33.魔道士長のお屋敷で
七生の不覚。の巻
1話にするつもりが、長くなってしまいました。
2話にわけます。
今、私はデルレイと一緒にランスさんの家の居間でお茶を飲んでいる。
ランスさんはアレンさんと幼なじみの友人で、向こうの世界にアレンさんが行ってしまっても時折アレンさんと連絡をとっているそうだ。
聞かれるままアレンさんに雇われた経緯を話すと「アレンらしい雇い方だな。彼の直感は当たるから、ナナオさんは見込まれたんだね。もっとも、ナナオさんの場合は・・・」ランスさんがしたり顔でデルレイにニヤリと笑いかけた。
「ランス様。俺に向けて笑い顔を向けないでください。不気味です」デルレイが斬る。
右腕とはいえ、上司にそういう口をきくなよ・・・・
私が若干あきれて見ていると、オーガスタさんが「ナナオさん、今日はナナオさんに見てもらおうと思って実家からいろいろ持ってきたのよ~。私たちはあちらに行きましょ」と声をかけてきた。
「は、はい~?」
「デルレイ。ちょっとナナオさんを借りるわよ~」オーガスタさんはデルレイに声をかけると私の腕をとって居間を出た。
「え?ちょ、ちょっと奥様!!」居間の中からデルレイの声がする・・・・。
通されたのは、先ほどの今より一回り小さい部屋だった。
「ここは、私のごくごく親しいお客様をお通しする部屋なの。あの部屋は・・・・なんというか仰々しいでしょう。」
確かに、アイボリー色のクッションに色とりどりのクッションが乗って、カーテンも明るいアイボリー色のこの部屋はさっきの居間よりほっとするかも。
「確かに、この部屋はほっとします」
「でしょう。あ、今お茶をいれるわね。」ここではオーガスタさん自らお茶を入れてくれるらしい。
お茶を渡されて、私とオーガスタさんは向き合っていた。
「実はね、実家からいろいろ持ってきたというのはうそなの。ごめんなさいね」
「いいえ。・・・・助かった・・・」
「え?何か言った?」
「いえいえ。何でもありません」よかった・・・・着せ替え人形にならずにすむ・・・・。
「ナナオさん・・・ナナオと呼んでも?」
「はい」
「私たちね、アレンと幼なじみなものだからデルレイがこんなに小さい頃から知っているの」オーガスタさんはそういうと自分の腰のあたりを示した。
「だから、ランスはいつもデルレイにああいう口のきき方をするのよ。デルレイも遠慮しないから、びっくりしたでしょう」
「はい。上司にああいう口のききかたはないんじゃないかと思いました」
オーガスタさんは「確かにね。王宮では気をつけなさいって言ってるんだけど・・・あれは気をつけてないかも」と苦笑い。
デルレイの小さい頃かあ・・・・昔から命令口調だったんだろうか。身内だったら私はほっぺをつまんで、むにーってしてるな。どうだったんだろう、気になる。
「デルレイって小さい頃から、あの・・・あんな口のききかただったんですか?」
私は好奇心に負けてついつい口にだしてしまった。
「そうよ。舌がまわらないころから“おくしゃま。わらしはちょうしゅになるからには、いろいろまにゃにゃないといけないとおもう”とか言ってたわよ。デルレイのご両親は、お母様が早くに亡くなってね。お父様・・・先代の当主様がクロスビー家には珍しく仕事大好きな方で家にいなくて。アレンが同居してた頃は、アレンがよく面倒みてたのよ。ただ、大きくなってくると外ではだいぶ砕けた口調で話すようになったけどね。」
なるほど。屋敷の外では砕けたしゃべり方をしているのか。
「私には常に命令口調ですけどねー・・・・いいかげん一人で外出したいですよ」
「それはきっと無理ね」
「え。なんでですか?」
「だって。ナナオは外に出ないから知らないようだけど、あなたたち市場でデートしてたでしょう。すっかり王宮の噂になってるのよ。」
「はああ??私、ただの部下ですよ。しかもあれはただの食べ歩きです。」
デートなんて甘いものじゃあ・・・・と言いかけてやめたのは、手をつないでいたとき、ちょっとデートみたいって思っちゃったからだ・・・。ぬう不覚。
読了ありがとうございました。
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小さい子って、ああいうしゃべり方しますか?
子供がいないので、できれば「ちげーよ」って思ってもスルーでお願いいたします。