42.デルレイとベア-2
デルレイとベアの思い出話。その1
「グレアム大伯父は、魔道士としてかなりの人物で人望もあるのだが“あそこにいると息が詰まる”と王宮を嫌い、顔を見せることはめったになかった。祖父のほうが大伯父ほど気ままな性格ではなかったので、くじ引きで祖父が当主に決まったときは“クロスビー家も安泰だ”と周囲の人間は安堵したそうだ。」
そういうと、デルレイは自分とベアの話を始めた・・・・
俺が産まれたとき、跡取り息子が産まれたといって祖父母と両親、叔父も皆喜んだ。そこに大伯父がひょっこり戻ってきたのだ。ところが、大伯父は祖父に孫が産まれたことを知ると“ちょっと1ヶ月ばかり待ってろ”と伝えると、また姿を消してしまった。
1ヵ月後、大伯父は“悪いな、待たせた”とまた突然現れ、父と母にこのベアを贈ったそうなのだ。
大伯父は“これはベアと言う。子供の一生の友達であり、お守りになるから側に置いておくように”と言っていたらしい。魔道士として名のある大伯父の言うことに両親が異議を唱えるわけもなく、ベアは俺に贈られた。それからずっとベアは一緒だった。
次に大伯父が現れたのは、俺が5歳のときだ。
その頃、家では祖母はとうに亡くなり、母上が体調を崩してベッドの上での生活が多くなっていた。祖父と父上は王宮でちょっとした事件があって忙しく家に帰ってこないことが多かった。
俺の面倒を見ていたのは、当時家に同居していた叔父だった。それと、言いたくないがランス様だ。もっとも、あの人の場合は俺の面倒を見るというより、俺で遊んでいく感じで、よく叔父が“お前とデルレイは同レベルだ”と笑っていたのを覚えている。この二人にたまに、まだランス様と婚約前のオーガスタ様が加わって、両親がいなくてもそれなりに楽しく過ごしていた。
それでも、やっぱり母上と過ごす時間が一番楽しかった。
ベアが耳や手、足がほつれてくると母上のところに持っていくのが習慣になっていた。
母上は「デルレイの友達ですものね。きちんと直してあげないとかわいそうだわ」と言って直してくれた。
それから数日後、俺が叔父と庭園をベアを連れて散歩していると目の前にいきなり大伯父が現れた。俺は見たこともない人がいきなり庭園に現れたのにびっくりし、口がきけなかった。
叔父が「突然現れないでくださいよ。伯父上。久しぶりですね」と言うと、大伯父は「突然現れるのが私の趣味だからな。ところで、デルレイ」といきなり大伯父は俺のほうを見た。
「そのベアはお前さんのお守りであり、友達だ。いつかベアから離れる日がくるだろうが、それでもベアは友達に変わりはない。絶対に捨ててはいかん。・・・さて、弟が帰ってくるまで屋敷の中で昼寝でもしようかね」と言い、移動魔法で姿を消した。
このとき、大伯父は叔父を自分の後継者にすると決めてこちらにやってきたらしいのだが、5歳の子供にそんなことは分からないからな。ただ、変な人が現れた、ぐらいしか認識していなかった。
大伯父が屋敷に滞在するようになって俺も大伯父の存在に慣れてきた頃、母上の体調が徐々に悪化してきていた。
俺は母上のところに行きたかったが、父上から母上が疲れてしまうからだめだと言われたため、落ち込んでいた。そんなとき、なぐさめてくれたのはベアと大伯父だった。叔父はその頃、大伯父の仕事を引き継ぐことが正式に決まって、業務を覚えるのが大変だったからな。
「デルレイ。母に会いたいか?」
そう聞かれて、会いたいと答えると大伯父はこっそり母上の部屋に連れて行ってくれた。
母上は俺を見ると、笑顔になって俺にコバルトブルーのリボンを見せてくれた。
「見て。デルレイの瞳の色と同じでしょう?これでベアに蝶ネクタイを作ってあげてもいいかしら」と言って、ネクタイを作ってくれたのだ。それが今ベアがつけてる蝶ネクタイだ。
そして、これが母上の元気な姿をみた最後だった。
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このあたりは、ちょっとしんみりしちゃうかもです。
ヘタレ俺様デルレイの別の面ってことで。