40.”雲の素”実験のおまけ
雲の素実験のあと。の巻
デルレイにお姫様抱っこされて屋敷に戻ってきた私を見て、ヴェラさんを始め屋敷の人たちは驚いたらしい。
デルレイの指示で私はすぐにベッドに寝かされ、治療術士が呼ばれる騒ぎになってしまった。
ただ腰をうっただけなのに、どうしてこんな騒ぎになるんだ。
やってきたのは、温厚そうな60代くらいの男の人でベッドに寝ている私から状態を聞くために部屋に入ってきた。
「どうされました?急患だと聞いて伺ったのですが」
「・・・・ちょっと高いところから滑り落ちて腰をうっただけなんんです。すみません」
急患だなんて大げさな。湿布を貼ってれば治るぞ、この程度。
「腰を?それはいけませんね。ちょっと治療しますから、布団をとっても?」
「はい」私が布団をはがそうとすると、ロデリックさんが手をとめて後ろを見た。
「クロスビーさん。女性が治療を受けるんですから外に出てください」
「あ・・・・そうだな。すまん。ナナオ、痛かったら遠慮なく痛いって言うんだぞ。じゃあ、アイルズバロウ殿、頼む」
デルレイ、私は小児科に連れてこられた5歳児じゃねーぞ。あんたは母親か!!
それにしても、アイルズバロウさんっていうのか・・・・へえ・・・。
「先生はアイルズバロウさんというんですか。」
「ええ。ロデリック・アイルズバロウです。ランスの従兄弟なんですよ。」ロデリックさんが微笑む。
「あー、ご親戚なんですか」どうりで、笑い顔が似てるよ。ランスさんから黒さが抜けた感じだ。
「ついでに言うと、結婚した娘が王都でカフェをやっているんです。ベルカフェと言うのですが」
「あ、この間デルレイと行きました。ケーキが美味しかったし、ベルさん可愛らしい方ですね」
「それはありがとうございます。私は普段、郊外の治療院にいるのですが王都に出てくると娘のカフェでお茶を飲むのが楽しみで」
私とおしゃべりをしながら、ロデリックさんは痛めた腰に手をあてる。すると腰の部分がほかほかする。
「なんか、ほかほかしますね」
「治療術士は、手で患部に触れて治療するんですよ・・・ランスから聞いてますよ。アレンの部下の方だそうですね?」
「はい、アレンさんを知ってるんですか?」
「私とランス、アレンは同時期に同じ学校に通ってますからねえ。私が少し年下ですが、アレンに私のことを聞いたら分かると思いますよ。」
「へえ。じゃあ、今日の報告をするときに聞いてみます」
「ロデリックがよろしくと言っていたと伝えてください。」ロデリックさんが笑った。
話しているうちに治療が終わったらしい。
「はい、もう大丈夫。腰を打ってはいますが軽いですからね。もう歩いていいですよ」
「ありがとうございます・・・・デルレイが心配性なんですよ。歩けるからって言ったのに。すみません、お呼び立てしてしまって」
「いいえ。心配性なクロスビーさんなんて、そうそう見られませんからね。面白いものを拝見できてよかったですよ。これはランスに教えないと」
・・・・やっぱり血が繋がってるんだ。
治療が終わったので、デルレイが部屋に入ってきた。
「ナナオ、今日は一日寝ているように」
「えー、ロデリックさんは歩いていいって言ってたよ。」
「・・・じゃあ、部屋から一歩も出るな。アマロ相手に過ごしているように」
「どんだけ心配性なんだよ~。も~~」
「明日から普通に仕事をするんだろう?だったら、今日一日くらいのんびりしたっていいだろうが」
「そりゃそうだけどさー」
「それとも、またさっきみたいな手段で移動してやろうか。俺はいっこうにかまわないが」
さっきみたいな手段・・・・「お姫様抱っこ」かい。冗談じゃない!!
「・・・わかったよ。一日部屋にいるよ・・・・」
「なんだ。いいのか。ナナオの抱き心地は結構俺は気に入ったぞ」
なんだとーっ!!このセクハラ魔道士!!私が何も言えず口をぱくぱくさせているのを見て、デルレイはニヤッと笑って部屋を出て行った。
読了ありがとうございました。
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バレンタインだというのに、こんなネタですみません・・・
皆様は、お姫様抱っこで移動確定と部屋に一日こもっているのと
どちらがまだマシだと思いますか?
作者は、体重が・・・・なので部屋にこもっているほうを選びます。