48.そのころの応接間
デルレイの推測。の巻
ランス様に事情を話したところ、すぐ行くと返事がきたので俺とヒースはそのまま応接間で待つことにした。
それにしても、いまいましい手紙だ。この差出人はどこからナナオのことを探り出したのか。屋敷の人間は皆口が堅いしトラブルを抱えているような人間もいない。だいいち屋敷の者たちはナナオを歓迎しているので悪意を持つわけがない。
となると、王宮か? それとも市場で見かけた誰かが調べまわったか・・・・。
何にせよ、不愉快だ。
ランス様が来るまで、俺はこの不愉快な出来事を考えないことにした。ちょうど目の前には格好の相手がいるし・・・。
「ヒース。よく前会長が承諾してくれたな。ずっとお前にいい顔してなかったんだろ?」
「は?お前、こういうときに何言ってんだよ??」
「こういうときだから、ランス様が来るまで考えててもしょうがないだろう。格好の話題を持ってるヤツもいるし。」
「俺の結婚話は、お前の気を紛らわすネタかよ・・・・まあ、いいか。俺が、クレヴィング家に婿入りすることになった。」
「はあ???」
「俺、三男だから婿入りに親も何にも言わないし。」
確かにヒースは3人兄弟の末っ子だ。
「それより、お前とナナオさんはどうなってるんだ。」
「どうって・・・・・」俺とナナオの間には、今とっても微妙な空気が流れてる。どう答えたもんだか考えていると、ランス様が移動魔法で現れた。
「ヒース、久しぶりだな。」椅子にどっかり座ってくつろぐランス様はヒースに声をかけた。
「アイルズバロウ魔道士長。お久しぶりです。後でそちらへ報告に行こうと思っていたのですが、私は結婚することにしました」
「ほお!そりゃめでたいな。相手は・・・・フローラ・クレヴィング嬢だよな?」
「え・・・どうしてご存知なんですか?」お前、言ったのかよとヒースは俺のことを見るが、俺は無実だ。
「部下の魔道士のことならたいていのことは把握してるさ。これでも魔道士長だからな。たしか、フローラ嬢は跡取りだよな。・・・・ヒースは婿になるのか。」
「そうです。」
「そうか。仕事上の名前を変更するなら早めに手続きするように。・・・・さて。デルレイ」
今度は俺に矛先がむけられた。
「はい。」
「手紙、見せてみろ」俺は、ランス様に手紙を手渡した。
ランス様は、めったに見せない厳しい表情で手紙を読んだ。もちろん、手紙に施されていた魔法にも気づいた。
「こりゃまた、外見も内容も陰湿な手紙だな。ナナオちゃんが受け取って開封すると指を傷つける魔法つきか。間違いなく魔道士か元魔道士が絡んでるな。あとは・・・・デルレイ、この手紙から分かる推測を。」
完全に仕事モードになったランス様は、いつものように俺に推測させる。
「そうですね・・・文面が仰々しいのは貴族や裕福な商人、役人に多いです。使っている紙も上等ですから、家は裕福でしょう。魔道士を買収している可能性が高いです」
「ヒースはどう推測する?」ランス様はヒースにも推測させる。
「そうですね。それと、この差出人はデルレイのかつての彼女たちではないですね。どうもデルレイを美化しているようだし・・・・デルレイに片思いをしている女性ではないかと」
ランス様は俺たちの推測に納得したらしく、王都に住んでいる魔道士と元魔道士の中から金銭トラブルが最近解決した者と急に金遣いが荒くなった者などをリストで持ってきてやると言い、王宮へ戻っていった。
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47でナナオとフローラがガールズトークを展開している間、デルレイとヒースがランスとともに何を話し合っていたのかという話です。