74.七生の残り1ヶ月
七生とアレンさん。の巻
クロスビー商会の仕事を再開して、2ヶ月たった。書庫も片付き、今はアレンさんの庭を手入れしている。植物系魔法が自分にあるとわかったとき、密かに決意していたことだった。
アレンさんは「ナナオに庭の手入れをしてもらうなんて悪いですよ」と言っていたのだが、私が王国で植物系の魔力が発覚したことなどを話し、なんとか了承を得た。
庭の手入れを中断して、アレンさんと休憩をとる。
「あの石にさわって緑色に光ったんですか。それは確実ですね」
「はい。デルレイにもそう言われました。最初は持て余していたのですが、仲良しの植物もできました」
「仲良しの植物・・・意思の疎通をしたんですね?」
「はい。魔力が発覚したときに、実践してみようと思って屋敷のバジルさんからちょっとしおれたアマリアローズをもらったんです。」
「そうですか。バジルから・・・彼は元気ですか?」
「はい。屋敷でデルレイを“デルレイ坊ちゃま”と呼んでいます。」
私がそういうと、アレンさんは笑った。
「バジルはデルレイが小さい頃から屋敷にいますからね。庭園でデルレイがいたずらしてバジルに怒られたなんてこともありましたよ。」
「デルレイでもいたずらとかしたんですか。」
「してましたよ。デルレイがすばしっこく逃げるんですが、バジルのほうが一枚上手でしたね。」
「・・・デルレイが子供らしくて、なんかほっとしました」
「?」
「倉庫でデルレイのベアを見つけたときに、思い出話をしてくれました。私、自分の環境がいかに贅沢だったのか改めて思ってしまって」
「あの頃の彼の環境は、ちょっと複雑でしたからね。デルレイは自分の子供の頃の話をしたということは、よっぽど心を許しているんですね。」
アレンさんに言われて、私はそのあとのことを思い出してなんだか恥ずかしくなってし
まった。
「ナナオ。こちらにいるのもあと1ヶ月ですね。今度はデルレイと一緒に来ることになりそうですか?」
アレンさんがお茶のおかわりを注いでくれる。
「へっ・・・・いやあ~、どうなんでしょう。ははははっ」
「デルレイは、そのつもりのようですよ?そろそろ覚悟を決めたほうがいいですよ。」
「・・・・はい」
私は注がれたお茶をごくりと飲んだ。
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次回、デルレイ側の話です。