78. 姉とその恋人-2
桜木家騒動その2。の巻
両親は案の定、姉さんが連れてきたデルレイさんを見て固まっていた。
そりゃあ、「紹介したい人がいるから」しか言わないから、日本人かと思っていたらどえらいハンサムな背の高い外国人が現れたんだ。まったくの予想外ってやつだ。
とりあえず、居間に移動し母親がお茶とお茶菓子を持ってきて座ったものの・・・沈黙が。
俺はさっさと自分の世帯にもどろうかと思ったんだけど、父の「頼むからいてくれ」という無言の訴えに負けて居間に座っている。
姉さんは「お父さん、お母さん。デルレイ・クロスビーさんよ。デルレイ、私の父と母よ。」とあっさりしたもの。お互いに「初めまして」と挨拶しあったものの、また沈黙。
姉さん、この空気をわかっているだろう?ここはもうちょっとしゃべれよ!!と俺は心の中で姉にツッコミを入れていた。
「その・・・クロスビーさんは、どのような仕事をしているのかな?」
父がようやく口を開いた。母よりは父が衝撃から立ち直るのが早かった。
「どうぞ、デルレイと呼んでください。私は、叔父が経営しているクロスビー商会の支社を任されております。ナナオさんが私のアシスタントとして支社にやってきたのがきっかけです」
「はあ・・・そうなんですか。ナナオはどんな仕事をしているのですか?」
「支社は出来たばかりで、ちょっと資料が片付いていなかったものですからそちらの整理をお願いしています」
「そうなんですか。デルレイさん、ナナオはお役に立っていますか?」
「はい。ナナオさんは私に必要な女性です・・・・お父さん。」
デルレイさんと姉さんは、まだ完全に立ち直っていない両親に真面目な顔をした。
こ、これは、あれか。このタイミングか、デルレイさん&姉さん!!もう少し和やかになってからのほうがよくないか??
俺の内心の叫びが聞こえるわけもない。
「ナナオさんとの結婚を許していただけないでしょうか」デルレイさんが父に頭を下げた。
「お父さん。私、デルレイと結婚したいの。」姉さんも一緒になって頭を下げた。
「け、結婚??・・・・・紹介したい人がいると聞いた時点で、予測はしていたけども・・・・七生・・・」
「・・・・・七生。結婚したら、どこで生活するの?日本?」
それまで黙っていた母が口を開いた。
「ううん。日本には、戻ることが少なくなる。デルレイの国に永住するから」
「・・・・そう。デルレイさん、少し質問してもいいかしら」
「はい。」
「あなたのご両親は七生との結婚をどう思っているのかしら」
「・・・・母は私が5歳のときに父は私が28歳のときに亡くなりました。私の親戚は、叔父だけです。叔父はナナオさんをクロスビー商会に雇った張本人です。ナナオさんとの結婚を賛成してくれています」
「ごめんなさいね。失礼なことを聞いてしまったわ。」
「いいえ。」謝罪した母に対してデルレイさんが笑って首をふった。
母が黙ると今度は父が口を開いた。
「デルレイさん。七生は、自分で何でも決めてしまう性格です。あなたの助言も聞かないかもしれないし、事後承諾なんてこともあるかも知れません。それでも、あなたは大丈夫ですか」
「かまいません。だいたいナナオさんの行動しそうなことは何となく把握できますから。」涼しい顔でデルレイさんは言い切った。
その発言を聞いた姉さんは、「そりゃそうでしょーよ」とボソリとつぶやく。それが聞こえたらしいデルレイさんは姉さんを見てニヤリと笑う。
両親は見てなかったが、俺はしっかり見てしまった。どうやらデルレイさんは、姉さんをしっかりつかまえていることは間違いない。たぶん、俺たちが反対したってこの人は絶対姉さんを離さない。
なんか、さっさと賛成しちゃったほうが後々のためになるような気がする・・・・。
読了ありがとうございました。
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デルレイが言ったクロスビー商会の支社長という設定は
七生の提案です。




