58.整理係の聞き込み
七生、クラリスの人柄を聞く。の巻
仕事の休憩時間に、私はクラリス・ベクラールさんからの手紙を開いた。
そこには、デルレイが言ったとおり妹の不始末についてのお詫びを直接したいのでお会いできないだろうかという内容がきれいな筆跡で書かれていた。
テレーズお嬢様に最後通牒をつきつけた話からして、あのお嬢様とは性格が違いそうだけど、どうしたもんだか。悩むなあ。
結局、相手のことを知らないから悩むんだと結論づけた私は、デルレイにクラリスさんについて教えてもらうことにした。
夕食のときにデルレイに聞いてみる。
「クラリス・ベクラールについて知りたい?」
「そう。相手の人柄とかを知ってから、会う会わないを決めればいいかと思って。」
「俺が知ってるのは、領地での評判だけだが・・・ベクラール家は王国の東地方に広大な領地を持っていてその管理を代々している家だ。
クラリスの両親は王都を生活の拠点としていて領地にはめったに顔を見せないのに、彼女だけは領地で生活し王都にはめったに来ないという家族と逆の生活を送っているようだな。今では領地の管理は父親ではなく全て彼女がやっていて、新しい産業を興したり生活設備を整えたりしたおかげで、ベクラール領は豊かになった。領民もクラリスを慕っているそうだ。
ちなみに、父親は次女の騒動の責任をとって当主を引退。現在はクラリスが当主になっている。」
「へえ~、女性の当主なんだね。ちなみにクラリスさんっていくつなんだろ?」
「確か・・・28だったかな。」
「私より若いのか~。デルレイは、実際にクラリスさんを見たんでしょう?どんな感じの人?」
「そうだなあ・・・・。ランス様と俺がテレーズ・ベクラールが起こした騒動の経緯を話しているときも、両親は今にも卒倒しそうな感じだったが、クラリスは落ち着いていた。冷淡と言っていいかもしれない。姉妹仲がよくないのかもしれないな。」
家族に対しては冷淡でも領民には慕われているクラリスさんかあ・・・。
デルレイから話を聞いて、私は部屋に戻ってまた考え始めた。そんなとき、伝達石が光った。
「はい?」
「ナナオ?フローラよ。げんき~?」
「わー、フローラ。久しぶりだね~。結婚パーティーの準備は進んでる?」
「うーん、それなりに。」その後、私たちはお互いの近況を話した。
話が一段落したときに、私はクラリスさんから手紙が来たことと、どんな人なのか知っていたら教えてほしいという話をした。
「クラリス・ベクラール?うちのお得意様だわ。何度か顔をあわせて話をしたことあるけど、彼女は頭がよくて優しい女性よ。領主としての手腕もなかなかね。」
「そうなんだ。デルレイから、領地での評判とかは聞いたけど人柄までは詳しく知らないみたいだから、教えてもらえてよかったよ。ありがとう」
「たぶんナナオと気が合うわよ。あの妹とは全然違うから。でもナナオからすると加害者の身内だものね~。」
「フローラまで考え込まないでよ~。でも、私、二人から話を聞いてクラリスさんに会ってみたいなあと思ったよ」
「じゃあ、会ってみなさいよ。たぶんデルレイも一緒に会うって言うだろうけど」
「あー、それは間違いないね。あの騒動から過保護ぶりに拍車がかかってるんだよ・・・」
私がいささかうんざりした口調で言うと、フローラは楽しそうに笑った。
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次回、またキャラが増えそう・・・