12.魔法を使える人の定義
七生は書物を読んだ。の巻
仕事を終えて、私は件の本を部屋に持ち帰った。
100年以上前に書かれたとは思えないくらいきれいな本で、歴代の当主がかけてきた魔法のすごさを感じる。
行儀悪いとは思いつつも、ベッドに寝転がってページをめくる。
<魔法を使える人ってどんな人?>の項目を見ると“魔力がある家系の血を引くもの”“先祖に魔力を持つものがいたもの”・・・・まあ、DNAに組み込まれている場合は使えるよな。例えばデルレイやアレンさんみたいな。ところが、その後のアダルバードさんが書いた条件は驚きのものだった。“やたらクジ運がいいもの”“幽霊がみえるもの”“植物を育てると尋常じゃなく育つもの”・・・。
クジ運はないし、幽霊なんて見たことないし見たくもないけど・・・植物だけは私が育てるとよく育った。小学生の頃の朝顔、ヘチマ、じゃがいも・・・。どれもこれも尋常じゃない育ちぶりで、おかげでクラスのボス女子から妬まれていじめられたんだった・・・嫌なことまで思い出しちゃった。
<植物を育てるのが上手な人は、緑色の光を指から放っています。その光が植物に心地いいのです。この力を鍛えると植物と意思の疎通ができるようになります>
ド○トル先生・・・・あの先生は動物か。植物と意思の疎通ができるようになると、あのアレンさんの庭も甦るのかなあ。
光といえば、デルレイが呪文を唱えたときに見えた青い光。あれはなんなのか。
本をめくっていくと、その説明箇所が見つかった。<魔法の種類によって光の色が違います。特に青い光は魔道士特有の光で全ての魔法を取得している証です。なお、それぞれの色の光は魔力のある人間にしか見ることができません>
・・・・・おお~~い。ということは、私は魔力があるってこと??
『いやいやまさか。ただの庶民で地球人の私が魔力持ち?ないないない』私は、今日はこれ以上読書するのをやめた。
時計を見ると、そろそろ夕飯の時間だ。
すっかりデルレイと夕飯を一緒にすることが定番化し、最初は沈黙ばっかりだったけれど服の件以来、私たちの間に協定が成立した感じになって食事のときに会話をするようになっていた。
「本は読んだのか?」デルレイが自分の分のパンを取った後、カゴを渡してくれる。
「ありがとう。最初のほうを少し読んだよ。魔法使いの素質って遺伝子以外にあるって書いてあって驚いたよ」
「例えば?」
「やたらクジ運がいい人、幽霊が見える人、植物を育てるのが上手な人だって。」
「ほう。で、何か当てはまるものはあったか」
「うーん。植物かなあ。確かに、私が育てるとよく育つんだよ」
「うちの庭師も植物を育てるのがうまいけど、魔力はないぞ」
「やっぱりアダルさんの本ってうそなのかなあ」
「俺の曽祖父を勝手に省略して呼ぶなよ。」
「だって、アダルバードなんて長すぎ」
「しょうがない、ナナオは略称で呼んでもいいぞ。許可する」
「・・・それはどうも」
デルレイもデルって呼ぶときに許可がいるんだろうか・・・・ま、省略して呼ぶことなんてないか。
部屋に戻ってからも、やっぱり本当に植物を育てるのが上手な人に魔力があるのかが気になる。これは、自分でやってみるしかないっ!そう思った私は、庭師さんから、枯れそうな観葉植物をもらって自分で実験してみることにした。
読了ありがとうございました。
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植物を育てるのが上手な人のことを「緑の指を持っている」と言うそうです。
面白い表現ですよね。