22.その前夜
フローラの気合。の巻
ピーターさんは、フローラからの書類を受け取ると帰って行った。
「デルレイ、ピーターさんを呼んでくれてありがとう。おかげで手続きが速やかにいきそうだわ。私も、対策を早めなくちゃ。明日も第一支店と打ち合わせしないと・・・私、もう部屋に戻るわね」
そう言うと、フローラは応接の間から出て行った。
応接の間には私とデルレイだけになった。今なら、これを見せてもいいかもしれない。
「あのさ。デルレイ。こんなときにどうかと思うんだけど・・・」
「どうした?ナナオ」
「書庫の整理をしていたら、ワイアット・クロスビーさんの旅行記が出てきて・・・・ちょっと、この部分を見てくれない?」私はページを開くとデルレイに見せた。
「ワイアット?」
「今から300年前のクロスビー家の当主様だよ。ま、とにかく見て」
デルレイは私に示された箇所を読み始めた。読み進めていくうちにデルレイの表情には驚きが、そして最後は頭を抱えていた。
「まったく、俺の先祖は・・・・」と顔を上げたデルレイは苦笑いをしていた。
「これ、フローラさんの助けになると思わない?」
「充分になるな。クロスビー家の名前もあるから強力な証拠になる。よく見つけたな、ナナオ・・・でもなあ~」となんとも複雑な顔をしたデルレイだった。
次の日。夕食の席でフローラに「明日、第二支店に行くことしたわ。それでデルレイとナナオに立会人になってほしいんだけど、だめかしら」と聞かれた。
特に断る理由もないので、デルレイも私も了承した。
「俺とナナオだけじゃなくて、ピーターさんも呼ぶか?今日、王宮で会ったときに申し立ての書類を作ったけれど第二支店側の言い分も聞きたいと言っていたから。」
「そうね。そうしてもらおうかしら。デルレイから頼んでもらえる?開店前の朝9の時に行く予定だけど、大丈夫かしら」
「大丈夫だろう。連絡しておく。俺たちとピーターさんの他に誰か第二支店には行くのか?」
「ええ。義弟の両親と長男が。あちらも妹夫婦に話したいことがあるんですって」
「そうか」
「昨日まで、ああは言ったものの血は繋がってなくても妹だから、彼女たちにここまでするべきなのかって悩んでたんだけど、ピーターさんから話を聞いて甘いことを言ってられないって思えるようになったわ。」
夕食後、デルレイはピーターさんに連絡するからと執務室に行き、私とフローラは私の部屋に行くことにした。
「気分が滅入ると、植物の存在って癒しだよね」そういうと、フローラはアマロに触れた。
“フローラ、どうしたの?ナナオ?”
“んー、ちょっと気分が落ち込んでるんだって。そのまま触れさせてあげてくれる?”
“はいです~。”さわさわとアマロが揺れた。
フローラはしばらくアマロに触れていたけど、「よしっ!!切り替えた!!」と言い、「ナナオ、ありがと。じゃあ、明日はよろしく」と言って部屋を出て行った。
“ナナオ。フローラ、こころがないてたよ。だいじょうぶかな”
“大丈夫よ。あの気合みたでしょ?”
“とりはだがたったのー”
・・・・・樹木なんだから、鳥肌なんてたたないだろう。アマロ・・・・。
“ナナオ、かんがえこむとストレスたまるよー”
私が考えてることを見透かしたように、アマロがさわさわと葉を揺らした。
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ちょっとしんみりモードが続きます。