64.余波が転じて
七生、冷静に考える。の巻
女の人は、エルシーに気がつくと「あら、あなたはクロスビー家の・・・・じゃあ、こちらの方もクロスビー家にお勤めされてるのかしら」とエルシーに聞いた。
「こちらの方は・・・・」と、エルシーが言いかけたのを止めて、「私もクロスビー家で働いております。」と自分でボンドガール2号(さっき名づけた)に言った。
「あら、そうなの・・・オーガスタ、今日はもう失礼するわ。また今度」女の人はそういうと店を出て行った。
「ナナオ、ごめんなさいね。なるべくあなたに近づけないようにしてたんだけど」
オーガスタさんに謝られてしまった。
「・・・・デルレイの元彼女ですね?」
エルシーの渋い顔とオーガスタさんの慌てぶりで鈍い私でも気づく。やっぱりデルレイって、ボンドガール系が好みだったのね~。
「彼女・・・リベカはもう結婚してるし、デルレイと付き合っていたのは2年も前だし。でも、デルレイは自分の付き合っている相手を屋敷に連れてきたことはないはずなのに、どうしてエルシーは知っているの?」オーガスタさんが不思議そうに聞く。
「あの方は・・・当主様がご不在のときに一度突然現れたことがあるのです。」エルシーの眉間にしわがよる。
それで、屋敷の人間たちに反感を買うような態度をとったんだなあ・・・と私とオーガスタさんはエルシーの態度で何となく察したのだった。
「これからも、こういうパターンってありそうですよね~」
2年前に別れたということは、わりと最近の恋人だったわけだな。全員あんなボンドガール系だったら思わず笑ってしまいそうだ。そして、ボンドガールには程遠い自分がどうしてデルレイと付き合っているのか、ますます不思議に思ってしまう。
「・・・えーっと、ナナオ・・・・それについては、私もそんなことないとは言えないわねえ・・・・」オーガスタさんも苦笑いをするしかないようだった。
エルシーも「ナナオさん・・・・」と言った後黙ってしまったのだった。
夕食の時間、いつものように私とデルレイは二人だけで食事をしている。
「ナナオ、ウェルズ商会はどうだった?」
「きれいな服や小物がたくさんあってね、迷ってしまうよ」
「俺からプレゼント・・・というのは受け取らないんだろうな」
「当たり前じゃん。自分で買ってこそナンボだよ。プレゼントと言うのは誕生日とかにもらうからうれしいんだよ」
「そういうものなのか?」
「他の女性は知らないけど、私にとってはそういうものよ。
そうそうウェルズ商会に豊満な美人さんが来店したんだよ。確か名前はリベカさん、だったかな~。」
すると、デルレイの眉間にもシワが。イケメンが怖い顔すると2割増しで怖いからやめてほしいんだけどな~。
「リベカが?確か、2年前に結婚して地方に移住したはず・・・」
「あ、なんかね~。旦那さんが出張で王都に来るのに一緒についてきたんだって。」
「何か言われたりしたのか?」
「別になにも。ちらっと見られただけよ。デルレイの元彼女って聞いたけど」
「・・・そうだ」デルレイの言い方が苦々しい。別れ方が微妙だったのかもしれない。
「私も過去に彼氏いたしさ、お互いの年齢考えるとそういうものじゃないの?」
すると、デルレイは意外だという顔をして私をみた。
「なによ。私に彼氏がいたの変?」私だって、それなりに恋愛してきてんだ。
「いや、そうじゃなくて。文句とか言われるかと」
「だってさー、デルレイって中身はともかく外面はいいんだから恋人に不自由しなかっただろうし。これからもこういうことあるのは間違い無さそうだし。いちいち文句言うのも疲れるから」
これは、私の正直な気持ち。デルレイがどうとらえようとも。
「・・・言動にいささか引っかかりは覚えるけど・・・俺、ナナオにはかなわないかも」
そういうと、デルレイはなぜかテーブル越しに私の手を握ってきた。夕飯時に行儀の悪い男だな。食事に集中しようよ・・・と思いつつ、その手を振り払うなんてことは出来ない私だった。
なんだかんだいったって、私もデルレイにはかなわないのだ。
読了ありがとうございました。
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リベカさんの出番はこれで終わりです。
また使っちゃいましたよ、ボンドガール。