20. フローラの事情
フローラの語りその2。の巻
長文になります。ご了承ください。
あれからデルレイは王宮に行ったらしく、夕食をすませた私とフローラは私の部屋で過ごすことにした。
部屋に入るとアマロが“おかえりなさい~。そちらはどなたですか?きれいなひと~”と葉をさわさわさせた。同時にアマロの花の香りが部屋いっぱいに広がる。
「このアマリアローズはナナオが魔力を?」
「そう。魔力が発覚したときに、アマロ相手に実践してみたの」
「アマロ?」
「アマリアローズって名前が長くてね~、アマロって呼んでる」
「私もアマロって呼んでいい?」
「どうぞどうぞ。アマロ、こちらはフローラだよ。私の友達」
フローラが「こんばんは。フローラよ。よろしくね」と言って葉をなでると、アマロが“よろしく、フローラ。ナナオのともだちー”と、さわさわと葉を揺らした。どうやら歓迎しているらしい。
「ナナオ。このアマロになんか教えたの?」
「何にも教えてないって。ただ、気持ちが高ぶると勝手に葉を揺らすんだよ。」
「へえー。おもしろーい。それに、話し言葉もかわいいのね。」
“うふふ。てれるです~”またアマロが葉を揺らした。
「フローラは、相方の植物っているの?」
「アマロみたいな芸当はしないけど、部屋のシュロチクとはしゃべるわね。でも、うちのシュロチクは、“フローラははたらきすぎっすよ”って男の子みたいなの」
働きすぎのフローラをいさめるシュロチク・・・ちょっと面白いかもしれない。
「ナナオ。驚いたでしょ。私が家族関係解消をしに来たこと。」
「うん。驚いたよ。でもさ、よほどの事情がない限りああいう申し立てってしないものでしょう。」
「デルレイも知ってるし、別に秘密じゃないからナナオにもしゃべっちゃうね。第二支店を経営しているのは、私の母と妹夫婦なんだけど血は繋がってないのよ。私を産んだ母はクレヴィング商会の後取り娘だったんだけど、私が5歳の頃に病気で亡くなってね。今の母は婿養子だった父の再婚相手で、妹は母が以前の結婚で授かったの。
父は私が7歳のときに再婚して新しい家族を作り、私は「おまけ」って感じだったわね。でも学校が寮生活で家に居なくてすんだのと、母方の祖父母が私を可愛がってくれたから寂しくなかった。」
それでも、フローラは寂しかったんじゃないのかな。7歳で親元離れて寮生活。母親はともかく、父親は実の父親なんだからさ。でも、それを口に出したらいけない気がして黙って聞くことにした。
「まあ、そんな状態に私も慣れちゃってさ。父たちの事は気にしてなかったんだけど、23歳のとき婚約者を妹に奪われちゃったのよね~。」
「はあ??何それ!!」
「肥料問屋の次男と家同士で決めた婚約で、別に相手のことをすごく好きというわけじゃなかったんだけどさ。でもまあ悪い人じゃないし婿養子に入ってくれるからいいか~って思ってたのよ。
2年後くらいに結婚かなあと双方の家で話してたんだけどね~。あのときは大変だったわ。祖父母は激怒、相手のご両親も激怒して確か次男を勘当したんじゃなかったかな。
ところがさ、妹は“私は悪くない。いつまでも結婚しないお姉ちゃんが悪い。私はこの人がずっと好きだったんだから”って泣きわめくし、両親が妹の味方について私を責めるわけ。」
「何それ!!わけわからないんですけど!!」
黙って聞いてたアマロも“えー。なにそれー。しんじられない~”と葉をさわさわ。あ、これは怒りのほうだな。
“アマロ。あんまり葉をおとすとスカスカになるよ”
“むー。でもはらたつー”
「ふふっ。二人ともありがと。ちなみにその元婚約者が妹の夫よ。精神的にまいった私を祖父母が本店のある南の貿易都市テオファリアに連れて帰ってくれたの。それからは、ずっと本店で修行して祖父が私を自分の跡取りに決めて現在に至るわけ。祖母は亡くなってしまったけど、祖父はまだ元気よ。」
「よかったね、フローラ。でも、お父さんよりも偉くなっちゃって何も言われなかった?」
「面白くなかったみたいよ~。一昨年亡くなったんだけど、私を見て“父親とびこえて会長になった気分はどうだ”って生前に言われたもの」
「はー、自分の行いを棚に上げてそのセリフ。なにそれー」
「そのときには、私も家族を見限ってたからね。“最高よ。業績は右肩上がり。お父さんの店だけが赤字よ”って言ってやったわ」
「フローラ。よく言ったよ!!」心の中は葛藤してたはずなのに。
「・・・本当は、仲良くしたかったんだけどね。でも、家族だけど無理なことってあるんだよね」
「そうね。人間、相性ってやつがあると思う。」
“そうそう。あいしょうありますよお”アマロも同調する。
「あ。そうそう。ナナオ、私とデルレイはただの同級生よ。私にはちゃんとすてきな恋人がいるから、安心してね」
「何、突然。それに安心してねって言われてもさ、私とデルレイなんでもないんだけど」
「え。そうなの?じゃあ・・・・あらあら・・・・これは面白いわ」なぜかフローラが楽しそうに笑った。
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七生とフローラは意気投合しました。
異世界で初めての同世代の女友達です。