73.デルレイの日常-3
デルレイ、パーティに行く。の巻
「クロスビー様。お久しぶりですわね。ここのところ、全く顔を出さないものですからどうしたものかと・・・」
近寄ってくる女性から立ち上る濃厚な香水の匂いが鼻にきつい。
「申し訳ございません。ここのところ忙しくて・・・ちょっと知り合いを見かけましたので。」
そういうと、俺はさりげなくその場から離れた。
すっかり足が遠のいていた社交界のパーティーに顔をだした理由は今日の朝に遡る。
王宮の部屋で仕事をしていると、誰かが部屋をノックしてきた。
「デルレイ。今日、王宮のパーティーに顔を出してくれないか?」顔を出したのはランス様。
ランス様がノックをして部屋に入ってくる・・・ということは、面倒な事だということだ。
「お断りします」
「即答かよ。頼むよ~。オーガスタのお得意様主催のパーティがあるんだが、会議が入ってしまって途中参加になりそうなのだ。最初だけオーガスタをエスコートしてくれよ~」
奥様のエスコートを断るのは無理だ。俺には出席しか選択肢はなかった。
「悪いわね。ランスが無理やり頼んだのでしょう?」
「確かに、ランス様から頼まれましたが・・・ナナオともども奥様には世話になっていますから。お礼です」
「ナナオが戻ってもう1ヶ月過ぎたのね。帰ってくる日が待ち遠しいでしょう」
「はい。」
「ふふっ。即答したわね。・・・・デルレイ、途中からランスが合流するから、あなたは適当なところでお帰りなさい」
「わかりました。お気遣いありがとうございます」
俺はそういうと、奥様と別れ適当にぶらぶらすることにした。こういう場所はナナオが来るまでは、暇つぶしに当時付き合っていた女性たちを連れてきていた。
話しかけてくる女性たちやその親を適当にやりすごし、偶然来合わせた知り合いと軽く雑談をしながら、俺は一息いれるために庭に出た。
庭の静けさと涼しさが心地よく、ホッと柱にもたれていると「デルレイじゃないの?」と声をかけられた。
そこには、かつて付き合っていた相手・リベカがいた。
「リベカか?」
「そうよ。久しぶりね」
「結婚して、地方に行ったのでは?」
「こちらの主とは付き合いがあって、主人ともども招待されたのよ。」
「そうか・・・じゃあ、私は失礼する」
以前、リベカの肉感的な外見に惹かれてパーティで声をかけ付き合っていたものの、それだけでは付き合いが長続きするわけはなく、彼女に縁談が持ち上がったのを機に俺から別れを告げたのだった。
今でも、肉感的な雰囲気はあるものの心が動かない。
「デルレイ、待って。」
「なにか?こんなところで誤解されるようなことは避けたいのだが」
「・・・・まえにあなたの家のメイドを見たわ。知らない女性と一緒だった。」
「それは報告を受けている」
「あの女性は・・・・?」
「私の大事な女性だ」
「あの子は特に美人でもなければスタイルがいいわけでもない。どこがよかったのかしら。」
「あなたに言う必要はない。私だけが知っていればいいことだ。リベカ、テレーズ・ベクラールが起こした騒動の顛末を知っているか」俺は静かに口を開いた。
「・・・・!」リベカが息を呑んだ。どうやら噂で聞いていたようだ。
「同じ目にあいたくなければ、私の大事な人に手を出すな。・・・・それでは、失礼する」
後ろから追ってくる気配もない。俺はそのまま会場に行きランス様夫妻を見つけ、挨拶をして家に帰った。
今頃、ナナオは何をしているんだろうか。
読了ありがとうございました。
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出番は終わったはずのリベカを再登場させてしまいました。
思いついてしまったもので・・・すみません。