4.おいでませクロスビー家
七生、異世界に到着。の巻
ここから『』が日本語、「」がブリードン語となります。
あれから引越しを済ませ、私はブレドン王国に来ている。
アレンさんにお願いして、私の給料の半分をこちらのお金に換金して送ってもらうことにした。 もらった給料で現地の服と靴を買えばいいか、と考えた私はとりあえず最低限の服と小物だけで“扉”をくぐった。
デルレイが現当主のクロスビー家は・・・・でかい。屋敷だ、屋敷。
使用人として勤めているのは、家政婦のヴェラさんと執事のクロードさん。ちなみにこの二人は夫婦だ。それに料理人のトマスさん。トマスさんはヴェラさんとクロードさんの息子さんだそうだ。
他にメイドとしてエルシー、ティア、ミリアムの3人。
デルレイが私を連れて戻ってきたときに、ヴェラさんを呼んで「ナナオ・サクラギだ。こちらの倉庫と書庫を整理してくれることになった」と紹介してくれた。
その後も似たような感じでデルレイから屋敷の人たちに紹介された私は、最後に自分の部屋に案内された。
「ここが、ナナオの部屋だ」
引っ越す前に住んでいた2DKのアパートがすっぽり入ってしまうほどの広さに英国風のこげ茶色のアンティーク家具が配置されていて、大き目の窓にうすい緑色のカーテン。
「きれいなお部屋を用意してくれてありがとうございます。クロスビー」
「気に入ったのならよかった。明日、書庫と倉庫に案内するから仕事に取り掛かってくれ。」
「わかりました」
デルレイが出て行き足音が遠ざかるのを確認すると、私は『広―いっ!!すごーいっ!!これ、ヨーロッパのアンティーク家具よね??アレンさんの家と一緒!!しかも猫足バスタブ!!トイレが別なのもいいわ~。洗濯機と乾燥機までついてる。やーん。嬉しすぎ!!』とはしゃいでしまった。ベッドも当然アンティークでしかもダブルサイズ。ふっかふかの布団に思わずダイブ。落ち着け、32歳。
窓の側に行くと、広大な庭が見える。アレンさんの庭と違って手入れが行き届いているみたいだ。「・・・・観葉植物とか持ってくればよかったかな。きれいな庭だなあ、散歩したいなあ。」
「散歩は自由にしていただいて大丈夫ですよ?庭師に頼めば植物の鉢ももらえます。」
「ああ、そうなんですか。ありがとうございます・・・・・??」突然、第三者の声がした。
振り向くと、ヴェラさんがメイドさんを連れて立っていた。確か名前はエルシーさん。
「申し訳ありません。ノックをしたのですが、ご返事がなかったもので体調でも崩されているのかと思いまして」
あああ。キャーキャー言ってたから聞こえなかったんだろうなあ・・・・恥ずかしすぎる。
「す、すみませんっ。気づかなかったです」もー誰か穴を掘って私を埋めてくれ。
「いいえ。お部屋を気に入っていただけたようで何よりです。ナナオ様、このたびは当家の倉庫と書庫の整理に来ていただいてありがとうございます。後ほど、執事のクロードも挨拶に伺うといってました。」
「あのー、ヴェラさん。ナナオ様じゃなくて“ナナオ”でいいです。私、倉庫と書庫の整理係でアレンさんの部下ですからあなたたちと立場は同じですし、“様”なんて普段もよばれてないです。」
「そうですか・・・それでは“ナナオさん”と呼ばせていただきますね」ヴェラさんはなぜか残念そうだ。逆に後ろにいたエルシーさんは、私に親しみを持ったみたい。
「ナナオさん。こちらのエルシーがナナオさんのお世話をすることになりました。エルシー、ご挨拶なさい」
エルシーさんは、前に進み出て「エルシーと申します。これからナナオさんのお世話をすることになりました。よろしくお願いいたします」
せ、世話係・・・・どうして書庫と倉庫の整理係に世話係がつくんだ・・・・。
読了ありがとうございました。
誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。
ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!
ヒロインの扱いが厚遇されているのは、私がご都合主義、主人公至上主義の話が好きだからです。