30.整理係と食品市場
七生、食品市場でどきどきする。の巻
長文になってしまいました。
「デ、デルレイ。“かわいい”って・・・・・いきなりなんすか」
私は顔が真っ赤になってしまった。
デルレイは自分の発言が、私の顔を赤くしてると分かってますます嬉しそうだ。
「ナナオ、顔が赤いぞ?」なんだかニヤニヤしているデルレイ・・・。
「なんでもないわよっ!次はどこ行こうかな。」私は地図を見る。
ベルカフェのある旧市街の道なりには食品市場があるらしい。エルシーたちに書いてもらった地図には市場の中のオススメ屋台がばっちり記載してある。
「デルレイ、次は食品市場に行こうよ。」
「お、いいな。俺も一度行ってみたかったんだ。」
「あら。デルレイ坊ちゃまは、行ったことないんだ」さっきのお返しとばかりに、バジルさんの呼び方をまねしてみる。
「ナナオ。その呼び方はやめろ」デルレイがとたんに渋い顔をした。
「人のこと、からかうからだよー」今度は私がニヤリとした。
食品市場はにぎやかで、スパイスやハーブ、新鮮な食材が色とりどり並んでいて楽しい。あちこちのぞきながら、私は地図を確認した。
「えーっと、まずはティアのオススメ屋台がこの辺に出てるらしいんだけど・・・」
「どんな屋台なんだ?」
「じゃがいもとブロッコリーを素揚げしたやつにお店独自のスパイスをかけた食べ物なんだって・・・お。あれかな?」
私の視線の先に、野菜をあげているお店が目に入った。
「いらっしゃい!うちのスパイスは他にはマネのできない独自なものだ。これを揚げたじゃがいもとブロッコリーにまぶすと最高だぞ。お一つどうだい?」おじさんが胸を張る。
確かに、スパイシーな香りが食欲をそそる~。さっき甘いものを食べたから、ここはスパイス系だろう。
「デルレイ、きっとここだよ」
「そうか。一ついただけないか?」デルレイが代金を支払った。
「はいよーっ。お姉さんは美人だから、おまけしちゃおうかね~。そっちのお兄さんは彼氏かい?」
「えーちが・・」と言いかけた私をさえぎってデルレイが「まあね」と笑った。
「おやおや。市場でデートかい?面白いことするねえ」とおじさんは大笑い。
おじさんが箱からはみ出るくらい素揚げした大き目の角切りのじゃがいもとブロッコリーにスパイスをたっぷりかけたものをデルレイにわたした。
「ほら、ナナオ」
「ありがと。」楊枝で一つつまんでみる。カレーのようなそうじゃないような独特の香りが素揚げにあう~。美味しい。
「デルレイ、美味しいよ。一つ食べる?」私は何の気なしに楊枝にじゃがいもをさしてデルレイに勧めた。
「じゃあ。もらおうかな」とデルレイが口に入れる。
「・・・うまいな。スパイスがきいてる」
いつまでも店の前にいるのも邪魔なので、歩きながらつまむことにした。途中でベンチを見つけたため、座って食べながら地図を見る。
「それにしても、よく彼氏だなんて言うよね~。デルレイ」
「ああ、さっきか?いいじゃないか。こうしてオマケしてもらえたんだから」
「そりゃそうだけどさ。ま、いいか。ミリアムのオススメはもう少し先にある、きのこと豆と野菜の具沢山スープで、エルシーのオススメは魚のすり身を団子にして甘辛いタレをつけて焼いたものなんだって。」
「食べ終わったら次の店に行くか?」
「うん。」私は箱を最寄のゴミ箱に捨てると、ベンチから立った。
ミリアムおすすめのスープはトマト風味にバジルの香りが効いていて、本当に具沢山のスープ。飲むというより、食べるスープ。
エルシーおすすめの魚のすり身団子に甘辛いタレをつけたやつは、とても香ばしい匂いで美味しい。
私はすっかり市場の食事に満足していた。デルレイも「市場はいいな。ナナオ、俺がまた付き合ってやるからな」と満足そうだ。
夕飯の買い物をするらしい人たちが市場に来ているらしく混雑し始め、私たちは屋敷に戻ることにした。
「ナナオ。はぐれないように・・・・ほら」とデルレイが私の手をとった。
「手をつかまなくても、迷子にはならないよ~。」
手をどんなに抜こうとしても、デルレイは離してくれない。
「暴れると目立つぞ。」デルレイがニヤリとした。
手をつなぐと、デルレイの体温が伝わってくる。不本意だけど私はちょっとどきどきしてしまった。
読了ありがとうございました。
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まずは手からか、デルレイ。