24.ガラスの花始末―2
嫉妬は悪意につながった。の巻
部屋は静かだった。
「言い出したのは・・・・私。」それまでフローラに気圧されていたらしいニコラさんが口を開いた。
「そう、ニコラなの。この植物をどういうルートで手に入れたの?許可はどうやって取ったの?」
「それは・・・・僕だよ。フローラ。許可は・・・得てない。友人を訪ねて西の砂漠に近い都市に行ったときに植物商から買った。」ティーロが口を開いた。
「無認可の商人から買ったということ?ティーロ、その行為が犯罪だということは認識してた?」
「そう。始めはただの植物だと思ってたけど、ここに持ち帰ってきて調べたら希少植物だってわかって・・・でも、この辺には生えていない植物だしわからないだろうと思って。犯罪と言うことは知ってた。」
「そう。どうして“ガラスの花”として展示をしたの?」
「・・・・のよ」ニコラさんが小さい声でつぶやいた。
フローラはニコラさんのほうを見て「なんて言ったの?ニコラ。ちゃんと声に出してちょうだい」と言った。
「クレヴィング商会とフローラを傷つけたかったのよ!!」突然ニコラさんが声を荒げた。
一度声を荒げたニコラさんは、そのまま話し続けた。
「私だって、お父さんたちが再婚してクレヴィング商会の娘になったのに。皆、あんたばっかり大切してさ。
私が名乗るとみんな「フローラは元気ですか?」とか「フローラは優秀なんだってね」って、そればっかり。悔しいから、あんたが休みに学校から戻ってきても、家族の輪に入ろうとするのを邪魔してやったわ。
そしたら、本店の会長夫妻があんたを自分たちのところに置いて可愛がってるじゃない。
いい家のお坊ちゃんと婚約までして・・・私はあんたが傷つくのが見たくて、ティーロを奪ってやったのよ。なのに、あんたは全然堪えない。両親は私の味方だったから、二人に責められたときにはちょっと落ち込んでたみたいで嬉しかったけどね。
でも・・・あんたには必ず誰かが手を差し伸べてくれるみたいで、会長夫妻が私と両親を一喝して、お父さんを飛び越えて跡取りに決めてしまった。ほんと、どうしてあんたばっかり、いい目をみるの?
ティーロが砂漠の希少植物を無許可で持ち帰ってきたとき、これを使ってあんたと商会を傷つけることはできないかって考えたの。
クレヴィング商会は老舗で信用は王国随一。その支店が希少植物を黙って持ち帰った挙句、伝説のガラスの花と称して展示したらどうなるかしら?って考えてたら楽しくなっちゃって。おまけに当の支店は血は繋がってなくても、会長の母親と妹がやっている店ですものね。
王宮まで噂が広がったら、確実に商会に傷がつく。そしたら、あんたが慌てる様が見られると思ったの。でも、やっぱりあんたは周りに助けられてる。それに余計腹がたつわ。」
「・・・・言いたいことは、それだけ?ニコラ」自分に向けられた嫉妬と悪意の言葉にフローラは何の感情も見せずにニコラさんの目をみた。
フローラはピーターさんのほうを見て「クラドックさん。あれが当事者の言い分です。いかがでしたか?」と静かに聞いた。
ピーターさんは「わかりました。クレヴィングさんの申し立てを受理しましょう。サインをもらいますか?」と静かに書類を取り出した。
申し立て、と言う言葉を聞いて、ニコラさんがフローラに「申し立てって何よ?」と聞いた。
フローラはピーターさんから書類をもらって、3人の前に広げて、告げた。
「家族関係解消の申し立てをしたの。どうやらニコラはクレヴィング商会と私に不満があるようだから、これからは商会と関係ないところで好きなように生きるといいわ。」
この発言に3人は顔色をなくした。
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七生の出番は「おまけ」までお待ちください。