52.元魔道士も登場
七生、元魔道士と話し合う。の巻
入ってきた男の人は、一度お嬢様をちらりと見たあと私を見た。
「・・・お嬢様。私はクロスビー家の整理係をこちらにお連れするまでが役目だったはずですが」
「ジュスト。お前が魔法をかけた手紙、彼女ではなくてクロスビー様が開封したそうよ」
「・・・・そうですか。それでは誰でも開封した人間が怪我をする魔法がよかったでしょうかね。」
「何を言うの。クロスビー様に怪我をさせる気なんて私にあるわけないでしょう?」
どうやら、ジュストと呼ばれているこの人が魔道士らしい。デルレイを見ているせいか魔道士って、見た目スラリとしてるけど実は細マッチョ系ばっかりかと思ってた。でも、このジュストさんは・・・もし私が5センチヒールキックでもしたら倒れて動けなくなっちゃうんじゃないだろうか?
こんなことになるのならバレエシューズなんて履いてくるんじゃなかったな~。
私がお嬢様とジュストさんのやりとりを眺めていると、いつの間にか私の処遇に話題が移っていたらしい。
「・・・・追加料金を払うわ。この女をどうにか説得してちょうだい」
「説得できなかったら、どうするんです」
「消してちょうだい。私には邪魔な存在だから」
「・・・・前払いでいただきましょうか。」
「わかったわ。」お嬢様はメイドに言いつけて、持たせていたバッグから
現金を取り出し、ジュストさんに手渡した。
「これでいいでしょう。あとは頼んだわよ」そういうと、お嬢様はメイドを連れて部屋から出て行った。
部屋にはベッドに座ったまま動けない私と、ジュストさんだけになった。
「・・・・やれやれ。お嬢様に関わるんじゃなかったな」ジュストさんがため息をついた。
「あの~」私はジュストさんに話しかけてみることにした。
「え?・・・ああ、先ほどはすみませんね。お金を受け取ってしまったので拉致してくるしかなかったもので。苦しくなかったですか」
「はい。ちょっと意識が遠のきましたけど・・・・あのー、質問してもいいですか」
「どうぞ」
「ジュストさんは、デルレイと同じ魔道士なんですか?」
「俺は元魔道士。」
魔道士って退職とかできるのか。てっきり一生魔道士かとおもったら。
私の不思議そうな顔をみて、ジュードさんは苦笑いをして教えてくれた。
「普通、魔道士って一度なったら一生魔道士なんだけどさ。俺は途中で挫折してね、今は貧乏な魔法使い。でも学校で魔道士の勉強したから魔道士系の魔法も少し使えるんだ。金に困ってたところ、この家のお嬢様に雇われた。」
「はあ。」なんか、ジュストさんは悪い人じゃない気がするんだけど・・・どうなんだろう。
「さっきの話、聞こえただろう?俺は、きみを消すようにと頼まれてしまった」
「そうですね」本当なら命乞いとかするような場面のはずが、なぜか全然ジュストさんから殺意を感じないせいか、普通に返事をしてしまう。
「・・・・きみには、防御魔法がかかっている。だから、害となる魔法はきみには効かない。きみを消すには直接傷つけるしかないわけだけど・・・・俺は血を見るのが嫌いでね。武器の扱い方もへただし。」
「はあ」
「でも現金収入は捨てがたいし。そこでだ。きみ、ちょっと眠ってくれない?」
「へ?」
「俺がきみに少し眠りが深くなる魔法をかける。それからクロスビー魔道士にきみの居場所を知らせて、彼が来たら俺は消えるよ。もっとも、きみには居場所確定の魔法もかけられてるから、ここを見つけるのも時間の問題だろうね。どうする?俺を信用してみるかい?」
「・・・・ジュストさんは、あのお嬢様を裏切る形になるのでは。あとでひどい目にあうかも」
「俺よりも、あのお嬢様のほうがこんな事態を起こして立場が危うい。それに、あのお嬢様のわがままには付き合いきれない。」どうやら、お嬢様とジュストさんの間にはお金以外のつながりはなさそうに思えるし、ジュストさんはお嬢様があまり好きではないらしい。
「・・・・わかりました。私に魔法をかけてください」
私はこの人を信用してみることにした。つかみどころがなくてお金大好きみたいだけど、悪い人ではないように思えたから。
私に目をつぶらせ、ジュストさんがそこに手をかざし呪文を唱え始めた。意識が遠のいていくなか、目が覚めたときにデルレイが側にいてくれるといいな・・・などと場違いなことを思った。
読了ありがとうございました。
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波乱の展開を書くつもりが、なんだかほのぼのになってしまいました。
全年齢だと、どこまで書いていいのかわからなかったもので、
R15のタグもつければよかったかなあ。
(言い訳なんて、だめですね)
肩すかしになってしまって申し訳ありません。