21.王国のメガネ男子
七生、メガネ男子を凝視。の巻
次の日、フローラは朝早くから第一支店に出かけていった。私も書庫でいつもの仕事を始めた。でも、頭から離れないのはガラスの花だ。ガラスというからには、硬くて透明感があるってことよね。
そもそも、本当に植物なのかしら・・・・。
・・・うーん、ダメだ。仕事に集中できない。ガラスの花に関する文献を探そう!!
分類も兼ねて資料探しをすれば、まさに一石二鳥じゃないのさ。私は自分に都合よく解釈して、ガラスの花があるという東の森について調べることにしたのだ。
ワイアット・クロスビーさんという、今から300年前の当主様の旅行記が出てきたので何の気なしにパラパラとめくってみた。
「え。これって・・・・・」私はとあるページに釘付けになり、そして一人しかいないのをいいことに思わず笑ってしまったのである。
「これは、デルレイに見せなきゃね~」私は、自分の机の上にワイアットさんの旅行記を別にしておいた。
その日の夕方、デルレイは一人の男性を伴って屋敷に戻ってきた。群青色の髪の毛でノンフレームのメガネをかけ、端正な顔立ちをしている。
“おお~。かなりのレベルなメガネ男子じゃん。眼福~。”通りかかった私は、思わず柱の影に隠れてデルレイに見つからないように、その男性をじっと観察してしまった。
ところが、隠れていたはずなのにデルレイには見えていたらしい。その男性を応接の間に通した後に、私の隠れている柱までやってきた。
「・・・・ナナオ、何をしている」
「へ?いや~、通りかかったらお客様がいたじゃない?通り過ぎるまで待とうかなと思って。」
「・・・・そのわりには、彼を凝視してなかったか?」
「え~?気のせいですわよ~」なんで判るんだ、デルレイ。
「ナナオ、・・・・彼は既婚者だからな。」
「へー、そうなんだ。ところで、デルレイには私が不倫をするように見えたわけ?失礼な」確かに凝視はしてましたが、それは単にメガネ男子が嫌いじゃないからよっ。
するとデルレイは慌てて「違う。そういう意味で言ったのではない」とあたふたしていた。
「こんなところで油売ってないで、お客様のところに行きなよ。待たせるのは失礼だよ」
「ナナオとフローラを呼びに行こうと思っていたのだ。ちょうどいい、フローラを呼んで一緒に来てくれ」そう言うと、デルレイは応接の間に入っていった。
デルレイが連れてきた人は、宰相府の役人でピーター・クラドックさんという人だった。
フローラを紹介したあとに、なぜか私のことも紹介してくれたんだけど、そのときのピーターさんの反応がなんか変。
「初めまして。あなたがデルレイが規則正しくなった原因ですか。なるほどね。私のことはピーターと呼んでくださいね。ナナオさん」となぜかニコニコしているのだ。
「ピーターさん。余計なことは言わないでくださいよ。」デルレイが慌ててさえぎった。
「すみませんね。ではクレヴィングさん、本題に入りましょうか」ピーターさんはさらりと話題を変えた。
フローラの話を聞いたピーターさんは申し立てに必要な書類を確認すると、手続きに入ることを了承してくれた。
「第二支店のガラスの花ですが、既に王宮メイドの間で話題になりつつあるようですね。私が口を出すことではないのですが・・・クレヴィングさん、早めに対策をとったほうがいいと思いますよ」
「助言をありがとうございます。もう少し調べてからと思っていたのですが、悠長なことは言ってられないようですね」
私は、フローラとピーターさんのやり取りを聞いていて、自分が見つけた資料が役に立つのではと考えた。でも、これってデルレイのものだから私が勝手に出すわけにはいかないよなあ。
ピーターさんが帰ったらデルレイに相談してみようと決めた。
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