67.七生の休暇-1
七生がまっさきにしたこと。の巻
私が王国から戻って最初にしたことは、1週間の休暇の申請だった。
「なんだったら、次に王国に行く3ヶ月後まで休んでいてもいいですよ?」
「そんなにいりません。クロスビー商会の書庫の整理残っていますから」
「ナナオは真面目ですねえ」
アレンさんは私を休ませるつもりだったらしく、私が休暇を取得することに賛成してくれた。
1週間の休暇のうちに会っておきたいのは友人の史子、父の姉・公子伯母ちゃん、孫フィーバー中の両親。
部屋に戻ると、私は自分のPCに電源を入れて携帯から史子にメールを入れた。
史子とは幼稚園で当時人気者だった”ばら組のショウタくん”を巡るライバルだったんだけど、ショウタくんが”ほし組のリリコちゃん”が好きなのを知ってから初恋に敗れたもの同士意気投合したのだった。
居住区域が近かったから、小学校と中学校も同じでなぜか高校も一緒。さらに学部は違うものの同じ短大へ進学という間柄。
現在、史子は結婚して地元で働く兼業主婦。私と会うのは実家に戻ったときだけだが、メールと電話だけはマメにしていたのだ。
『史子へ:お久しぶりです。七生だよ~。3ヶ月だけこっちに戻ってきています。実家に顔を見せる予定なんだけど史子に会いたいから史子の都合のいい日に実家に寄ることにしたよ。そんなわけで、都合のいい日を教えてね』
送信し終わると、すぐに電話がかかってきた。もちろん着信は『史子』。
「もしもーし。」
「七生!!3ヶ月だけってなによ?」
「いやー、こっちでする仕事があって3ヶ月だけ戻ってきたんだよ~。で、休暇を1週間もらった。実家はどうせ孫フィーバーで居場所ないからさ。史子に会ってるほうが気楽だし」
「あたしゃ、七生の実家かよ・・・”海外出張に行くんだけど、メールが使えないんだ~。でも楽しそうだから行ってくる~”なんてお気楽な言動残して出張したまんま半年以上帰ってこないし!!
七生のことだから、どこいってもやれるのは分かってたけど心配してたよ。今度は携帯通じるようにしてくれない?」
うーん、それは無理だ。親友。
「それは無理だよ。史子。だって、とっても僻地なんだもん。私の携帯最新じゃないし」
さすがに異世界ですとは言えず、僻地とごまかす。
「・・・・そうだった。七生はPCにこだわりはあっても携帯はどうでもいいんだった。メールと通話ができればいいんだもんね。」
「そうそう。それでさー、史子今忙しい?」
「タイミングいいわね。明日明後日と休みよ。ダンナも出張でいないから、うちに泊まりにこない?」
「駅前のホテルに泊まろうかと思ってるから大丈夫」
「実家に泊まればいいのに」
「義妹が気を遣うでしょうが。」
「小姑は大変だ。あ。じゃあ、私も同じホテルに泊まる。駅前で飲もうよ」
史子も私に負けず劣らず酒好きだ。しかもザル。
「いいねえ。じゃあ、明日ホテル取ったら実家に顔出してから史子のところに行くよ。一緒の部屋でよかったら予約しておこっか?」
「じゃあ、お願いしちゃおうかな」
「わかった。じゃあ明日ね」そういうと電話を切った。その後PCからホテルのツインを予約し準備万端。
さて、次は実家に電話か・・・・史子のときほど気乗りしないのはどうしてなんだろうか。
実家に電話すると、何回か呼び出し音がなった後に母親が出た。
「七生、久しぶりね。もう全然連絡寄越さないんだから」
「お母さん、元気?実は3ヶ月だけこっちに戻ってきたのよ。で、1週間休暇をもらったの。明日って誰かいる?」
「明日?お父さんと私はいるけど」
「わかった。明日、ちょっとだけ顔を出すわ。」
「ちょっとって・・・あんた、泊まらないの?」
「駅前のホテル予約してあるから。それに史子に会う約束したしね」
「そう・・・お父さんがっかりするわよ~。」
「そう?孫がいるからいいじゃん。泊まると弟たちに気を遣わせるからね。私も気楽なのがいいし」
「あんたは・・・・相変わらずなんだから。」母親がため息をつく。
「とにかく、明日顔をだすから」私は、母親のいつものセリフ「あんたは冷たい」が出る前に急いで電話を切った。
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七生が戻ってからの3ヶ月をどう過ごしたか。
その間デルレイは何をしていたのか・・・を書く章にしたいです。
離れてて改めてお互いを大切に思う感じが出るような展開に
したいです・・・がんばろ。