77. 姉とその恋人-1
桜木家騒動その1。の巻
「もしもし。七生だけど。会ってほしい人がいるので都合のいい日を教えてくれない?」
姉の一本の電話で、桜木家はちょっとした騒動になった。
俺の名前は桜木 篤。30歳で3歳下の妻・恵理香、今年生まれた息子・信哉がいる。
騒動の元である姉の七生は俺の2歳上で、32歳。姉さんは昔から自分でさっさと決めた後に親が事後承諾せざる得ない状況になってから報告するタイプだった。
高校に進学するときも三者面談前に両親に「自分でいろいろ検討してみたんだけど、この高校を受験するから」と資料を提示し、短大に進学するときも「この短大に決めたわ。家から通えるし。」と言い納得させるだけの資料と試験結果を提示。
短大を卒業し、地元の企業に就職することを期待していた両親に対して、CMでよく見る製薬会社のパンフを差し出し「この企業の内定もらったから。いずれ一人暮らしをするために家を出る」と宣言し、社会人になって2年目で物件を見つけて家を出て行った。
さらに転職したときも長期の海外出張に行くときも全部決まってから電話であっさり報告するだけ。報告してくるだけマシなのかもしれないけど、母親はそのたびに父親に「どうして七生はいつも・・・」と愚痴をいい、父親は胃薬を飲む。
とはいえ、姉さんが全部一人で決断したかというとそうでもない。最初の就職までの姉さんの相談相手は両親ではなく父の姉・公子伯母さんなのは間違いない。
公子伯母さんは大企業で秘書として第一線で働いていて、小さい頃から伯母に可愛がられていた姉さんはその影響をしっかり受けているのだ。
小学生の頃から「わたしはぜったい、ともばたらきでかじのできるひととけっこんするんだ」などと言っていた。普通、小学生女子が将来は共働きで家事ができる男と結婚などと宣言するだろうか。
その姉が恋人を連れてくる。今まで彼氏が何人かいたのは何となく知っていたけど家に連れてくるのは初めてだ。
「七生ったら、この間顔をみせに来たときは、そんなそぶりを全然見せなかったのに」と母さんはぼやき、父さんも「なにも、こんな急に」と意味もなくウロウロしはじめるし。
俺はそんな両親の慌てぶりを高みの見物と決め込んでいたのだけど、火の粉は俺にも降りかかってきた。
「篤。七生が駅に到着したら迎えにいってちょうだい」
「ええ?俺?」とはいうものの、姉さんの恋人を一番最初に見られるというのも面白いかも。そう思った俺は喜んで承諾した。
姉さんが駅から電話をしてきたため、俺は車で駅まで迎えに行った。俺が姉さんと会うのは・・・披露宴のときいらいか?ということは1年は顔をみてないということか。それでも姉さんはすぐに分かった。
「篤。あんたが迎えに来てくれるとは思わなかったよ。」
「母さんに頼まれたんだ。えーっと・・・・姉ちゃん?」俺は姉さんの後ろにいる男性に圧倒されていた。
そこには恐ろしくハンサムで、背の高い外国人が立っている。
「え?あー、ごめんごめん。デルレイ、これは弟の篤。今30歳だから私の2歳下だよ。」
「初めまして。デルレイ・クロスビーと言います。ナナオさんと同じ歳です。どうぞデルレイと呼んでください。」
見た目は間違いなく外国人なんだけど、口からは流暢な日本語。
「初めまして。弟の桜木 篤です。姉がお世話になってます。俺のことはアツシと呼んで下さい。姉ちゃん、とりあえず後ろに乗ってくれよ。えーっと、デルレイさんも狭いかもしれないけど、どうぞ」俺は驚きつつも言葉が通じることにほっとした。
デルレイさんはでかい。俺は172センチだけど俺より20センチくらい高くないか?姉さんと30センチくらい違うのではないだろうか。それに加えて、なんだか彼には威厳がある。俺は両親が間違いないく圧倒される様子が頭に浮かんでしまった。
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七生の弟・篤(30歳。地元企業に勤めるサラリーマン)視点です。
デルレイが桜木家に与える衝撃(?)が書けるといいなあと
思います。