49.魔法のかけかた
ちゃっかりデルレイ。の巻
手紙の差出人をデルレイたちが探し始めた頃、フローラは王都に来た本来の目的を果たすために出かけることになった。
「どんなドレスにするかって考えるの、楽しそうだよね。いいなあ~」
「ほんとはさ、ナナオに付き合ってもらおうと思ってたのよ。ヒースは何着ても“似合う”しか言わないから当てにならないし。」
確かに、ヒースさんはフローラを見てれば幸せそうだから当てにならなそうだ。
「私も喜んで付き合いたかったよ~~。あーあ、こんな状況じゃデルレイ、絶対許してくれないもんね。」
玄関前までフローラについてきた私はため息をついた。
そこに、「なにが許してくれないだ?」とデルレイがヒースさんとともに現れた。
「フローラがこれから、ウェルズ商会にドレスを見に行くのよ。いいなあ~と思って」
「ナナオもドレスが欲しいのか?」
「違うよ。外出できていいなと思ったの」
「外出はだめだ。」デルレイはきっぱりと言った。
「わかってるけどさー、仕事も休みで部屋にずっといるのって辛いよ~。本1冊とりに行くのに、いちいちフローラやエルシーを付き合わせるのも悪いし」
部屋が一番安全なのは、わかっているのだ。デルレイにぶうぶう言うのが私のワガママだってこともわかってる・・・・せめて、仕事したいよなあ・・・・・。
私があまりにしょぼい顔をしたのを気の毒に思ったのか、ヒースさんが助け舟を出してくれた。
「デルレイ、移動石なら外出しないでウェルズ商会まで行けるじゃないか。オーガスタ様に事前に連絡して、フローラたち以外客が入ってこないようにしてもらえば。あそこは魔道士長の奥方様の実家だぞ。そこでナナオさんを狙うバカがいると思うか?」
ヒースさんの言い分にデルレイは「そりゃそうだが・・・・」とちょっと考えて、「わかった。ナナオ、ちょっと執務室に来てくれ」と私の手をとって、その場から離れた。
執務室に着くと、デルレイは私にペンダントを外すように言い受け取ると手のひらに乗せて低い声で何か唱えた。ペンダントが淡い光を放つ。
「移動魔法を追加した。これでウェルズ商会と屋敷の往復ができる。あとは・・・・ナナオ」
「はい?」
私が返事したと同時にデルレイに抱きしめられた。
「ななななに??ちょっと、離してよ~」今回、私泣いてないんですけどー、何事だよ~。
なぜか、デルレイに抱きしめられて体がぽかぽかしてくる。ひえー、いったいどうしたんだ、私。
しばらくすると、デルレイは私から腕を解いた。
「いま、念のため、ナナオに防御魔法をかけた」
「防御魔法?」なんつー紛らわしいかけかたするんだ、デルレイ。どきどき損じゃないか!
「そうだ。差出人は魔道士を買収して取り込んでる可能性が高い。害となる魔法を防ぐためだ」
「そ、そうなの・・・・」
「それと、ナナオの居場所が分かる魔法もかけた・・・・いいか。もしさらわれても、俺が必ず助けに行くから絶対におとなしくしているように。」
「う、うん。分かった」今までの所業でどうやらおとなしくしていないと思われているらしい。
その後、私とフローラはウェルズ商会に移動魔法で到着した。
「執務室で、デルレイから移動魔法かけてもらったんだ。よかったね」
「うん、それと防御魔法と居場所が分かる魔法もかけてもらったんだけど・・・・いきなり抱きしめられてびっくりしたよ。あれが魔法のかけかたらしいけど・・・あー、どきどき損だった」
「・・・・・」フローラは一瞬、あっけにとられた表情をした後、なぜかニヤリとした。
「フローラ、どうしたの?」
「・・・・ナナオ。防御魔法って、かける相手に手をかざすだけでかけられるのよ?」
「はああ?」じゃあ、あの抱きつきはなんなの~~~っ!!
「・・・・・まったく、魔道士の手段はどこも一緒ね・・・・」
「ということは、フローラも?」
「ヒースを問い詰めたときの顔といったら・・・・」
そのときのことをちょっと思い出したのか、フローラは思い出し笑いをした。
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デルレイ、何やってるんだ・・・・
七生もいつの間にか手つなぎに慣れてるし。