29.整理係とカフェ店主
七生、ご対面。の巻
デルレイがカフェの扉を開けると、そこには黒い髪に藍色の瞳の可愛らしい女性がいた。
「いらっしゃいませ・・・あら、クロスビーさん。あの、そちらのかたは?」女性はデルレイに目を留めたあと、私に視線を移した。
「私の屋敷で整理係として働いているナナオ・サクラギだ。ナナオ、ここの店主のベル・クラドックだ」
「初めまして。ベルです。」
「初めまして、ナナオです。こちらのカフェが評判なので一度来てみたかったのです」
「まあ。ありがとうございます。もうすぐケーキが焼きあがりますから、席に座ってお待ちくださいね」そういうと、ベルさんは厨房に入っていった。
ベルさんって可愛いよなあ。フローラは妖艶とかセクシーとかピッタリだけど、ベルさんは可憐って感じ。へー。あれで人妻かあ。私より7つも若いけど。
「ナナオ、親父くさい思考が顔に出てるぞ」
「は?なんですと?デルレイって、サラッと失礼な事言うよね~。イケメンなのに残念なヤツ」
「俺に分からない言葉を混ぜるなよ。イケメンってなんだ」
「顔がハンサムな男子のことを、気軽に言うときの表現だよ。」
「それは、褒め言葉か?」
「イケメンは、まあ褒め言葉ね」
「じゃあ、残念ってなんだ」
「それはそのままの意味だよ。デルレイはハンサムだけど、がっかりなところがあるってことだよ」
「ナナオも、たいがい失礼じゃないか?」
「それは悪うございました。当主様」
「・・・・謝罪に聞こえないのは俺の気のせいか?」
二人で不毛な言い争いをしていると、そこに「お待たせしました」ってベルさんが私にケーキとお茶のセットを、デルレイにはお茶を持ってきた。
「今日のケーキは、はちみつとくるみのケーキです。ナナオさんのお口にあうといいのですけど」とニッコリ笑うベルさんは、可愛すぎるんですけど。
私はケーキを一口食べた。・・・美味しい!!
「デルレイ、このケーキおいしいっ」
「そうか、よかったな。」
美味しいケーキを食べているときに不毛な争いをしてはいけない。和やかな会話が大事。
「デルレイは、ここによく来るの?」
「いや・・・・まあ・・・たまに」
「なにその返事」
「ほとんど来ないよな?甘いものが苦手なんだから」後ろから男の人の声がした。
振り返ると群青色の髪の毛の男の人がいる。
「いらっしゃいませ。ベルのケーキを気に入ってくれてありがとう。あなたがクロスビー家の整理係ですね。この間は兄と会ったそうですね。初めまして、ジュード・クラドックです。」
「は、初めまして。ナナオ・サクラギです。」
奥さんのベルが可愛いタイプなら、夫のジュードさんはクールなハンサムってところ。デルレイとはまた違ったイケメンだよ。
王国って・・・・というかデルレイの知り合いって、容姿に一定の基準でもあるんだろうか。美人とイケメンしか見たことないんですけど・・・。
「ジュード。今日は出勤のはずだろ?」デルレイが渋い顔をする。
「休憩時間に妻の顔を見に来てなにが悪い」そういうとジュードさんは、ベルさんが入れた紅茶を一口。
ベルさんを見ると顔が真っ赤だけど嬉しそうだ。言われ慣れてるということだろうか。ここにも溺愛が一人。
夫婦のラブラブ光線にでも当てられたのか、カフェを出ると私は軽く疲れが・・・。
「それにしても、デルレイの友達って溺愛する人が多いの?」
「・・・ヒースとジュードが突出してるだけだ。俺はもっとあっさりしている」
「そう言いつつ、デルレイも溺愛しちゃうんじゃないの?」私がからかう。
「・・・・まあ、相手によるな。ナナオ相手ならそうなるかもしれんぞ」
「はぇ??」私が驚いてデルレイを見る。
「ナナオの驚いた顔はかわいいな。さあ、次はどこに行きたい?」デルレイは楽しそうに笑った。
・・・・デルレイから”かわいい”って言われちゃったよ。
読了ありがとうございました。
誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。
ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!
デルレイが積極的になってきましたねえ。