81. 親友とその恋人-2
史子の祝福と寂しさ。の巻
七生に引き合わされて、私たちは互いに自己紹介をしあった。
「はじめまして。デルレイ・クロスビーといいます。デルレイと呼んでください」
「初めまして。手塚史子です。私のこともフミコって呼んでください。日本語が上手なんですね」
「ありがとうフミコ、私たちは同じ年齢なのでお互いにもっと普通にしゃべりませんか?」
「そう?じゃあ、遠慮なく。デルレイは日本語が上手なのね。七生のために覚えたの?」
「そう。ナナオのご両親に挨拶するために覚えたんだ。」
にこやかに話すイケメン外国人の隣で、真っ赤になってるわが親友・・・付き合いは長いがそんな顔を初めて見たよ。
デルレイは見た目こそ近寄りがたいイケメンだけど中身はフレンドリーな感じで、私は話をしてて楽しい。七生も私とデルレイが気が合うのを見て嬉しそうだ。
でも、デルレイと結婚したら永住しちゃうというのは、やっぱり寂しい。
「私、七生とデルレイはお似合いだと思うし結婚にも大賛成だよ。でも、連絡が取りづらくなっちゃうのは寂しいかも。」
「クロスビー商会に手紙をくれれば、ここの社長が俺のところに転送してくれるからナナオに届くよ」
「わかった。じゃあ、手紙を書くよ。七生も返事ちょうだいよね。手紙のやりとりなんて、学生の頃いらいじゃない?教室でこっそりまわしたわよね。」
「したした。しょうもないことしか書いてないのに、先生に見つからないように回したよね。史子、私も向こうに到着したら手紙を出すよ」
「こっちに戻ってくることは無いの?」
「頻繁には無理だけど、顔を出すことはできる」デルレイが教えてくれる。
「会いたくなったら、手紙で打ち合わせしようよ。史子」
「そうだね。」
私と七生はお互いに笑いあう。そうしないとお互いに泣いてしまいそうだから。親友が日本を離れる前に見る私の顔が泣き顔だなんて、絶対にいやだ。
「七生、元気でね。」
「史子も元気でね」
デパ地下で貴之へのお土産を購入して、自分の家の最寄り駅に到着した。すると、改札の向こうに貴之が立っていた。
「貴之、どうしたの?」
「ふみが電車に乗る前に電話くれただろ?朝見送れなかったから、迎えに来たんだ。桜木さんは元気だった?」
「それがね、七生に恋人が出来たって話はしたでしょう。その人と結婚するんだって」
「へえ、それはおめでたい話だね」
「でもね、七生は恋人のいる国に永住することが決まっているの。これからは頻繁に会えなくなるんだ」
「そうか。寂しくなるね・・・でも」
「?」
「ふみには、俺がいるから。俺で我慢してください」貴之がちょっとおどける。
「なにそれ~。もう」私が笑うと貴之も「我慢してくださいって、変かな」と笑う。
なんだか手をつなぎたくなって、貴之の手を握った。
貴之は「こういうのって、久しぶりだよな」と言って、強く握り返してくれたのだった。
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史子視点、終わりです。
史子視点のラストは先に決めていたのですが、
それに至るまではなかなか思いつきませんでした。
次回は公子伯母視点です。