57.処分と謝罪
ナナオの復帰。の巻
ジュストさんが私にかけた催眠魔法は、かなり強力だったらしくてデルレイと気持ちを確認しあった日は私がお嬢様の屋敷に拉致された3日後だった。
治療術士のアイルズバロウさんが呼ばれ私の体に問題がないことを確認して、ようやく私はベッドから離れることが出来た。仕事をする許可がデルレイから出たのは2日後。それを確認してからフローラとヒースさんはテオファリアに帰り、屋敷はいつもの日常に戻った。
私も久しぶりの仕事になる。今まで休んでいた分挽回しなくちゃ。
1ヵ月後、朝食を終えて仕事に行こうとする私にデルレイが声をかけてきた。
「ナナオ、仕事前にちょっといいか?」
「はい。」
「じゃあ、ちょっと執務室に行こう」
デルレイはソファに腰掛けると、私に隣に座るようにすすめた。
いつの間にか、私はいつもデルレイの隣に座るのが当たり前になっている。
「ナナオ。テレーズ・ベクラールが王国から出て行った。」
「え?」テレーズとは、私を拉致したジュストさんを雇っていたお嬢様だ。
「もともと、隣国の地方領主との縁談が持ち上がっていたらしい。話だけの状態だったのが、今回の騒動で一気に縁談が進んだ。もう王国には戻れないだろうから、ていのいい国外追放だな。」
「そうなんだ。」あんなにデルレイのことが好きだったお嬢様がよくおとなしく従ったなあ。
「・・・・彼女の姉クラリス・ベクラールが“縁談を断り王都に残ってもいいが、その場合は拉致監禁の罪に問われる”と彼女に最後通牒をつきつけたのが決め手だったな」
「なんか、すごいね。お嬢様のお姉さん」
「それと、ジュストの処分が決まった」
「ほんと?」
「金銭で雇われただけで、ナナオに対して殺意もないし拉致も後悔していることと、素直に全部話したことを考慮してもらえたらしい。もらった金銭を返却のうえ、罰金を支払うことに決まった」
「罰金・・・・」確か、お金がなくて雇われたんだよね・・・・ジュストさん、どうしたのかなあ。
「ナナオ、ジュストの罰金を心配してるんだろう?」
「だって、お金がなくて今回の騒動に手を貸したんだから・・・・どうやって払うのか気になるわよ」
「ジュストは働いた給料で罰金を返すことに決まったんだ」
「何の仕事をするの?」
「もともと占いと魔法道具を作って生活していたそうだから、王宮で魔法道具の管理係をすることになった。監視もできるし、管理係もちょうど人手が欲しかったらしくてな。もう王宮で働いているぞ。」
「そうなんだ。よかった・・・・私、お嬢様には怒ってるけどジュストさんには腹はたててないからさ。」
「それと、もう一つ」
「はい?」
「クラリスが、ナナオに妹の不始末を直接謝罪したいと手紙をよこした」
デルレイは、私に手紙を見せた。
「え。」
「会う会わないは、ナナオが決めたほうがいい。結論が出たら、教えてくれないか?」
「・・・わかったわ。」
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第8章に入りました。
恋人同士になったというのに、甘さがどこにもない始まりになってしまいました。
少しはいちゃいちゃさせたいものです。