79. 姉とその恋人-3
桜木家騒動その3(収束)。の巻
その後は、なんとなく場が和やかになり姉さんが「そろそろ帰るから」と言い出す頃には両親もデルレイさんとそれなりに打ち解け、祝福モードに入っていた。
見送りに行くという両親の申し出を姉さんは「一生の別れじゃないんだから」と断り、がっかりした両親を見ると「こっちに帰って来るときは連絡するから」とフォロー。デルレイさんもうなずいていた。
駅までは再び俺が送ることになった。
その頃には、恵理香と信哉も実家から戻っていたため俺はいったん家のほうに戻ってから車を出すことにした。
「お義父さんたちのほう、何かあったの?」信哉をベビーベッドに寝かしつけた恵理香が不思議そうに聞いてきた。
「姉さんが結婚相手を連れて戻ってきてるんだよ。といっても、もう帰るんだけどね」
「えっ!!お義姉さん、恋人いたの??」恵理香は意外だという口調。
「海外出張先の支社長だってさ。姉さんと同じ歳で、すげー背が高いんだよ。俺より20センチはでかいね」
「ふうん、そうなんだ」恵理香はちょっと面白く無さそうだ。
前から感じていたんだけど、どうも恵理香は姉さんに妙に対抗意識を持っている。専業主婦志向の恵理香と、共働き志向の姉さん。なんかそのまんま母さんと公子伯母さんの図式なんだよなあ・・・・。ということは俺は父さんと同じポジションってやつか。
そういえば公子伯母さんが、勤めていた企業の部長と結婚すると聞いたときの母さんの反応と今の恵理香の反応ってそっくり・・・・。
これは姉さんたちと会わせないほうがいいのかもしれない。そう思った俺は恵理香に「ちょっと姉さんたちを駅まで送ってくるから」と断って、慌てて姉さんたちが待っているところに戻った。
俺が戻ってきて車を出してくると、姉さんが声をかけてきた。
「篤。私たちは恵理香ちゃんに挨拶しなくていいの?」
「あー、いいよ。ちょっと疲れてるみたいだからさ。信哉はまだまだ手がかかるし」
「そっか。あんた、育児と家事ちゃんと手伝ってる?お父さんみたいに、なんでも任せっぱなしじゃないわよね」
「仕事が忙しくて・・・その、なかなか」
「休みの日は手伝ってるんでしょう?」
「ま、まあそれなりに」
「それなりねえ。ふうん・・・まあ、人の家のことだからいいわ。私が口出ししたってしょうがないものね」
姉さんはそれ以上は何も言わずに、デルレイさんと俺の分からない言葉で話し始めた。聞こえてくる分からない言葉がデルレイさんの国の言葉なんだろう。何を話してるんだか知らないが二人で楽しそうだ。
いちゃつくなら、家に帰ってからにしてもらえないだろうか・・・・これから家に帰ったら間違いなく恵理香の質問攻めに合う俺・・・・ちょっとため息が出てしまった。
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七生の弟、篤視点は今回で終わりです。
帰りの車の中で二人がブリードン語で何を話していたのかは
読んでいただいた皆様の想像のお任せします。