34.魔道士長のお屋敷で-2
七生、気づかないふり。の巻。
困惑している私を見ながら、オーガスタさんは話を続けた。
「デルレイが、ただの食べ歩きって思ってるかどうかは分からないわよ?ナナオ、デルレイっていわゆる“名家”の跡取りで舅や姑もいない上に、ハンサムで魔道士としても実力がトップクラスなのよ。王国でも結婚したい男性として人気があるのよね~。」
・・・・え~~?あんな傲慢かつ失礼な口を利く男がですかあ?みんな外面に騙されすぎ・・・・。
私が思いっきり白けた顔をしているのを見たオーガスタさんは「デルレイって、ナナオには自分を全然飾ってないのね。確かに、外面と地位だけでみんな見ているのよ」と苦笑した。
「はあ・・・」
「デルレイもそれを分かってるから、本気の恋愛ってしたことないんじゃないかしらね。今まで、さまざまな美人と浮名を流してるけど続かないし、パーティごとに違う相手を連れてるというのもザラだもの。」
「はあ・・・」広く浅くのオトコだったのか、デルレイ。私はそういうペラペラした男は嫌いなんだけど。
私がデルレイの恋愛事情に、さらに困惑しているのを見たオーガスタさんは慌ててデルレイのフォローに入った。
「でもね、最近のデルレイは出なきゃいけない集まり意外は、さっぱり社交界に出なくなったし仕事が終わると、今までは王宮から夜遊びに行ってたんだけど現在は屋敷にまっすぐ帰るようになったのよ。この変わりように社交界のお嬢様方が原因を探っていたらしいのよ」
「はあ」
「・・・・・ちょうど、あなたがクロスビー家に来て少ししてからデルレイが真面目になってるのよね。」オーガスタさんの目がきらきらしてる。
「偶然じゃないですか?アレンさんからくれぐれもって頼まれてるみたいだし」私がサラッと答えると、オーガスタさんはガッカリしていた。
すみませんね。オーガスタさんの期待するような出来事は何も起こってないです。・・・何を期待してるのかを察知してはいけない気がする。ここは知らないふりだ、七生。
その後、デルレイがオーガスタさんの居間に私を迎えに来た。
「ナナオ、そろそろ帰るぞ。奥様、ナナオの相手をしていただいてありがとうございました。」
「あら、夕食も食べていったらいいのに」
「・・・・いえ。ナナオが疲れているようなので」そんなに早く帰りたいのか、デルレイ。
「オーガスタさん、美味しいお茶とお菓子をごちそうさまでした」私がお辞儀をすると、オーガスタさんは「ナナオ。またデルレイと遊びに来てね。今度は実家の新作を用意しておくわね。楽しみだわあ♪」と輝かんばかりの笑顔をされてしまった。
「・・・・はい。ありがとうございます」なんだか、どっと疲れてきた。
移動魔法で(このときも手を握られていた)帰ってきて、夕食の席。
「奥様とは、どんな話をしたんだ?」
「・・・・デルレイの小さい頃の話とか・・・・・」
「は?」
「小さい頃から、その口調だったんだってね・・・ぷっ」私は思い出して吹き出してしまった。
「・・・・奥様・・・・余計なことを。」
「あとは、デルレイの恋愛事情とか」
デルレイは、うなり声をあげた。
「・・・・王宮で、噂になってるって聞いた」
「・・・・そうか。ナナオ。社交界は噂を養分にして成り立っているようなものだ。その噂がなくなるまでは、一人で外出しようと思わないでほしい。」
「えー、誤解なのに~。」
「聞く耳を持たないものが噂を真に受けて、ナナオが嫌がらせされるかもしれないだろう?少なくとも、俺と一緒にいればそういうヤツは手をだしてこないし、屋敷内は安全だ」
「社交界ってヒマな人ばっかりなの?」
「そう思っていい。」
会社で一番のイケメンとうっかりランチを食べにいったばっかりに、社内のキレイなお姉さんたちにトイレや屋上もしくは倉庫とかで“どうして、あなたみたいな人が”って囲まれるという、日常ではあんまりないシチュエーションが王国ではあるってことか。すげーな、社交界。
「・・・・わかったよ。屋敷内でおとなしく仕事してるよ。」
「そうしてくれるか。外出するときは一人で行かないように。ところで・・・」
デルレイは、なぜか私の髪の毛に手を伸ばした。エルシーにカットしてもらってる私の髪の毛は
来た当初と同じあごのラインでそろっている。
「ナナオの髪の毛は、やわらかいんだな」
どうして、どうして私は今、デルレイに毛先をもてあそばれているんだろう・・・・・・?意味が分かりませ~~んっ。
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手の次は髪の毛か。デルレイ。