閑話:おじ様たちの内密な話
ランス様こっそり。の巻
ナナオちゃんが無事に帰ってきて仕事に復活した日、私はデルレイには内緒でアレンに連絡をとった。
アレンが扉の管理をするために異世界に行くと決まったとき、自分たちで会話ができるようにホットラインをつなげた。
普段は、互いの様子を確認したりアレンの生活する世界の話を聞くだけの平和なものだったが、さすがに今回の話は耳にいれておいたほうがいいだろうと勝手に判断させてもらった。
「・・・ナナオが狙われた?」
「そうなんだよ。デルレイの外面に群がったご令嬢の一人が暴走してさあ~。もっとも、デルレイが防御魔法と居場所特定魔法をかけていたおかげで、次の日には見つかったんだけどね。ただ、ナナオちゃんが強い睡眠魔法をかけられててさ~、結局目が覚めるまで2日かかった。」
「デルレイは、どうして私に言わなかったのかな」アレンは穏やかに言っているが、間違いなくちょっと腹をたてている。長年の付き合いがある私には分かる。
「さあね~・・・・何となく推測できるけど」
「ランス、話せ」
「ん~。アレンに知られると間違いなくナナオちゃんをアレンのところに戻すようにデルレイに言うだろ?」
「当たり前だ。ナナオを危険な目にあわせるためにデルレイの家にやったわけではない」
「デルレイとしてはさ、それが嫌だったんだと俺は思うね。デルレイ、ナナオちゃんを気に入ってるから。」
「・・・・なるほど。そういうことか」
「お前の思惑どおりだろ?アレン」そう。俺はアレンが自分の部下、それも独身の可愛い女性をわざわざデルレイの家の整理係としてこちらに来させたことから、アレンは二人を取り持つ気満載なのではないかと思っていた。
「思惑?ランスの考えすぎだ。ナナオは優秀な整理係だから、そっちの仕事をしてもらうように頼んだだけだ。デルレイも独身だから、ナナオのよさに気づいてもおかしくはないが。」
「ふん。おまえが何の思惑もなしに甥っ子に独身女性を近づけるもんか。ナナオちゃんはいい子だよな。おもしろいし。アレンが見込んだだけあるな」
「・・・・それで、デルレイとナナオは今どんな感じになってる?」
「今までデルレイの片思いだったらしいけど最近変わったんじゃないか、とオーガスタが憶測している」
「そうか・・・・じゃあデルレイからの報告がそのうちあるだろうか」なんだかアレンも嬉しそうだ。
「そこでアレンは今まで気づきもしませんでした、なんて口調で驚くんだろ。やだね~、お前の黒さは昔から変わんねえな。」
「ランスに言われる覚えはないね」アレンがさらりと言う。
なんだか不毛な言い争いになりそうなので、私は話題を変えた。
「アレン。もしデルレイからナナオちゃんとのことで報告があったときに、それでもお前はナナオちゃんに仕事が終わったら、元の世界に戻るようにって言うのか?」
「そうだな。仕事が終わったら戻る。それが最初に決めたことだからな。ナナオも了承している」
そうなると、二人はいつまで付き合えるんだろうか。デルレイはナナオちゃんを妻に迎えると宣言していたが。
「そうか。」
「ナナオだって友人や家族の顔を見たいだろう。ま・・・・それについては私からデルレイに提案したいことがあるから、本人から話がきたら言おうと思っているんだ」
「やっぱりお前、はなから取り持つ気満載じゃねえか・・・」
「仮に私が取り持ったからと言って、縁がなければすぐに消えるさ。ま、せっかくだから二人には持続してほしいがね。ランス、分かっていると思うが・・・余計なちょっかいは出すなよ?」
アレンは穏やかに笑ったのだった。
王国では私が「王宮で怒らせてはいけない人」第1位らしいが、私の感覚でいわせると私が1位なら、アレンは「殿堂入り」だと思う。
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ランス様視点で、アレンと会話させてみました。