80. 親友とその恋人-1
史子の回想と驚き。の巻
親友から「彼氏が10日間の休暇をもらって迎えに来た。都合がよければ戻る前に一緒に食事でもしない?」とメールをもらった私は、さっそく週末に会う約束を取り付けた。
私と七生の出会いは、幼稚園の頃だ。そのころ私たちが通っていた幼稚園には”ばら組のショウタくん”という王子様がいた。ショウタくんは性格が優しいだけでなく、運動も得意でそりゃあきらきらした男の子だった。
そんなショウタくんを好きな女の子はたくさんいて、ショウタくんが遊んでいると、女の子たちがみんな同じ遊具で遊びたがり彼の周りはちょっとしたハーレム。私も七生もハーレムの一員で、お互いにどっちが先にショウタくんにおはようって言うかとか今思うとしょうもないことでライバル意識をバチバチさせていたのだった。
しかしそのハーレムにも終焉のときが。引越してきた”ほし組のリリコちゃん”という女の子にショウタくんがひとめぼれをし、ふたりはくっついてしまったのである。
いまや、ショウタくんもリリコちゃんの顔もぼんやりとしか覚えていないけど、そのときの七生との会話は今でも思い出す。しょうもないことだけはよく覚えている私の記憶力・・・・。
「ショウタくん、リリコちゃんのことすきなんだってー。しょうらいけっこんするんだって。」
「はつこいはやぶれるものよって、きみこちゃんがいってた。」
「きみこちゃん?」
「おとうさんのおねえさん。おとうさんよりかっこいーの」
「ふーん。おんなのひとでかっこいーの?」
「うん。わたしもしょうらいきみこちゃんみたいにばりばりはたらいておもいっきりあそぶんだあ」
「ばりばりはたらくと、おもいっきりあそべるの?」
「きみこちゃんがそういってた。おもいっきりあそぶにはせきむをはたしてからのほうがたのしいんだって」
「ふうん。よくわかんないや」
「うん。わたしもわかんなーい。でも、きみこちゃんのいうこときいてるとおねえさんになったみたいなの~」そういうと、七生がへらりと笑った。
その後、七生と仲良くなって短大まで同じところに通うことになる・・・・。
週末になり、私は出かける準備を終えて、私は寝ている貴之をちょっとだけ起こした。
「貴之~。ごめん、ちょっと起きてくれる?」
「んぁ?・・・おはよー、ふみ。あれ・・・?どっか出かける予定だったっけ・・・?」
まだ目が覚めきってない貴之は、外出の格好をしている私を不思議そうに見ている。
「ほら、七生の彼氏が迎えに来てるって話をしたでしょう?今日、会ってくるからさ」
「ほあ~・・・そういえば、そんなこと言ってたね・・・・・」
「いちおう、言ってから出かけようと思って。じゃあ、行ってくるわね。貴之は疲れてるんだから寝てて?」
「わかった~。いってらっしゃ~い」そういうと貴之はまた眠りに入った。
帰りにデパ地下で貴之の好きそうなお菓子を買って帰ろう。私は寝てる貴之の頬にキスをして家を出た。
七生と会う場所は、なんと七生の勤め先。といっても、もともと七生の勤めている会社は社長の住宅の一部を使用しているそうで見た目は普通の家と変わらないそうだ。
さらに、長期の海外出張でアパートを長期空けておくと不用心だからと社長が住宅の一部屋を七生に提供してくれているそうなのだ。なんだか至れり尽くせりの環境の中で七生は仕事をしているらしい。
でもその代償が長期の海外出張だもんなあ・・・・私には無理だわ。
到着した七生の勤め先は・・・・洋館だ。憧れの「グリーン・ゲイブルズ」に部屋を増設した感じで、赤毛のアンが今にも現れそうだ。七生・・・・うらやましすぎる。
どきどきしながらインターホン(さすがにこれじゃないと危ないもんね)を押すと、返事の代わりに七生が門までやってきた。
「七生~。勤め先、まるでグリーン・ゲイブルズじゃないっ。羨ましいんですけど」
「絶対、史子そういうと思った。私も最初びっくりしたもん」
「あれ?彼氏さんは?」
「中にいるよ。さ、いこいこ」私は七生の後を付いていった。
応接間らしきところに通されて、アンティークの家具にうっとりしながら出されたお茶を飲んでいると七生が男の人を連れて現れた。
その男の人は、背が高くてシルバーグレイの髪の毛にコバルトブルーの瞳・・・・そしてすごいイケメン・・・七生の歴代彼氏の中でも一番のイケメンだ。
七生・・・出張先で何があったの??
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