25.ガラスの花始末―3
事態の収束。の巻
長文になります。
ご了承ください。
フローラは顔色をなくした3人を前にさらに続けた。
「カミラもティーロもニコラを諌めるどころか反対しなかったのだから、同罪と私はみなします。
私はあなたたちをクレヴィングの戸籍から抹消するし、クレヴィングと名乗ることを許さない。それを断るなら、私はあなたたちを希少植物の無断採集と詐称で告発する。」
「こ、告発なんてしたら、あんたの大事なクレヴィング商会に傷がつくじゃない。」
「確かに傷はつくけど、挽回してみせるわよ。ご心配なく」フローラがニコラさんに対して鼻で笑った。
ニコラさんは、フローラさんをすごい目つきで睨んでいた。カミラさんとティーロさんはうつむいてしまって声も出さない。
「フローラ・・・・私たちがこの書類にサインをしたら、告発はしないのね?」カミラさんが口を開いた。
「しないわ。家族関係を解消するだけよ。希少植物は商会が責任もって元の場所に戻します。」
「ニコラ、サインしましょう」
「お母さん!!」
どうやら、カミラさんは自分たちが不利だというのは分かっていたらしい。ニコラさんって自分勝手な言い分はどうかと思うけど、フローラにくってかかるあの度胸はすごいよなあ。
「お父さんと結婚する前は、二人で質素にやってきたじゃない。またその生活に戻るだけよ」
「私は嫌!!クレヴィング商会の一族って言うだけで扱いが全然違うじゃない。元の生活なんて絶対に嫌よ!!」
「ニコラ。私たちは、やってはいけないことをしてその報いを受けたのよ。フローラ、私がサインします。」
「わかりました。今さら言うのもなんだけど、カミラ。私はあなたと仲良くしたかったわ」
「私もよ。でも、あなたは会長夫妻や従業員みんなに愛されていたけど、ニコラには私たちしかいなかったのよ。だから、あなたを蔑ろにした形になった」
「・・・そうね。カミラ、じゃあサインをお願いします」
カミラさんは、フローラの差し出した書類にサインをした。ピーターさんが書類をチェックし「はい。大丈夫です。受理しました。宰相府で正式手続きが完了するのは3日後になります。」と告げた。
「ありがとうございます」フローラはピーターさんに頭を下げた。
フローラは、「あなたたちには依願退職扱で商会から去ってもらいます。まとまった金額を渡しますから、それで今後のことを考えてください。店舗は10日以内に明け渡しをお願いします。」と3人に告げた。
フローラは後ろにいた私たちのほうを向いて「立ち会ってくれて、ありがとう。私の用事の大半は済みました。あとは店舗の明け渡しを確認してから、本店に戻ります。フォルカさん、お待たせしました。ティーロに用事があるんですよね。どうぞ」とフローラは3人の前から離れた。
フォルカさん一家の中で、口を開いたのはティーロさんの兄、コンラートさんだった。
「ティーロ。フローラさんから事情を聞いて、うちでも家族で話し合った。北の地方で同業が従業員を募集しているんだが、ニコラさんやカミラさんを連れて行く気はあるか?行く気があるのなら口を利いてやる。
ただし、王都には戻れないし俺たちがお前にしてやれるのは、それだけだ。どうする?」
ティーロはニコラさんやカミラさんを見た。ニコラは「北?どうして私が北の辺鄙なところに行かなくちゃいけないの?」とつぶやいたが、カミラさんが「ニコラ。黙りなさい」と叱りつけた。
ティーロさんは「兄さん。ありがとう。僕、北に行くよ。そこで精一杯働く。」
「ティーロ。私たちまで、あなたの実家のお世話になるのは悪いわ」カミラさんは遠慮した。
「いいえ。僕たちは家族ですから。これからは質素な暮らしになると思うけど・・・ニコラ、君はどうしたい。」
「・・・・・今は考えられないわ。あとで返事をする」
「わかった。でも僕は店舗を明け渡したら、すぐに北に行こうと思ってる」
ここから先は3人で話し合ってもらうところだ。私たちは、第二店舗を後にした。
結局、ワイアットさんの旅行記は出すことがなく終了した。
「デルレイ、ワイアットさんの旅行記使わなかったね。」デルレイにこっそり言ってみた。
「俺としては、ほっとしてるけどな」と、デルレイは安堵のため息をもらした。
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七生の探し出した旅行記に出番はあるのか?
次回、この始末のおまけ編になります。