36. 倉庫を整理するまえに
七生は無自覚。の巻
ランスさんの家に行ってから2週間がたとうとしていた。
髪の毛をさわられたり、手をつながれたり何かとデルレイからのスキンシップが増えた。そのたびに私が固まったり、赤くなったり、困惑しているのをデルレイは嬉しそうに見ている。
なぜかデルレイと私が夕食を食べるときは二人きりになってるし、屋敷の人たちも私とデルレイが並んで話していると、生暖かい視線を送る。アマロですら“ナナオと、とうしゅっておにあいー”という始末。
「仕事をしているときが一番気楽だなんてどういうことよ・・・・」私は自分しかいない書庫兼倉庫でため息をついてしまう。
その仕事も、書庫のほうが本日分類と目録の作成が終了した。次は倉庫の整理と目録作りなんだけど、実は倉庫のほうはあんまり見てないんだよね。
とりあえず書庫のほうを先に片付けちゃおうと思って、倉庫ゾーンはいつもちらっと見るだけ。歴代の当主は倉庫に重いものをしまっているのかなあ。だとすると整理は私だけでは無理そうだ。
こればっかりはデルレイに聞かないとわからない。
その日の夕飯時に私は書庫の整理が終了したことと明日から倉庫の整理と目録作りにとりかかりたいことを話した。
「倉庫に重いものがあるかどうか知りたいのか?」
「そう。重いものがあったら、私一人では移動は難しいと思うの」
「あの倉庫には、そんなに重いものは入ってないはずだ。家具などは修繕魔法をかけてずっと同じものを使用してるからな。それでもダメになった場合は、分解して燃料にするか使える部分を道具屋に売ったりしている。」
「へー。エコなんだね。大事に先祖からの家具を使ってるなんて素敵。」
「そうか?」素敵と言われて、まんざらでもないデルレイ。別にデルレイを素敵と言ってないんだけど。
「重いものがあった場合って、誰かもう一人荷物を運んでくれる人がいるといいんだけどあの空間に入れるのは当主と、アレンさんと私だけなのよね。」
「ナナオは俺が非力だと思ってるのか」
「へ?そんなことは思ってないよ。でも当主に重いものを移動してもらうのって気が引けるというか」
「普段は当主を当主とも思ってないような口調なのに、変なところ謙虚だな」
「悪かったわね。デルレイ相手だと丁寧口調が出てこないのよね。」
「ま、俺もナナオに丁寧口調で言われると気味悪いからお互い様だな。とにかく、重いものが必要なときは俺に言ってくれ。それと書庫のときと同じように、面白そうなものがあったら教えてほしい。」
「わかったわ。ねえ、またすごいものに出会ったりしてね。」
「そうだな。ナナオが夕食前に出してくれた書庫目録も、ざっと目を通したが見やすかったぞ。さすがアレン叔父が見込んだだけあるな」
「ほんとう?」
「俺は仕事に関しては嘘はいわん」
「そっか。認めてくれてありがとう」やっぱり、時間をかけて完成させた仕事が認められるとうれしい!私は思わず満面の笑みを浮かべた。
そんな私の顔を見ていたデルレイは、「そ、そんなに喜ぶとは・・・」と言ったきり、なぜか手で口元を押さえていた。
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”倉庫編”が始まりました。
着々と七生包囲網が敷かれている感じのクロスビー家です。