
「ナナオ、ここにいたのか」王宮から帰ってきたらしいデルレイが、クロードさんに教えられたらしく部屋に入ってきた。
「おかえりなさい。デルレイ」私が立ち上がると、デルレイが近づいてきてキスをする。
人のいる前ではやるなと何度も言ったんだけど・・・・全然、人の言い分をきいてないよ。この人。
エルシーが目のやり場に困ってるじゃないか・・・あれ?
しかも、いつの間にか人払いをしたらしく、お茶の道具とともにエルシーの姿が消えてるし。
「・・・いつの間に」
「なにがだ?ああ、エルシーか?俺が入ってくると同時に下がったが。ところで、ナナオ。体調は大丈夫なのか?」
「へ?あ、ああ。体調ね」実は、今朝からどうにもだるくて何をするのも億劫だった。心配したデルレイが治療術師を手配してくれたのだ。
「実は・・・」
「うん。なんだ?」デルレイはただ事じゃないとおもったのか真剣にこっちを見る。イケメンなんだから、普通に見てくれ。迫力が増してびびってしまうだろうが。
「デルレイは、お父さんになるんだよ」
「は?」きょとんとするデルレイ。
「だーかーら。デルレイはお父さんになるの!3ヶ月だって。」何度も言うとこっちが恥ずかしい。
「本当に?ええっ・・・じゃあナナオが母親になるのか」
「当たり前でしょうが」
デルレイは私のおなかに優しく触れる。
「そうか・・・・ありがとう。ナナオ」
私が笑うとデルレイも笑う。
「ナナオ。」
「はい?」
「整理係の仕事は休むように。」
「ええっ!なんでよ」
「仕事はだめだ。図書室で本を読むのとかはかまわない。まあ、散歩も屋敷内で付き添いがいれば許可する。外に出るときは俺が一緒だ」
「えええっ。なにその過保護」
「ヴェラたちに知らせないとな。食事にも気を遣わせないと。それから奥様に子供服の相談をしないとな。あとは叔父上とナナオのご両親、フミコ、キミコに知らせるか。あとはランス様に勤務の調整をしてもらおう。」
「どうしてデルレイが勤務の調整するのよ」
「子供が産まれたときに、すぐ見たいから」
ひえ~。デルレイが暴走している。でも、嬉しそうだから水を差すのもかわいそうだよなあ・・・・それに、デルレイの様子をみてると何だか面白いし。とりあえず自分が冷静でいれば何とかなるか・・・と、どんと構える自分がいた。
その後、私とデルレイは3人の子供(男2人、女1人)に恵まれる。私が妊娠するたびにいつも同じ対応をしたのは言うまでもない。
読了ありがとうございました。
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これにて本編完結になります。
番外編を何本かUPする予定です。
(まだ考え中。ストックなし・・・どうしよう)
番外編のUPが終了しましたら【完結済】にしたいと思っております。
この作品は今まで書いた中で一番長かったです。
こんな長くなるとは作者も予想していませんでした。
そして予想外にたくさんの方にお気に入り登録や感想をいただき
驚きましたが、嬉しいです。
お気に入り登録していただいた方、感想を書き込んでくれた方
この作品を楽しんでいただいた方全てにお礼を言いたいです。
長い間お付き合いいただいて、どうもありがとうございました。