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魔道士と整理係  作者: 春隣 豆吉
第6章:思い出も不思議も倉庫の中に
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43.デルレイとベア-3

デルレイとベアの思い出話。その2

 その日の夜、俺が寝ていると父が起こしに来た。父上は「デルレイ。お母さんの部屋に行こう。」と言い、俺は不思議に思ったもののいつものようにベアを手に取った。父上は俺を抱きかかえて母上の部屋に連れて行った。

 そこには治療術士がいて、父上と俺が入ってくるのを見ると部屋を出て行った。

 母上は目を覚まして俺たちに気づいてにっこり笑った。そして目を閉じて、二度と開くことはなかった・・・・。

  母上の葬儀が終わり、俺は父上の部屋で二人だけになった。

「デルレイ。お母さんは遠いところに行ってしまったので、これからは私たちだけで生活していかないといけないんだよ。わかるか?」

「おじうえやグレアムじいちゃん、おじいさまもいるのに、どうしてですか?」

「アレンや大伯父、おじいさまも、いつまでもこの家にいるわけではないのだよ?この家にいつもいるのは、私とデルレイだけになる」

「ベアもいます。ちちうえ」俺にとって、ベアは友達で家族だったので外してほしくなかった。

「・・・・そうだな。ベアもいたな。じゃあ3人で、頑張らないとな」俺の返答に父上が少し笑ったのを今でも思い出す。


 それから2年後、俺が7歳のとき大伯父が叔父に扉の管理を本格的に任せることに決めたので

叔父が屋敷を出て、クロスビー商会に行くことになった。父と祖父も王宮での仕事が忙しくなったため、俺は寄宿舎のある学校に入学することになった。

 寄宿舎に行くに当たって俺は自分にとって重大な決意をした。ベアを置いていくことにしたのだ。今思うと、寄宿舎に持っていって他の生徒にからかわれるのが嫌だったからだろうな。

 そうなると、どこかベアを保管する場所がほしい。父は忙しいから家にいないので、まだ屋敷に滞在していた大伯父に相談することにした。

「ふむ。お前さんは学校にベアを持っていかないのか。いいのか?」

「うん。からかわれるのもいやだけど・・・もしぬすまれたりしたらいやだからです」

「なるほど。お前さんの行く学校はそんな程度の低い学校ではないが、用心しているのだな」

「・・・・ともだちだしおまもりだから、なくしたくない」

「よし、わかった。私がとっておきの場所を教えてやろう。一緒に来い」

 そういうと、大伯父は俺を倉庫に連れて行ってくれたんだ。そしてどこから出してきたのかブルーの箱を出して、そこにベアをしまって箱を置いたあとに倉庫の鍵を閉めたのだった。


「・・・・そして、ナナオが見つけるまで倉庫にしまってあったわけだ。・・・・どうした。ナナオ。」

 デルレイが話し終わって、私をみてぎょっとした。

 なぜなら、私はちょっとだけ泣いてしまっていたのだ。モトカレと別れても涙ひとつ出なかった私を泣かせるとは・・・・。

「普段、傲慢で口の悪いデルレイに、こんな一面があるなんて反則だ・・・・私なんてさ、両親もまだしっかりしてるし、弟家族も元気だし・・・・お守りのクマが必要ないほど家族がいつも側にいたし。弟の家に子供が生まれて、両親が孫フィーバー真っ最中で、うるさく言われないのをいいことに好き放題してるし・・・・。私って贅沢だ。」

「最初の言葉はひっかかるが、俺はナナオみたいに家族がいつも一緒ではなかったが、寄宿舎も楽しかったぞ。」

 そう言われたって、7歳のデルレイが直面した状況は結構ハードで、それを乗り越えてきたデルレイは・・・・


「ナナオに泣かれると困る・・・だから、泣くな」

 そういうと、デルレイは私をぎゅっと抱きしめた。

「デルレイ??」びっくりした私は慌てて離れようとするけど、デルレイの腕はほどけない。

「もう少しだけ、このままでいてくれないか」

「・・・・・わかった。」

 その後、お互い離れるタイミングがつかめずに私が「あ、あのさ。デルレイ・・・私、そろそろ部屋に戻らないと」と言ったところで、デルレイが「あ。そ、そうだな・・・」と腕をほどいた。

「じゃ、じゃあ・・・おやすみなさい」

「・・・ああ」

 私はおたおたと執務室を出て、部屋に向かったのである。男性に抱きしめられるなんて・・・・・えーっと・・・モトカレと別れたのが3年前・・・ということは、うわー3年ぶり。

 部屋に戻った私を見たアマロが“ナナオ、かおがあかいー。どうしたのお?”と聞いてきたが、まさかデルレイに抱きしめられたせいだとは言えず“そう~?なんでもないよー、なーんか暑くてさ~”とごまかした。

 次の日に顔を合わせたとき、どうすりゃいいんだよ~と朝から頭を抱えた私だったが、デルレイは朝早くに王宮に行ってしまい、顔を合わせることはなかった。ホッとした反面、寂しかった。


読了ありがとうございました。

誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。

ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!


ナナオがようやく恋愛モードになってきました。



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