2.上司からの引越し命令
七生、洋館ライフにぐらつく。の巻
今日は特に急ぎの仕事がないらしく、アレンさんが紅茶を入れてくれてお茶の時間になった。
「ナナオ、デルレイが失礼なヤツですみませんね」
「いいえ~。アレンさんの身内じゃなかったら今頃ヒールで蹴っ飛ばしてますけど、我慢します。」
「なんなら蹴っ飛ばしてもOKですよ」
「あら。いいんですか?」私は、デルレイを見てニヤリとした。
デルレイは言葉が分からなくても何かを察知したらしく『おい、ナナオ。やめろよ』と若干身構えている。
『ナナオって気安く呼ばないでよ。クロスビー』
『叔父上には名前で呼ばせてるじゃないか。俺にも呼ばせろ』
『いやよ。なんで人のことをけなす人間に名前よばれなきゃならないのよ。私のことはサクラギと呼んでよね』
それにしても、コイツの性格・・・。アレンさんの甥でしかもハンサムな顔してるのに残念なオトコだな。
デルレイは、私の思考を読んだらしく『俺に対して、かなり失礼なこと思ってるだろ?』と私をにらみつける。
ぎく。私は『そんなこと、思っていません』とごまかしたけど、なぜわかったんだろう。
「ナナオ。今日はあなたにお願いがあるのです」
今まで私たちのやりとりを黙って聞いていたアレンさんが口を開いた。
「あなたに出張に行ってもらいたいところがあるのですが・・・・かなり長期になりそうなのです」
「え?どれくらいですか?」
「それが・・・・仕事が終わる明確な時期が把握できないのです」
「え。じゃあ1年かかるなんてこともあるんでしょうか」
「ええ・・・そこで提案があるのです」
「はい。」
「あなた、私の自宅に引っ越してきませんか?部屋は余っていますし個々の部屋バス・トイレがついてますから寮みたいな感覚でいてくれれば」
「へ??」アレンさんの申し出に私は驚きのあまり声もでない。
「家賃はいりませんよ。こちらの都合であなたに出張をお願いするのですから」
家賃がタダで、この洋館に住めるのか・・・・うーん。心惹かれてしまう。でも近所のうわさとかにならないんだろうか。家政婦さんだって「あら。まあ」とか言っちゃって、まさに「家○婦は見た」状態になったりして。
「ご近所のうわさになったりしたら、困りませんか?私は別に実家も遠いし差し障りありませんけど」
アレンさんは笑って、「大丈夫ですよ。家政婦さんは私の事情を知ってる方ですからね。どうでしょう?申し出を受けてもらえないでしょうか。」
1年以上も家を空ける可能性があるってことは、防犯上も心配だし・・・よし。ここは思い切って憧れの洋館ライフを満喫しよう。私の愛読書のひとつは「赤毛のアン」シリーズだ。
「・・・わかりました。アレンさん。ただ、今の部屋に置いてある家具や家電は持ってきてもいいですか?」
「家具は備え付けてありますから、そちらを使っていただいてかまいませんよ。納戸から好きな家具を出してきてもいいですし。」
なんですと。あのアンティークな家具を使っていいとな??すごーい。
「わかりました。じゃあ、家具は処分して家電だけ持ち込みます」
「じゃあ、配線などを手配しておきましょう」
「お気遣いありがとうございます」
アレンさんの提案で、憧れの洋館ライフを送ることになってしまった。
「それで、出張というのは・・・」私は仕事内容を聞くことにした。
「ああ。それはですね・・・」とアレンさんが言いかけたところ、
『俺のアシスタントだ。ナナオ』と、自分に分からない言葉で会話をされて不満たらたらのデルレイが会話に割り込んできた。
読了ありがとうございました。
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アレンさんの家は、一応「グリーン・ゲイブルズ」がかなり広くなった感じです。
描写の欠片もないのは、ひとえに作者に描写力がないからです・・・