41.デルレイとベア-1
七生、ベアを見つける。の巻
アダルさんのうさんくさい発明品の目録を作り終わり、私は改めて倉庫の中を一回りすることにした。
それにしてもアダルさんの発明品は変なものばっかりだった。雲の素、惚れ薬、透明になれるかもしれない薬だけじゃなくて、結婚相手が夢に出てくる枕だの、流れ星の素と書かれた砂っぽい粉なんかもあった。
ちょっと心惹かれるものがあるんだけど、雲の素みたいなオチになったら芳しくないので私は目録を作って箱にしまっていく作業に徹することにしたのだった。
さらに倉庫を整理していると、私物箱の片隅に置いてあるブルーの箱を見つけた。
特に何も書かれていなかったので、私は蓋をあけてみる。
中に入っていたのは、なんと蜂蜜色のベアのぬいぐるみだった。王国にクマがいるなんて聞いたことない。どうしてここにいるのかな。
そのベアはデルレイの瞳の色と同じコバルトブルーの蝶ネクタイをしてこげ茶色のつぶらな瞳。
「か、かわいいっ!!」私は思わず抱き上げてしまった。すると、ベアの足の裏に何か刺しゅうされているのが分かり、そこを見てみると「デルレイの誕生記念に:グレアム」とある。
「きみはデルレイの誕生祝いに贈られたベア?うわー」これは絶対デルレイに見せなくっちゃ!そう思って私はベアを倉庫から持ち帰ることにした。
倉庫からベアを持ち帰ってきたときに、ちょうど王宮から戻ってきたデルレイとばったり会った。
「ナナオ、仕事は終わったのか?」
「あ、デルレイ。おかえりなさい。今日の仕事はもう終わったよ。あ、デルレイ。これ見て」
私は思わずデルレイにベアを見せた。
「デルレイの誕生記念にグレアムさんという人から贈られたベアでしょう?これ、私のいた世界では有名なブランドのベアだね。」
「これは懐かしいな。どこにあった?」
「倉庫に。ブルーの箱の中に入っていたのよ。」
「そうか・・・・」デルレイは懐かしげにベアを見た。
「ナナオ、夕食後に執務室にそれをもってきてくれないか?ついでに一杯のもう」
夕食後、執務室でデルレイは私からベアを受け取ると空いている椅子の上に置いた。
「それにしても、懐かしいな」
「いまから32年前でしょう。やっぱり魔法のおかげなのか状態がきれいだよね」
「そうだな。」
「ところで、グレアムさんって・・・」
「祖父の兄で、叔父の前に扉を管理していた人だ。」
「じゃあ、クロスビー商会の前の社長ってことね」
「そうだな。」
「でも、デルレイの家は長男が跡を継ぐとかいう決まりはないのね。グレアムさんがおじい様のお兄さんってことは、デルレイのおじい様が当主だけど弟ってことでしょう」
「そうだな。まあ・・・もともとクロスビー家は当主の第一子が一番魔力が強い。基本的に魔力が一番強いものが当主になる。でも、だからと言ってそういう人間が皆、当主になりたいかというとそうでもない。現にグレアムは王宮勤めを嫌って当主を俺の祖父・・・弟に譲って、扉の管理者に喜んでなったそうだ」
そんな理由で当主を譲るって・・・・グレアムさん、自由だ。
「もっとも、祖父も当主になるのを嫌がったので、結局くじ引きで決めたらしい」
「くじ引き?」いいのか、それで。
「一番平等だから、どちらが当主になっても恨みっこなしでいいだろうと、曽祖父が決めたらしい。」
アダルさんって・・・・テキトーというか大物というか・・・・。
なんだかベアの話も知りたいけど、グレアムさんと言う人もアダルさんの息子だけあっていろいろありそうだよなあ・・・。
「グレアムさんってどんな人かデルレイは知ってるの?」
「ああ。叔父を後継者に決めて、業務を教えるのに何度かこちらに戻ってきてるからな。グレアム大伯父は・・・・自由な人だった。祖父のほうが当主に向いてる性格だったのは間違いないな」
デルレイはグレアムさんの人柄を思い出したのか、ちょっと苦笑いをした。
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ベアとデルレイの思い出の前に、贈り主の話に驚くナナオでした。