82. きっかけは七生
七生はキューピッドだった。の巻
七生の伯母・公子視点
長文になります。ご了承ください
「きみさん。この格好でいいかな。七生ちゃんが彼氏を連れてくるんだろ?緊張するなあ~」
「秀隆さん。普段どおりにいきましょう?リラックスリラックス」
今日は、私の姪・七生が恋人を連れてくる日だ。実家と親友の史子ちゃんには既に紹介したらしく、私たちと会ったら恋人の国に一緒に戻るらしい。
「普段どおりって言っても、ああ緊張する。徹君の気持ちが分かるなあ」
「秀隆さんったら」
私たちが接近するきっかけになったのは、七生だった。
当時、私は32歳。七生は4歳。当時、篤が病弱で(今はすっかり健康体だが)、義妹がどうしても篤にかかりきりになってしまったのと徹が忙しかったため、うちの実家で預かっていたのである。
週末に私は七生を連れて大好きなモンブランを食べに出かけた。前に七生にお土産として買って帰ったら「きみこちゃん、おいしい!!」とそりゃあ喜んだので、それなら実際に食べに連れて行ってあげようと思ったのである。
「七生、ちゃんとおとなしくモンブランを食べられる?おとなのお店だから、七生もおねえさんにならなきゃね」
「うん!!ちゃんとする。おはなしをするときはこえをちいさくするんだよね」
「そう。大人の女はね場所と時間と状況をみてその場にふさわしい態度がとれる女性のことをいうんだよ」
「そっかあ。わたしもそうなれるかな」
「どうかな~。今日行くお店で出来たらなれるかもよ」
「わたし、ぜったいきみこちゃんみたいなおねえさんになるの」
「あらー、嬉しいことを言ってくれるじゃないの」
私は七生と手をつないで、お店に向かっていた。
「桜木さんに子供がいるとは知らなかったな」
ある日、廊下でばったり出会った開発部の清水部長に言われた。清水部長・・・秀隆さんは、当時37歳で若くして開発部の部長。しかも独身で、女性社員からも人気のある一人だ。秘書課の私とは会議のときに顔をあわせるくらいで、話をしたこともなかった。
「子供、ですか?」結婚もしてないというのに・・・というか、ここ2年ばかり相手もいませんが。
「土曜日に、見かけたんだ。」
「ああ。それって姪っ子ですよ。弟の娘です。二人でモンブランを食べに行ったんですよ。私も姪も大好物なので」
「姪御さんなのか。・・・で、モンブラン?」
「はい。美味しいお店があるんです。清水部長も甘いものがお好きでしたら、場所をお教えしますけれど?」
「いや。君がつきあってくれないか?」
「は?」
「君に近づきたかったのに、全然きっかけがなくて正直焦ってたんだ。どうかな」
それから、1年後。私は清水公子になったのである・・・・・
「公子伯母さん。私、この人と結婚することに決めたの」と、七生が連れてきたのは背が高くハンサムな外国人男性だった。
流暢な日本語をしゃべり、ハンサムな顔に似合わず気さくな彼は秀隆さんとも打ち解けて、私も好感を持った。
お茶を交換するのを七生に手伝わせるついでに、馴れ初めなどを聞きだす。
「七生~、えらくハンサムな男性じゃないの。デルレイって」
「あー・・・まあハンサムな部類だよね。」
「まさか、自分の姪が面食いだとは思わなかったわ」
「ち、違うわよっ。顔で選んだんじゃないもん!!」七生が真っ赤になって否定する。
「冗談よ。彼の下で働いてて人となりも知ってるんでしょう?」
「うん。・・・・さっきも話したけど、ほぼ永住になっちゃうから史子や公子伯母ちゃんとあんまり会えなくなるのがちょっと寂しいんだ」
「私も寂しいわよ。でもさ、新しい家庭を作るってわくわくするでしょ?デルレイが手紙は転送してくれるって言ってたじゃないの。私も史子ちゃん同様、手紙を出すわよ。七生なら、どこにいっても大丈夫。」
「うん・・・私、頑張る」
「七生。無理しないで、デルレイとお互い思いやりを持ち合って自分のペースでやりなさい。それでいいのよ」
「わかった。」
思わず二人とも涙ぐんでしまい、しばらくキッチンから出られなかった。心配した秀隆さんとデルレイがキッチンにやってきて、今度は4人でしみじみしてしまったのは言うまでもない。
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第三者視点は、これで終わりです。