23.ガラスの花始末―1
対話開始。の巻
「ガラスの花始末」は、七生の出番があまりありません。
ご了承ください。
開店前の第二支店は、静かだ。
通りかかる人たちが私たちをちらっと見ていく。まあ、開店前の店にすごい美人と平凡な顔をした女(私)、イケメン(デルレイ)、素敵なメガネ男子、初老の夫婦らしき男女、その二人を労わるように側にたつ30代くらいの男性(義弟の実家、肥料問屋のフォルカさん一家)と統一性のない人たちが立っているのだ。
私だって、通りかかったら見ちゃうよ。
「裏口から行きましょう。」フローラさんは、そういうと私たちを店の裏へ案内した。
裏口に行くと、そこには枯れた観葉植物が放置してあった。それを見たフローラは「まだ、手をかければ甦るものばかりじゃない・・・」と悲しそうに手を触れた。
フローラがドアをノックすると、顔を出したのはうすい金髪に青紫色の瞳の気の弱そうな男性。男性はフローラを見ると、驚いて目を見開いた。さらに後ろにいる私たちに不思議そうな顔をし、フォルカさん一家を見て何だか辛そうな顔をした。
「やあ・・・久しぶり、フローラ。前に来たのは1年・・・いや2年前だね。」
「久しぶりね、ティーロ。ニコラとカミラはいる?」
「あ、ああ。今日はいったい・・・」
「とぼけるのもいい加減にしたほうがいいわよ。中にいれてもらいましょうか。」
フローラのきびきびした口調に押されたティーロさんは、私たちを中に入れた。
家の中にいた二人の女の人が、フローラを見て驚いた。ともにうすい金髪にグレーの瞳で、よく似ている。きれいな顔立ちなんだけど、フローラと並ぶと・・・私が言うのもなんだけど、霞む。
若い方がニコラさんで、その20年後くらいなのがカミラさんかな。
「久しぶりね。ニコラ、カミラ」
「フローラ、どうして・・・。後ろの人たちはどなたかしら?・・・・どうしてフォルカさんたちまで。」カミラさんが口を開いた。
「私が頼んだ立会人と、宰相府のクラドックさん。フォルカさんたちは知ってるわね。私がどうして来たのかも、わかってるわよね?」
3人はフローラに言われて、しぶしぶとうなづいた。
フローラは持っていたカバンから書類を取り出した。
「今日来たのは、もちろん第二支店で展示されているガラスの花の件よ。ニコラ、ガラスの花をこちらに持ってきてちょうだい。そして今日は臨時休業の札を出してくるように。」
ニコラさんは、のろのろと立ち上がり店舗のほうに歩いていった。私と話しているときのフローラと違って、ここにいるのは「クレヴィング商会の会長・フローラ・クレヴィング」だった。
「カミラ。私と一緒に来た人たちに、お茶をお出しして。ティーロ、全員が座れるように椅子を用意してください」
それまで半分呆然としていた残りの二人も、フローラの指示で動く。
ニコラさんがガラスの花を植えた鉢植えをカミラさんがお茶を、そしてティーロさんが椅子を持ってきて全員が落ち着いたのを見計らって、フローラが本題に切り込んだ。
「単刀直入に聞くわ。この西の砂漠に自生している希少植物を“ガラスの花”として展示しようと言ったのは誰。展示することに反対する人間はいなかったようだから全員同意したんでしょうけど。まずは、言い出した人間から話を聞かせてもらいましょうか。」
フローラの手には、彼女と本店、第一支店が集めたガラスの花が偽物と示す証拠の書類があった。
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花始末は1-3+おまけとなります。