15.アマリアローズが咲いた日
七生が困惑した日。の巻
これまた長文です。ご了承ください。
2週間後、アマロの花が咲いた。
薄いオレンジ色の花は、シルクジャスミンの花とよく似ている。香りも確かにリラックスできる香りがして、私の部屋はアマロがあるだけで癒しの空間になった。
バジルさんいわく、低木とはいえ1メートルを越える場合もあるそうで、花が咲いたら大きめの鉢に植え替えるといいそうだ。私はさっそく実行に移すことにした。
仕事場に行く前に鉢を持って庭園へ行く。ちょうどデルレイが出かけるところに遭遇し、途中まで一緒に行くことになってしまった。
「ナナオ、花が咲いたのか?」
「そうよ。アダルさんの本に書いてあるように実行したら、枯れかかっていたアマロがこんなに見事に。うふふ。うれしい」
「本当か?」
「そうだよ~。結局、私に魔力があるのかどうかは謎だけどさ、どっちの世界も植物を育てるのって気持ちが大事だってのがよく分かったよ」
「ナナオは魔力がほしくないのか?」
私も小さい頃は魔法もののアニメなどを見ていたので、魔法でいろいろできる主人公がうらやましかったし、マラソン大会の日なんて魔法があったら絶対大雨雷を起こして中止にしてやるとか思っていたけどね。さすがに大人になるとないわー。
「この国で暮らしているうちは使えると便利だけど、戻ったときにいらないからね~。いらないって結論に至ったよ。でも、あの本は面白いね。読み終わったら書庫に戻すね。」
「・・・・ナナオ。今日は夕食が終わったら、執務室につきあえ。いいな。」
デルレイが「命令だ」の口調だったので、私は頷いた。こういう口調のデルレイに逆らうと後が面倒なのを私はここで働き始めて覚えた。
夕食が終わって、デルレイの執務室に場所を移した。デルレイにはクロードさんがお茶を入れるらしく、私もお相伴に預かってしまった。
クロードさんが部屋から出ると、デルレイが「ちょっと待ってろ」と部屋の奥にある小部屋に入っていった。ごそごそ音がしたと思ったら、手には高さ15センチほどの透明なとがった石が埋まっている物体を手にしていた。
「それは?」
「これは、魔力を持つ人間がさわると、その人間の魔力の属性が分かる石だ。曽祖父の本を読んでるなら、分かるな?」
「うん。デルレイは魔道士だから光が青いって書いてあったよ。」
「そう。もし、ナナオが植物系の魔力があるならこの石が緑色に光る。ナナオ、さわってみろ」
「は?」もしや私に魔力があるかどうかテストってことですか。
「ほら、さわってみろ」デルレイは、どうあっても私に石をさわらせる気だ。
異世界からきた平凡な整理係に魔力なんかあるわけないのにさー。そう思いつつも、私はデルレイが持っている石に、そっと触れた。
・・・・・石が緑色にきらきらと光った。
「ナナオ、どうやら植物系の魔力があるみたいだな」
「植物系?」
「本にも書いてあったと思うが、植物と意思の疎通ができるようになるぞ」
「え!!それって、じゃあ野菜や果物が食べられなくなっちゃうじゃん!!やだよ、そんな能力」
「は?」
「だってさー、野菜や果物が“痛いっ”とかいうのが聞こえちゃったら気の毒で食べられないって!!えー、これから私が食べられるのは肉魚だけ??やだよ~」頭を抱える私。
デルレイは、私の言い分を聞いたあと、顔がゆがんだと思ったらいきなり大笑いしやがった。こっちは真面目に心配してるのに、なんだコイツ!!
私が睨んでいるのに気づいたデルレイは、笑いをこらえて「す、すまん。そうか・・・・まだ本はそんなに読んでないんだな?わ、悪かった・・・。ナナオ、大丈夫だ。意思の疎通ができるのは土に根ざしている植物だけだから。食品となった野菜とは会話できないから大丈夫だ・・・」まだ笑いが収まりきれてないデルレイは、ひーひー言いながら教えてくれた。
「あ、そうなんだ。よかった~」私がほっとすると、笑い終わったデルレイが「とりあえず、これを読んでみたらどうだ」と1冊の本をくれた。<植物系魔法大全>と書かれた緑色の表紙のうすい本。
「植物系の魔法の全てが書かれているから、読んでみるといい。」
「それは、どうもありがとう。じゃあ、お借りします」
アマリアローズが咲いた日に、私は植物系の魔力があることが発覚しました・・・・。
読了ありがとうございました。
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(ドラク○のBGMをイメージしてください)
七生はなんと植物系の魔力を手に入れてしまった!