38.デルレイと雲の素
実はデルレイも使ってみたかった。の巻
とりあえず「雲の素」は実物を見てから判断したい、とデルレイが言ったので「雲の素」の話はやめて、他に見つけたアダルさんの発明品のことを話した。
「花火の素:ばらまくとはじけて危険・・・・ほう。」
「飴玉みたいな大きさでね、20個くらい入ってるんだよ」
「・・・・・望まぬ来客があったときに、ばらまいてみるか・・・・」
「人に向けてばらまいちゃだめだよ。デルレイ」
「そうか?・・・・まあ、ランス様によけられると被害が他に及ぶからな」
ランスさんにばらまくつもりだったのかよ、デルレイ・・・。
「飲んだら大変な惚れ薬・・・・へえ。」
「・・・・どうして、私を見るの?」
「いや。大変ってどうなるのかなと思ってな」デルレイがニヤっとした。
「さ、さあね。」どうして、私がどぎまぎしなきゃいけないのよ。
「ま、さすがにナナオに100年以上前の薬を飲めとはいえないな」
・・・・・私を実験台にするつもりかよ。
次の日、倉庫に現れたデルレイに私は「雲の素」を見せた。瓶に入った雲の素は、調味料「○の素」みたいで、微妙に懐かしい。
「これを振りかけると、物体が浮くのか。しかし、量がわからないな」
「そうなのよね~、ちょっとだときっと、少し浮く程度なんじゃないかと。大量だと浮いたままなんてことになりそう」
「もしくは、全く浮かないということも考えられる。ナナオは期待しすぎだ。」
「そうかなあ。だって、アダルさんてすごい魔道士だったんでしょう?」
「魔道士だからって、全てが優れているわけではない。」
「あ、デルレイ見てると、それは分かるよ」うん、よく分かる。外面がよくてお嬢様方の憧れかもしれないが、実物は傲慢で口の悪い失礼な男だと声を大にして伝えてやりたい。
「・・・話し合う必要があるな。しかし、今はこれが先か」デルレイは右手で瓶をとり左手でラベルに手をあてた。
すると、ラベルが青く光った。え~~、なに。そんな仕掛けがこのラベルに??私がさわっても何も起こらなかったのに!!
デルレイは「やはりな」とつぶやいて光を消した。
「ナナオ。」
「はい?」
「このラベルには後の当主に宛てた伝言が隠されていて、当主にしか使い方を伝えないようにしてあるようだ」
「デルレイはさっきの光で、それを読み取ったの?もしかして、他の瓶もそういう仕掛けがあるの?」
「あるだろうな。曽祖父も人騒がせな性格ではあっても、クロスビー家当主で王家につかえる魔道士だからな。それくらいの配慮はするだろう」
「そうだよね。これってどうやって使うものなの?」
「瓶に書いてあるとおり、浮かせたい物体に振りかけるだけだ。」そういうと、デルレイは机の上にある紙を一枚手にとった。
デルレイが瓶を開けて白い粉を指で一つまみし、紙に振りかけた。すると、紙の周りにふわふわと白い繊維が表れ、たちまち紙をふわふわした物体に変えてしまった。
小さい雲となった紙は、デルレイの手から浮き上がっている。
「浮いた・・・・」
「浮いたな。」
「でも、これどうやって戻るの?」
「ああ。これくらいなら」デルレイは息を紙にふっと吹きかけた。繊維はたちまち吹き飛んでただの糸くずになり、紙はもとの紙にもどった。
「こんな感じだ」
「は~」
「もっと分量を多くして、じゅうたんなどに振りかけるとたぶん、曽祖父が騒ぎを起こしたサイズになると思う」
「へえ・・・・面白いね。でも、実際に飛んだら騒ぎになるよね」
「そうだな・・・・でも、ちょっと興味はあるよな。庭園で少しだけ使ってみるか?」
どうやらデルレイも使ってみたかったらしく、実験することが決まった。
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次回、雲の素を使う「実践編」です。
果たして人を乗せて浮くのでしょうか。